■間違った常識3/大食いの人、太っている人がなる
糖尿病は大食いの人がなる、と思っている人は多いでしょう。大食い後の急激な血糖値の上昇を毎日繰り返していれば、糖尿病のリスクは高まります。では、小食の人は糖尿病にならないのか、というとそんなことはありません。おやつ、間食には要注意です。
砂糖が大量に入ったスイーツを食べれば、少量であっても血糖値は急激に上昇します。一日に何度もスイーツを間食するような習慣は、非常に危険です。
そして、意外に盲点となるのは飲料です。カフェで出される甘い飲み物には、角砂糖20〜25個分、500mlの炭酸飲料には、角砂糖10〜15個分もの糖分が含まれます。三食を大食いしていなくても、スイーツ、砂糖入りの飲料などでも簡単に血糖値は上がるのです。
また、「糖尿病は太っている人がなる」と思っている人も多いです。肥満の人が糖尿病になりやすいのは間違いありませんが、極端な「痩せ」でも、インスリン抵抗性が下がるので、糖尿病になりやすいです。
また糖尿病を発症すると、急激に痩せることがよくあります。場合によっては、1カ月で10kg痩せる人もいます。「痩せているから糖尿病にならない」は間違いです。
■間違った常識4/原因は食事である
食べすぎ、カロリーの過剰摂取、糖質の摂りすぎ、間食のしすぎなど、乱れた食生活が糖尿病の大きな原因となることは間違いありません。しかし、食事だけが原因ではありません。
たとえば、睡眠不足の人は、そうでない人と比べて約3倍、糖尿病になりやすい。運動不足も糖尿病と深く関係しています。喫煙は糖尿病リスクを1.4倍に高めます。多量の飲酒も糖尿病のリスクに。
また、ストレスにさらされると、ストレスホルモンのコルチゾールが分泌されます。コルチゾールは血糖値を上げ、血糖値を正常に保つ機能に影響を及ぼしますので、ストレスもまた糖尿病の重要な原因となります。
糖尿病の原因として食事は重要ですが、睡眠不足、運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレスなども、その発症と深く関わっているのです。暴飲暴食、不規則な生活とストレスが、「合わせ技一本」のように、糖尿病を引き起こすと覚えておいてください。
ですから、あなたが「血糖値高め」と指摘された場合、「食事制限」することは必須ではありますが、それだけでは十分ではありません。睡眠、運動、禁酒、禁煙、ストレスの軽減など、可能な限りの生活習慣の改善が必要なのです。
■糖尿病を予防するには
毎年1回受診する定期健診には、「空腹時血糖値」「グリコヘモグロビン(HbA1c)」という項目が含まれていて、糖尿病予備軍になるとこれらの数値が高くなります。
その場合、医師から「血糖値が高めですね」と言われるのですが、そこが運命の分かれ目です。「食事療法や生活習慣の改善が必要です」と言われても、ほとんどの人は何もしないで放置します。結果として、何年かして糖尿病へと進行します。
繰り返しますが、「血糖値が高めですね」と言われたばかりの「予備軍」の状態であれば、健康な状態へと回復することができます。命がけで、糖尿病を発症させないよう、食事療法、生活習慣の改善に取り組むべきです。
具体的な対処法ですが、「血糖値高め」と指摘された方は、病院や地方自治体などが開催している「食事指導」を一度受けることをおすすめします。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし