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バス停から考える問題発見力…なぜ屋根は「上り」にあって「下り」にないのか

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.03 20:00 最終更新日:2021.11.03 20:00

バス停から考える問題発見力…なぜ屋根は「上り」にあって「下り」にないのか

 

 私の経験した卑近な例ですが、落葉の時期にバス停の写真を撮っていたと思って下さい。

 

 自宅に近い頻繁に使うバス停ですが、街路樹があって色とりどりの落葉が毎年綺麗なのです。手前のバス停と道路を隔てた向こう側のバス停の両方を入れた写真を撮ろうとして、ビックリしました。

 

 一方のバス停には屋根があり、もう一方のバス停には屋根がなかったからです。長年このバス停を使っていて、その時初めて違いがあるのに気づきました。気にしないと本当に見ていないものだと思いました。

 

 

 驚いたベースにあった「思い込み」は、屋根があるなら両方ともにあるだろうし、バスストップの標識だけなら両方ともそうなのだろうというものでした。同じバス停なのですから同じに取り扱われていると思い込んでいたのです。

 

 そこで、屋根の扱いが異なる「論理」を考えました。そのバス停は市の中心部から少し離れた住宅地にあるもので、そこを通るバスは中心部と郊外を結ぶものです。

 

 中心部に向かうものを「上り」、郊外に向かうものを「下り」とよぶことにしましょう。バス停の屋根は「上り」にはあって、「下り」にはないのです。

 

 バスを運用する市の交通局に資金が潤沢にあれば両方に屋根を設置することも可能でしょうが、そうでなければ効果的な使い方を考えるはずです。その効果的とはいかなるものかということになります。

 

 私が思いついたのは概略次のような「論理」です。

 

 バスは定時に来ることはまずありません。ほぼ遅れます。したがって、われわれはだいたいバス停でバスを待つことになります。雨や雪を考えれば屋根が欲しくなるのは当たり前です。

 

 このバス停は住宅地にあるのですから、この地区の住人が市の中心部に通勤したり買い物に出かけたりするのに主に使用するわけです。

 

 そうすると、「上り」のバス停でバスを待つことが多くなります。中心部から帰ってきた際には、バスを降りてバス停に留まることはありません。すぐに自宅に向かうからです。

 

「下り」のバス停で待つことがあるとすれば、この住宅地からもっと郊外に向かう場合ですが、これの比率は中心部への往復をする人数に較べればかなり少ないだろうと思われます。

 

 これで「論理」はだいぶんできあがりました。乗降客の少ないかなりの郊外ではおそらく「上り」も「下り」も屋根なしでしょう。そういう地域を除いての「論理」です。

 

 住宅地だと屋根があるのは「上り」で、「下り」にはなく、中心部のバス停だと逆に「下り」に屋根があり、「上り」には乗る人が少なくて屋根はないだろうということになります。

 

 それでバスに乗る度にチェックしてみました。だいたい合うのですがいくつかの修正が必要でした。

 

 市の中心部では「上り」についてはあまり当てはまりません。終点に近い「上り」にも屋根があるのです。風よけの透明アクリル板やベンチがついている場合もありますし、デザインも統一されていました。

 

 街中のものは概してスタイリッシュです。これは中心部に均一区域があり、その区域内に限った一日乗車券が設定されていたりすることと関係があるのではないかと思われます。中心部の中での相互の動きを想定していませんでした。

 

 そして、市の中心部をクロスしてまた周辺に出て行く路線もありますので、その影響もあるような気がします。

 

 中心部の「下り」に関しては想定通り完備されていますが、複数のバス路線が重なる幹線道路では中心部からかなり離れても整備されています。乗客が多くなるためだと思われます。

 

 もうひとつの修正は個別の配慮です。「上り」でも道路全体や歩道が狭いとありませんし、商店の前や鳥居の前というのは遠慮している感じです。

 

「下り」では、均一区域の中心部から外れても、大きな病院前のバス停には屋根がついていたりします。周辺から病院を訪れた人たちの帰路に配慮してのことでしょう。

 

 また、自宅近くの別のバスルートに何の変哲もない停留所があるのですが、「下り」にも屋根があってなぜだろうと思っていました。ある時、その「下り」のバス停に複数の高校生を見かけて気がつきました。

 

 400mほど離れたところにJRの駅があり、その沿線の郊外に高校があるのです。バスとJRは市の中心の駅で繋がっていますが、そのルートをたどるとかなり大回りになります。

 

「上り」JRをその駅で降り、400m歩き「下り」のバスに乗って帰宅する高校生にとっては、かなりの時間短縮になるでしょう。そういう通学ルートの高校生や当該JR利用客を想定した「下り」の屋根の可能性が出てきました。

 

 考えすぎかもしれませんが、当たっているなら、市の交通局も思慮深いものだと思った次第です。

 

 

 以上、西林克彦氏の新刊『知ってるつもり 「問題発見力」を高める「知識システム」の作り方』(光文社新書)をもとに再構成しました。いま最も求められる「問題発見力」を身につけるための方法を解説します。

 

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( SmartFLASH )

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