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食堂のおばちゃんの人生相談「高2の息子…夢も希望もないのか?」

ライフ・マネー 投稿日:2021.10.22 11:00FLASH編集部

食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/サザエさん(47)主婦】

 

 高2の息子の進路が決まりません。何をやりたいのか、どんな道に進みたいのか、尋ねても「わからない」と。若いのに夢も希望もないのでしょうか?

 

 

【山口先生のお答え】

 

 たぶん、ほとんどの若者はお宅の息子さんと同じで、将来何をやりたいか、どんな仕事に就きたいか、漠然としていてわからないと思います。ほかの子は社交辞令で期待される答えを口にしているだけで、本心ではないでしょう。息子さんは正直なだけです。だって、高校2年生といったら、まだ17歳じゃありませんか。

 

 浅田真央ちゃんとか、羽生結弦くんとか、将棋の羽生善治さんとか、子供の頃から天才的な才能に恵まれている人、才能はともかく絵が好きとか昆虫が好きとか、非常にはっきりした好みがある人は別として、ほとんどの人は25歳を過ぎるまで、自分が何者か、何をしたいか、よくわかっていないのではないかと思います。

 

 進学先・就職先も、自分の希望ではなく、自分の成績で選べる先が限定される中で、そこに身を置いているのが現実です。そしてその流れの中で、諸々の自覚や責任感、他者に対する評価と共感が育まれていくのではないでしょうか。

 

 サザエさんの20代の頃を振り返ってみてください。高校生のときの夢がそのままかなったわけではないでしょう。でも、20代で働いているとき、あるいは結婚生活を始めたとき、それなりに達成感と幸福感があったのではありませんか?

 

 今の若者が非常に可哀想なのは、その流れに身を任せていれば、ある程度の満足感や幸福を得られる……という期待と幻想をまったく持てなくなっていることです。彼らの多くは、確実に自分の親より貧乏になるだろうと予想しています。

 

 少なくとも私が子供の頃、未来は明るいものでした。人は豊かになり、技術は進歩し、社会はよくなっていくと信じていました。

 

 でも、今の若者はそんな幻想を抱くことが出来ません。徐々に悪くなりつつある経済と社会が、彼らに夢を許さないのです。

 

 だって、大卒の若者が真面目に働いても年収が200万円以下なんて、少なくない数の若者がそんな境遇に落とし込まれるなんて、どう考えてもおかしいでしょう?

 

 夢を持つか持たないかは本人の自由ですが、希望が持てないのは本当に可哀想です。自分が幸福な青春を送っただけに、こんな世の中になって申し訳なく思います。

 

 とにかくこういう時代です。息子さんの希望なんてこの際おいといて、とりあえず自己防衛の手段を身につけさせては如何でしょう? 資格を取らせるとか、手に職をつけさせるとか。後のことは、食べられるようになってから考えても遅くありませんから。

 

やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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