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食堂のおばちゃんの人生相談「彼女はペット好きだが、自分は嫌い」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.01 11:00 最終更新日:2021.11.01 11:00

「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!

 

【お悩み/ナイアガラさん(40)会社員】

 

 結婚を考えている彼女がいますが、私はペット嫌いなのに彼女はペット好きです。どうしたらいいんでしょうか。

 

 

【山口先生のお答え】

 

 ナイアガラさんのお悩みを伺ったら、私の2歳違いの次兄の親友だったT君のことを思い出してしまいました。

 

 T君と兄は向井理で有名になった明治大学農学部生物学科の同級生で、私が肉眼で見た中でも1、2を争う美青年でした。若い頃の福山雅治に気品をプラスした……と言ったら褒め過ぎでしょうか。学術優秀で家も裕福だったそうです。

 

 当然モテモテですが、T君は誠実無比の性格で、つき合った彼女とは真面目に将来を考えて、プロポーズしました。でも、ことごとく破局してしまいました。

 

「あなたを愛してるけど、私、は虫類とは一緒に暮らせないわ」

 

 そう、T君は無類のは虫類好きだったのです。ご両親は生田校舎のそばのマンションを借りてT君を1人住まいさせたのですが、T君は女を連れ込まないで大トガゲを連れ込みました。そして、その大トカゲを「ルミ子」と名付け、愛に溺れていったのです。

 

 ある日掃除に訪れたT君のお母さんは、押入れを開けたら大トカゲが出て来たので、ビックリして箒で殴って腰を抜かしてしまいました。T君は倒れているお母さんをほったらかして、ルミ子を抱き上げたのです。お母さんはショックで寝込んでしまいました。

 

“酒さえ呑まなきゃ良い人” は私ですが、T君はまさに “トカゲさえ飼わなきゃ良い人” でした。

 

 兄は時々T君の部屋に泊まったので、私は詰問しました。

 

「まさか、トカゲと川の字になって寝てるんじゃないでしょうね?」

 

「ルミ子は押入れの中で寝るから。でも、夜中に部屋の中を横断するから、踏まれると重いんだよね」

 

「トカゲに蹂躙された身体で、家に帰ってくんな!」

 

 T君の何度目かの破局の後、何をトチ狂ったか兄が言いました。

 

「お前、Tとつき合えば? 今のタイミング外したら、お前みたいなブスがあんな好い男の彼女になるチャンス、一生ないぞ」

 てやんでェ! “お前みたいなブス” にも五分の魂があるんだ!

 

「冗談じゃない、トカゲと乳繰り合ってる男なんか、まっぴら!」

 

 すると兄は不思議そうな顔をして言ったものです。

 

「……は虫類に乳房はない」

 

 母は常々この兄を “学者バカから学者を抜いたようなバカ” と評していましたが、なるほど、親の意見となすびの花にゃ万に1つも無駄がない……と思ったものです。

 

 あ、それで、あなたのお悩みですね。彼女のペットがは虫類や両生類だったら、別れるしかないと思いますよ。男のために可愛がっていたペットを捨てるような女って、信用出来ないでしょう?

 

 でも、犬や猫なら、取りあえず彼女ぐるみ同居したら如何ですか? 一緒に暮らしているうちに情が湧いてくると思います。犬は性格が可愛いし、猫は仕種が可愛いですから。ペットは私には家族同然です。どうしても捨てられません。

 

やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中

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