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銀河系を支配するとはどういうことか? 科学の目で見る『スター・ウォーズ』

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2021.11.06 11:00 最終更新日:2021.11.06 11:00

銀河系を支配するとはどういうことか? 科学の目で見る『スター・ウォーズ』

 

 映画『スター・ウォーズ』では、帝国軍というダース・ベイダーを筆頭とする悪の集団が銀河系の支配を目論みます。ここで銀河系の支配が一体どういうものか、少し想像してみましょう。

 

 まず、私たちの太陽系が銀河のどこに位置するかをご存じでしょうか。

 

 

 天の川銀河の円盤は、半径にして大きさ5万光年です。この銀河の半径のほぼ真んなかあたりに私たちの太陽系はあります。銀河の中心には巨大なブラックホールがあり、そのまわりを囲むようにバルジという星の固まりがあります。

 

 これらを中心に、銀河の星々は洗濯機のようにぐるぐる回転しています。1周するのには約2.5億年程度かかるといわれています。この時間スケールが生命や文明のスケールといかにかけ離れているかを考えてください。

 

 太陽系全体を支配したいとして惑星ならせいぜい海王星までです。支配している以上、通信して伝達事項を連絡することは必須だと思いますが、地球から海王星までなら光で片道4時間程度、往復通信するために半日程度もかかります。

 

 銀河系スケールならより膨大な時間が必要でしょう。数万年は余裕でかかります。

 

 文明が10万年も続くとは、いかに宇宙広しといえども無理な気がしてなりません。人類では四大文明から数えたとして、ざっくりと1万年続けばいいほうではないでしょうか。

 

 その私なりの根拠は、高度に発達すればするほど、一瞬で全世界を破滅させうる科学兵器が開発されてしまうので、文明を継続させる上での不安定要素も加速度的に増えるからです。

 

 すでに自国の文明が破滅しているかもしれない数万年という時間をかけてまで通信する距離にいる相手国を支配するとは一体どういった状態なのか、地球における国の支配とは全く異なることが分かると思います。

 

 銀河系といっても、もっとローカルな場所を想定しているならまだ話は分かります。

 

 例えば、太陽からの距離2000光年以内は地球から見える星座という星の世界といえます。星座はあくまで肉眼で見ることができる星を天空の線でつなげたものなので、せいぜいこの距離の範囲にある星が主役となっています。

 

 ですが、この2000光年程度の距離にある星々であっても、通信するためには数千年という時間が必要になります。キリスト誕生の頃に出したメッセージが今返信されて戻ってきても、会話になるとはとても思えません。

 

 支配というのは、通信以上に直接現地に乗り込まないといけないので、やはり星間移動をどうするかが最大のカギです。数光年も一瞬で移動できるのであれば、きっと通信も同様に短縮できるはずですが、そこら辺のスケール感が、映画では「銀河」とざっくりいっているだけなので分かりませんね。

 

 それでも、せいぜい支配できるのは数十光年の範囲だと勝手に想像しています。いくら技術が未知といえども、移動や通信を考えると、妥協してそのくらいの銀河の片隅の支配になるのではないでしょうか。

 

 それほど、星同士の距離というのは圧倒的に離れており、宇宙は星々というよりも、全く何もない空間が永遠に続くと考えたほうがスケール感として近いといえます。

 

 支配する目的は、物資や人材などの資源を輸送し獲得することだと思いますが、繰り返しお伝えしてきた通り、星同士の距離の関係から、これができるのはせいぜい1つの星の惑星系だけでしょう。

 

 それでも、太陽系支配のようなことができれば、文明としては十分すごいことです。さらに離れた別の星とそのまわりの惑星を支配するとなると、物資の輸送などが現実的にできないので、一体どんな目的でそんなちょっかいを出すのでしょうか。

 

 その真の目的を語ったSF作品の悪党は今のところ皆無のような気がします。

 

 

 以上、高水裕一氏の新刊『物理学者、SF映画にハマる』(光文社新書)をもとに再構成しました。テレポーテーションから星間飛行、タイムトラベルまで、SF世界の可能性と限界を探ります。

 

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( SmartFLASH )

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