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世界遺産「小笠原」でウミガメ料理を食ってみた

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2017.02.05 17:00 最終更新日:2017.02.05 17:00

世界遺産「小笠原」でウミガメ料理を食ってみた

『ウミガメ神秘の出産シーン』

 

■朝まで見張っても、たった2匹しか産卵せず!

 

 その日、晩飯を食って軽く一杯やってから、小笠原諸島・母島の前浜へ行った。ウミガメは6~7月は毎晩のように産卵に上がってくるそうなので、確率は高そうだ。遠くに街灯や自販機があるから、砂浜は意外と明るい。ビールを飲みながらボケッと待ってると、水際からノソノソとカメが上がってくるではないか!

 

 なんと無防備な。個体数は6匹ほど。カメたちは産卵場所を求め、岸から10数メートルをウロウロしている。動きはすさまじく緩慢で、ようやく場所を見つけて土を掘りはじめても、納得しないで海に戻っていくやつもいる。

 

 残った数匹が穴を掘りはじめた。その穴を掘るのがまた下手くそだ。後ろ足で砂を払いのけるように掘るが、それがじれったいほど遅い。見ていてイライラするが、ここはおとなしく我慢だ。時間は午前1時。3カ所くらい場所を変えたやつが、ようやく産卵を始めた。結局、午前5時まで見張って、卵を産んだのは2匹だった。

 

 ウミガメの産卵では、産みはじめるまで近づかないのがマナー。もちろんストロボもダメ。しかし産みはじめたら、30センチくらいまで近づいても逃げない。

 

 1匹のウミガメは1回に100個ほどの卵を産むが、無事に成長するのは1000匹のうち3~5匹くらい。てことは、この卵もほとんどは生き残れない。あまりにも生存率が低いため、稚ガメ放流事業もおこなわれている。

 

 カメは12年程度で大人になり、20年から30年ほどで帰ってくるという。小笠原で認識票をつけられたウミガメがはるか1000km彼方で確認された例もある。数十年先を見通した息の長い活動が続く。

 

■食べるのは観光客だけ?地元民はウミガメより焼肉

 

 世界自然遺産に登録された小笠原諸島。東京から南へ1000キロ。船で約26時間という太平洋の孤島である。今から200年前、この島は無人島だった。最初に住み着いたのは、5人の欧米人と20人のハワイ人。日本の領土として確定したのは1876年のことだ。サトウキビや綿花、熱帯の気候を利用した冬場の野菜栽培などで、島は活況を呈したという。

 

 戦後、島は米軍の占領下となり、1968年に復帰した。ちなみに民放テレビが見られるようになったのは1996年のこと。それまでは公民館でテレビ上映会が開催されていた。

 

 その小笠原では、日本で唯一「カメ漁」がおこなわれている。数少ないウミガメ漁師が伝統漁法で捕獲しているのだ。小笠原に最初に入植したハワイ人にカメを食べる習慣があり、それに続いて八丈島から来た人々にも同様の習慣があったことで、カメ食は自然に定着したらしい。

 

 現在の捕獲数は年間100頭ほどだが、島ではカメ料理はあまり人気がなく、もっぱらイタリアンや焼肉、お好み焼きなどが人気である。カメはむしろ観光客の話の種といった感じだ。

 

 さっそく島の料理屋でウミガメ料理を食べてみた。まず筆頭は刺身(1300円)。ルイベっぽい味わいの半解凍状態。マグロに近い淡泊な味わい。オスのほうがうまいらしい。コラーゲンたっぷりの煮込み(680円)はあっさりして、島民にも人気が高い。

 

 逆に唐揚げ(830円)はしっかりとした歯ごたえで鶏肉よりも硬い。レバーペースト(500円)はボソボソである。ちなみに水分が多いので、ステーキには向かないそうだ。

 

 毎年春には「新亀」が出回る。これから新亀の時期だ。今年の夏は母島への旅行はいかが?

 

取材・中山茂大 写真:阪口克

(週刊FLASH 2011年7月12日号)

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