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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」アルツハイマー病を遠ざける「7時間睡眠」「1日20分散歩」

ライフ・マネー 投稿日:2021.07.05 06:00FLASH編集部

樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」アルツハイマー病を遠ざける「7時間睡眠」「1日20分散歩」

アルツハイマー病の進行

 

■アルツハイマー病の新薬が承認!

 

 米FDA(アメリカ食品医薬品局)は6月7日、アルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」(製品名・アデュヘルム)を承認しました。これは認知症の治療の歴史においてきわめて画期的な出来事であると、テレビのニュースでも大きく取り上げられました。

 

 何がどう画期的なのか。そもそもアルツハイマー病とは、どんな病気で、どうすれば予防できるのか? 今回はそれを解説いたします。

 

 

 じつは25年ほど前、私はアルツハイマー病の研究をしていました。今回のアデュカヌマブは、アルツハイマー病の原因物質といわれるアミロイドβタンパク質(以下Aβ)を取り除く薬ですが、まさにそのAβの研究に携わっていたのです。

 

 毎日アルツハイマー病の脳組織をAβの抗体で染色して顕微鏡で観察。そのことを博士論文にまとめあげ、医学博士の学位を授与されました。

 

 その当時からアルツハイマー病の新薬(抗アミロイドβ抗体)の研究がスタートしていて、治験もおこなわれていました。それから四半世紀たってようやく新薬として発売されたことを感慨深く思います。

 

■新薬は、アルツハイマー病の進行を止められるのか?

 

 アルツハイマー病の脳組織には、「老人斑(アミロイド斑)」というAβの沈着が認められます。

 

 Aβは非常に強い神経毒性を持っていて、Aβの沈着が増えていくと、神経細胞は死んでいきます。すると、脳細胞がどんどん減り、脳が萎縮していって、「記憶障害」などの症状を呈するのです。

 

 現時点で、アルツハイマー病の原因ははっきりとはわかっていないのですが、主要原因のひとつとして「Aβの沈着」があると考えられています。

 

 つまり、「Aβの沈着」を食い止めれば、アルツハイマー病による認知症の進行を止められるかもしれない。Aβを取り除くことで、アルツハイマー病の症状を改善することができるかもしれない、という仮説が成り立つのです。

 

 そこで開発されたのが、今回承認されたアデュカヌマブです。Aβに対する抗体であるこの新薬は、脳に沈着したAβと特異的に結合し、実際にAβを減少させる効果が確認されています。

 

■アデュカヌマブの問題点

 

 アデュカヌマブに関する2件の大規模臨床試験がおこなわれました。一件では認知機能の低下が22%抑えられたものの、もう一件の試験では、全体を平均するとはっきりとした認知機能の差は認められませんでした。

 

 臨床的効果がはっきり示されていない薬を承認したFDAに対し、研究者たちから批判の声が上がっています。また、アデュカヌマブを1年間投与すると約600万円かかることも物議を醸しています。

 

 アルツハイマー病の進行を止める薬がないという理由で、今回「迅速承認」という特別な使用許可が下りたものの、今後おこなわれる臨床試験で、「症状の改善」「進行の抑制」などの効果がはっきりと示されなければ、承認が取り消されることも十分考えられます。

 

 Aβが脳組織に沈着すると、その神経毒によって神経細胞を死に至らしめます。その後、いくらAβを取り除いたところで、神経細胞が復活することはありません。アデュカヌマブを使用しても、短期間で「物忘れ」が改善しないのは当然のことといえます。

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