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食堂のおばちゃんの人生相談「友達から金を借りる自分が哀れすぎる」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.05 11:00 最終更新日:2021.11.05 11:00
「食堂のおばちゃん」として働きながら執筆活動をし、小説『月下上海』で松本清張賞を受賞した作家・山口恵以子。テレビでも活躍する山口先生が、世の迷える男性たちのお悩みに答える!
【お悩み/匿名希望(47)会社員】
先日、甥の結婚式のために友人から10万円借金しました。小遣いはバブル前は6万円でしたが、いまや3万円。週末呑みに行ったらすぐにパーです。友人は「返すのはいつでもいいよ」と言って余裕で貸してくれました。その態度に、私は自分が哀れに思えてやりきれません。友人は大学の同級生で、公務員から早々に塾の講師に転身し、成功しました。結婚も早かったので子供たちはすでに独立しています。それに引き替え私は(中略)。他人をうらやましいと思いながら生活するほど惨めなことはないと思いますが、友人の余裕の顔を思い出すと、つい「あいつは恵まれているのだから、10万は踏み倒してやろうか」と考えてしまいます。
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【山口先生のお答え】
あなたのお気持ちはよくわかります。同じやりきれなさを抱えて生きている人は大勢いると思いますよ。人生は理不尽で不公平なものですからね。あなたの悩みは大人になってからのことでしょうが、女の子なんかもっと可哀想で、幼稚園か小学校の頃から “可愛い子” と “ブス” と “その他” に選別されちゃうんですよ。
10万円を踏み倒してもきっとお友達は怒らないと思いますが、それであなたの気が晴れるかと言えば、やはり違うでしょう。
月並みな言い方になりますが、自分と他人を比較している限り、心安らかな生活は送れないと思います。あなたは自分以外の人間にはなれないし、ほかの人間があなたになることもできません。お友達の進んだのと同じ道をたどったとしても、あなたが友人と同じやり方をして、同じ成功を手に入れることはできません。それぞれ持っている武器が違うからです。
昔私が勤務した宝飾店は、私と店長以外はモデルクラブから派遣された美女が店員で、当時はバブル真っ盛りでしたから、彼女たちのモテ方も半端じゃありませんでした。エルメスのバッグやらカルティエの3連リングやらをワンサカもらうんですよ。
当時、私が男性からいただいた最高額賞品はとらやの羊羹だったので、こりゃもう、世界が違うなと思いましたね。私は悟りましたよ。彼女たちは松阪牛、私は並か、せいぜい中の牛。松阪牛なら生で食べたって美味しいけど、並は煮込んでシチューとか、肉じゃがとか牛丼とか、手間暇かけて武器を磨かないと、人並みには扱われないのだ、と。
それで私は “面白い人” になろうと決めました。面白いからってモテないけどね。でも、清張賞受賞以後、テレビや雑誌にいっぱい出していただけたのは面白さゆえでした。だから、あなたもご自分の武器を見つけてください。
やまぐちえいこ
1958年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒。就職した宝飾会社が倒産し、派遣の仕事をしながら松竹シナリオ研究所基礎科修了。丸の内新聞事業協同組合(東京都千代田区)の社員食堂に12年間勤務し、2014年に退職。2013年6月に『月下上海』が松本清張賞を受賞。『食堂メッシタ』『食堂のおばちゃん』シリーズ、そして最新刊『夜の塩』(徳間書店)が発売中
( SmartFLASH )