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樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」ひろゆきに学ぶディベート力…事実と感情・意見を分離せよ

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.10.04 06:00 最終更新日:2021.10.04 06:00

樺沢紫苑の「読む!エナジードリンク」ひろゆきに学ぶディベート力…事実と感情・意見を分離せよ

ひろゆき氏に学ぶ「ディベート上手」になる方法

 

 ひろゆき氏が大人気です。元2ちゃんねる管理人のひろゆき氏は、バラエティ番組やSNSでのディベートを得意とし、著名人、知識人、毒舌芸人などを次々に論破。その様子は痛快そのもので、今では「論破王」の異名を取っています。

 

■ “自己主張コンプレックス” を抱く日本人

 

 

 日本人は、自分の意見をはっきり述べたり、議論や討論をするのが苦手です。

 

 一方アメリカでは、小学校からディベートが授業に取り入れられていて、自分の意見をプレゼンする機会に恵まれています。つまり、討論のトレーニングをしているのです。アメリカでは、「自分の意見を述べる人」がリスペクトされ、「自分の意見を述べない人」は、相手にされない厳しい社会です。

 

 日本人はそもそも、会社や友人関係、近所づき合いなどにおいて「自分の意見をズバッと述べる」、言い換えれば自己主張することを善しとしてきませんでした。議論や討論にも、大学のゼミや論文を書く際にはじめて参加したという人が大部分ではないでしょうか。結果、日本人の多くは自己主張することや討論に慣れずに成長し、そのことに少なからずコンプレックスを抱いている感があります。

 

■「ひろゆき前」と「ひろゆき後」

 

「それはあなたの感想ですよね」
 ひろゆき氏がよく使う殺し文句です。ひろゆき氏が脚光を浴びるようになる以前、つまり「ひろゆき前」では、「自分の意見」「自分の感想」をテレビやSNSでズバッと言える人がもてはやされていました。

 

 しかし、「ひろゆき後」では、重視されるのは「正論」であり、「科学的な事実」「客観的根拠」に変わってきました。これは、コロナ禍も大きく影響しているように感じます。

 

 最近のSNSを見ると、コロナ感染やワクチンについての激論が熱く繰り広げられています。日本人が苦手としてきた討論や議論が、コロナを通して非常に身近なものになっているのです。ひろゆき氏による論破ブームも、コロナ禍の日本人の心理状態を反映している、と私は考えます。

 

■ひろゆき式「論破力」3つのポイント

 

 では、ひろゆき氏はなぜ、様々なジャンルの相手をことごとく論破できるのでしょうか。彼の論破力を構成するポイントを、3つに絞って考えてみましょう。

 

(1)事実と感情を分ける

 

 日本人は、「事実」と「感情」を分けるのが、ものすごく苦手です。

 

 たとえば、上司に叱られて頭にきたという場合、「上司に叱られた」が事実で、「(上司の)バカヤロー!」が感情です。事実から感情を取り除いて分析すれば、「なぜ、自分は叱られたのか?」という現状分析や「今後、叱られないためにはどうすればいいか?」というフィードバック(振り返り)ができます。

 

 しかし、ほとんどの人はバカヤロー! という感情に支配され、思考停止に陥ってしまう。この状態からはなんのフィードバックも生まれないので、同じミスを繰り返して、また叱られる羽目になるのです。

 

 ディベートはたんなる議論ですから、論破されたとしても人格まで否定されたわけではありません。しかし、日本人は事実と感情を分けるのが苦手なので、ディベートに負けると、相手に対する怒りがこみ上げたり、それが原因で人間関係が悪化したりするのです。

 

 私は研究者としてアメリカの大学にいた際、研究データについて准教授とよく議論しましたが、どんなに激しい論戦になっても、仲が悪くなることはありません。むしろ、「よくそこまで勉強しているな」とほめられさえしたほどです。

 

 ディベートでは「私情」や「感情」を持ち込まないことで、「事実」と「感情」を分ける練習ができます。冷静に自己分析もできるようになるので、議論の相手に対して感情的なしこりが生じることもなくなります。

 

 実際、ひろゆき氏のディベートを見ていると、事実と感情をしっかりと分けているのがわかります。事実に基づいた彼の鋭い指摘に、相手は次第に早口になったり声を荒らげたりと感情的になり、結果、論理が破綻して自滅していきます。

 

 ひろゆき氏は最初から最後まで淡々として、話のペースを変えません。そして、自らの感情をきっちりとコントロールしている。その結果、思考もクリアになるので、相手の論理や主張のほころびに対して鋭く突っ込んでいけるのです。

 

(2)事実と意見(感想)を分ける

 

「それはあなたの感想ですよね」が、ひろゆき氏の殺し文句。この言葉が意味するのは、人は往々にして「客観的な事実」と「個人の意見(感想)」をごちゃまぜにして述べている、ということです。そこをひろゆき氏に容赦なく指摘されるのです。

 

 たとえば「日本の子供たちは幸せではない」。これは個人の意見です。「(私の見るかぎり)日本の子供たちは幸せではない(と思う)」と言っているにすぎないわけです。

 

 では、「ユニセフがおこなった子供の精神的幸福度の調査によると、日本人は調査対象国38カ国中、下から2番めでした」はどうでしょうか。これは、歴然とした事実なので、覆すことはできません。反論しようとすれば、これと真逆のデータや調査結果を提示しなければならないのです。

 

(3)事前にデータを用意しておく

 

「根拠はなんですか?」「データあるんですか?」。これも、ひろゆき氏がよく使うフレーズです。

 

 そう聞かれて絶句してしまう事態を避けるためにも、事前に「根拠」と「データ」を用意しておく必要があります。

 

 たとえば「睡眠不足は健康に悪い」と主張するとしましょう。

 

「根拠はなんですか? データはあるんですか?」と聞かれて、「睡眠時間が6時間以下の人は、そうでない人と比べて、ガンが6倍。同じく脳卒中が4倍、心筋梗塞が3倍、高血圧症が2倍、糖尿病が3倍、風邪が5倍。死亡率では5.6倍にもなる、という研究結果があります」と答える。

 

 これだけのデータを突きつければ、相手はぐうの音も出ません。

 

 ディベートの最中に、具体的な数値やデータをスラスラ言える人は、相手に「この人はずいぶん勉強しているな」「すごいデータ量だな」という印象を与えます。ディベートの勝ち負けにかかわらず、「頭のいい人」と認識されるのです。これは、すごいアドバンテージだと思います。

 

 そのためにも、自分が主張したい内容を補強する「根拠」「データ」は、事前に調べて記憶しておき、いつでも口をついて出るようにしておくといいでしょう。

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