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食堂のおばちゃんの人生相談「捨てられない性分、家族からは “邪魔” と…」

ライフ・マネー 投稿日:2021.07.16 11:00FLASH編集部

食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/けやきの大木さん(81)無職】

 

 親譲りの捨てられない、大事に取っておく性分です。煙草のケース、マッチ、切手、新聞、雑誌、箸袋などを収集して50年近く。友人まで協力してくれたので収集品はミカン箱いっぱいとなり、押入れと物置に山積みです。家族からは邪魔にされ、年も年なので処分を始めていますが、いっこうに価値が上がらず、頭が痛いです。いっそ棺桶に入れてあの世へ持っていこうかとも思いますが、それも失笑を買いそうで……。

 

 

【山口先生のお答え】

 

 けやきの大木さんのお悩みを伺っていたら、亡くなった私の父のことを思い出してしまいました。

 

 我が家は「母と兄が溜める派、私が捨てる派」ですが、実は我が家の最大の「溜める派」は父でした。

 

 父は平成12年に85歳で亡くなりました。所謂急死で、救急車で病院に運ばれて霊柩車で帰ってきました。病院からの連絡で亡くなったことを知らされると、とにかく遺体を北枕で寝かせられるように、私はモノでいっぱいの父の部屋を必死で片付けました。

 

 もう、出てくる、出てくる、ガラクタの山! 古新聞、古雑誌、包装紙、3年前の旅行の駅弁の箸袋、使途不明の箱、古い入れ歯、そのほか思い出せないほどくだらないゴミのような品々……。

 

「こんなモンばっか溜めてるから、ちっとも金が貯まんないのよ!」

 

 悲しむ暇もあらばこそ、私は怒り狂って叫びました。

 

 叔父夫婦が手伝いに駆けつけてくれたのですが、後々まで「エコちゃん、あの時、怒りまくってたよねえ」と言われたほどです。

 

 そうそう、入れ歯安定剤が10箱も出てきたのも当惑しましたね。新品ではありますが、父以外に使う人がいないので……。

 

 まあ、そんなわけで、通夜も葬式も私の怒りの嵐が吹き荒れて、母も兄も恐れをなし、悲しむより「だからあんなに捨てなさいって言ったのに」とブーイングしてるうちに終わってしまいました。

 

 だからね、けやきの大木さん、捨てましょう。捨てなきゃダメです。

 

 通夜と葬式の席で家族に「まったく、ゴミばっかり溜めやがって、あのクソじじい!」と言われたいですか? それとも「あ~、せいせいした。これで押入れも物置も自由に使えるわ」と快哉を叫ばれたいですか?

 

 このままでは、あなたは家族にとって、あなたが収集したガラクタ(敢えてそう言います)と同一に思われてしまうのですよ。 80年以上生きてきて、最後には「ゴミ」と思われてしまうのですよ。そんなの嫌でしょう?

 

 ご自分で捨てられないなら、専門業者に頼む方法もあります。

 

 価値の高いモノもあるかもしれないから、人任せに出来ない?

 

 大丈夫、安心してください。集めた切手の中に1億円の珍品なんか、絶対混じってませんから。

 

やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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