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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」アルツハイマー病を遠ざける「7時間睡眠」「1日20分散歩」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.07.05 06:00 最終更新日:2021.07.05 06:00

樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」アルツハイマー病を遠ざける「7時間睡眠」「1日20分散歩」

家族の支え合いが重要


■重要なのは「予防」!

 

 アルツハイマー病の患者さんを家族に持つ人は、日本でもアデュカヌマブを早く発売してほしい、と願うことでしょう。しかし、これを投与したからといって、アルツハイマー病が治るわけではありません。つまり、いったんアルツハイマー病になってしまうと、その進行を食い止めることはできないのです(不可逆的)。

 

 しかしながら、アルツハイマー病の前段階といえる「軽度認知障害」(MCI)の段階では、健康な状態に戻ることも可能です(可逆的)。

 

 アルツハイマー病になってから慌ててもどうしようもない。だからアルツハイマー病にならないよう「予防」をしっかりとおこなっていく。あなた自身が予防をおこない、またあなたの家族にもアルツハイマー病予防をきちんと実行してもらうことが、とても、とても大切なのです。

 

 そこで、アルツハイマー病などを原因とする認知症の予防に最も重要な2つの方法をお伝えします。

 

■アルツハイマー病の予防法その1 7時間睡眠

 

 スペイン・マドリード大学の研究によると、平均睡眠時間が7時間の人と比べて、6時間以下の人は認知症リスクが36%高いという結果が出ました。

 

 また、日本の国立長寿医療研究センターの研究では、75歳以上の場合、午後9時〜11時に寝る人に比べ、午後11時以降に寝る人は、認知症発症リスクが約1.83倍も高いことがわかりました。

 

 十分な睡眠を取ること、それが、Aβを取り除く、非常に簡単な方法ということになるのです。

 

 私たちの脳には、日々たまる老廃物を洗い流してくれる「お掃除」システムがあります。夜間の睡眠中に、脳内のグリア細胞が60%収縮して隙間ができる。そこに脳脊髄液が勢いよく流れ込んで、Aβなどの脳の老廃物を洗い流してくれるのです。お掃除というか、ジェット水流による洗濯が脳の中で毎晩おこなわれているイメージです。

 

 つまり、きちんと睡眠を取っていれば、その間にアルツハイマー病の原因物質であるAβはきれいに洗い流される。逆に、睡眠時間が短いと、Aβはたまりやすくなる。睡眠不足は、アルツハイマー病を加速させるのです。実際、睡眠障害が認められる人は、認められない人よりも、アルツハイマー病の発病リスクが4〜5倍も高くなるという結果も出ています。

 

 ちなみに、アルツハイマー病では発病する約20年前からAβが蓄積しはじめます。60代でアルツハイマー病を発病する人は、40代からということになります。あなたが40代、50代で、毎日睡眠不足だとしたら……。そのツケが、20年後にまわってくるのです。

 

■アルツハイマー病の予防法その2 1日20分の散歩

 

 フィンランドの研究では、中年期から少し汗をかく程度の運動を週に2回以上、20〜30分おこなうことで20年後にアルツハイマー病になるリスクが3分の1に減少することがわかりました。週2時間、または1日20分の有酸素運動で、認知症リスクを半分以下に減らせるという研究結果がいくつも出ています。

 

 有酸素運動をおこなうと、BDNF(脳由来神経栄養因子)が分泌されます。BDNFは、ひと言でいうと「脳の肥料」。神経細胞の発生や成長、再生を促し、神経細胞死を抑制する物質で、脳を活性化し、生き生きとさせてくれます。アルツハイマー病の患者さんの場合、このBDNFの分泌量が低下しています。

 

 運動をすると、脳が生き生きとしてきて、アルツハイマー病を予防できる。それも、激しい運動を長時間する必要はなく、1日20分程度でいいのです。たとえば通勤の際に、早足で歩いてみる。それだけでも、アルツハイマー病の予防になるのです。

 

 高齢者の場合、膝や腰の痛みなどから、外出するのが億劫になります。それでも頑張って近所のスーパーに買い物に行ってみる。それだけで、いい運動になります。あなたに高齢の親がいるなら、実家に帰ったときにでも、「買い物」や「散歩」に連れ出すだけで、アルツハイマー病の予防になります。

 

 繰り返しになりますが、アルツハイマー病は発病の20年前から進行しはじめます。40代、50代のころから定期的に運動し、きちんと睡眠時間を確保する。それが、将来のアルツハイマー病予防につながるのです。

 

 アルツハイマー病の予防法としては、「睡眠」と「運動」以外にも「孤独を防ぐ(コミュニケーション)」「学び」「高血圧、糖尿病の予防」などいくつかありますが、また別の機会に詳しくお伝えしたいと思います。

 

 

かばさわ・しおん

樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計50万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動

 

イラスト・浜本ひろし

 

(週刊FLASH 2021年7月13日号)

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