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食堂のおばちゃんの人生相談「家族から疎まれている、どうすれば…」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.08.20 11:00 最終更新日:2021.08.20 11:00
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/孤独な三十代(36)臨時職員】
父は中学校校長、兄は名門公立高校の教師で、2人とも地元の国立大卒です。私は二浪して二流私大を出た後、親のコネで一流企業に就職したものの、過重労働と人間関係に身体を壊して退職。帰郷して実家に住み、臨時職員として働いていますが、父母・兄夫婦から疎まれて傷つき、4月から1人暮らしを始めました。今も家族の仕打ちに心は傷ついたままで、彼女もいません。どうやって生きていけばいいのでしょうか。
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【山口先生のお答え】
本当にお気の毒だと思います。私は母親に溺愛されて育ちました。親バカを通り越して “バカ親” なくらいの溺愛でした。だから私は他人から見れば「ああはなりたくない人」であっても、まったく気にせず、自分の可能性を信じ、ひたすら夢を追いかけて今日まで生きてくることができました。
もし、私の母が世間並みの “賢い母” だったら、おそらく私は小説を書くことはなかったと思います。“物語を作りたい” という情熱を途中で捨てていたでしょう。
これは母が立派だったとか先見の明があったというわけではなく、ひとえに私と母の相性がよく、かつまた運がよかったからだと思います。きっと、第三者には当てはまらないことでしょう。
だからこそ、あなたがお気の毒でたまりません。別の家庭に生まれていれば、別の形の幸せがあったはずだと思うからです。
世の中には「出来の悪い子ほど可愛い」というメンタリティの夫婦もいます。そういうご夫婦の間に生まれていれば、あなたの今の苦しみはなかったはずなのに。
ご両親にとって、子供と言えるのはお兄さんだけで、おそらくあなたは “出来損ない” であって “子供” ではないのでしょう。ご両親の設定した基準に、ことごとくあなたが達しないからです。
そして、ご両親がその基準を変えることは未来永劫ありません。「出来損ないが何でえ、うちの子が一番だ!」というメンタリティに変わることもありません。
だからもしあなたが、いつか両親が「すまなかった。今までのことは許してくれ」と言ってくれるかもしれないと期待しているのなら、そんな期待はさっさと捨ててください。あり得ませんから。
あなたの苦しみの根源は「親・兄弟なのにボクを認めてくれない」という思い込みから来ています。相手にしてみれば、あなたは息子でも弟でもないのです。
だからあなたも相手を親兄弟と思うのをやめましょう。隣りのおじさん・おばさん・男の人……と思うのです。赤の他人と思えば、いくらか気持ちが楽になりませんか?
とにかくあなたは今ボロボロです。だからまず気持ちを休めてください。そして、少し気持ちが上向いてきたら、何か楽しいことを見つけましょう。今は無理でも、気持ちが回復してきたら、楽しいことはきっと見つかりますよ。
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中