■第7位『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(日本)
日本のアニメ界の金字塔「エヴァンゲリオン」シリーズが25年かけて、ここに完結。庵野秀明監督は、途中「うつ」で不安定な精神状態に陥りながらもそれを乗り越えて、本作を完成させました。
庵野監督の心の苦悩が、登場人物の心象にも投影され、奥深い作品になっています。さまざまな伏線を回収し、よくここまでまとまった話として完結できた、と思います。庵野監督、25年間お疲れ様でした。そして、素晴らしい作品をありがとう!
■第8位『映画大好きポンポさん』(日本)
明らかに「子供向け」のポスター。しかし、映画愛にあふれた、本格的な大人向けのアニメ。ネットを見ると、“『シン・エヴァ』よりもおもしろい” と評価しているアニメファンも少なくありません。
根暗な映画青年ジーン。製作アシスタントとして働くジーンは、映画監督に抜擢され最高のチャンスを得ますが、そこからが大変。映画作りの「大変さ」と「楽しさ」の両方が見事に描かれます。映画ファンなら涙なくしては観られない。
成功とは「あきらめない」人のもとにやってくるというテーマが、心に刺さります。
■第9位『野球少女』(韓国)
女子高校生のスインが、プロ野球選手を目指し奮闘する韓国映画。韓国版『野球狂の詩』といえば聞こえはいいが、女性蔑視がはびこる韓国社会において、彼女はとんでもない差別、偏見、嫌がらせを受けます。それでも、あきらめずに練習を重ね、プロテストを受けていく……。
ネットフリックスのドラマ『梨泰院クラス』で注目を集めたイ・ジュヨンが主演。観ていてものすごく苦しくなる映画ですが、彼女の「爽やかさ」だけが唯一の救いです。
そして、スインの最大の敵は、なんと実の母親。「女性の社会進出など本人が苦しむだけ」と、彼女の「プロ野球入り」を全力で妨害するのです。母親としては「よかれ」と思っているところが切ないですが、まさにそれこそが「毒母」の共通項でもあるのです。
■第10位『フリー・ガイ』(アメリカ)
今回のベスト10の中で、唯一の「痛快な娯楽作品」が本作。毎日、同じ生活が続くことに疑問を持つ銀行員ガイ。昨日とは少しだけ違う行動を取ることが、大きな変化へとつながります。
じつはガイはゲーム内のモブ(背景)キャラ。AI(人工知能)が意識を持ち、自分で考え、自分で行動を始める、歴史的な瞬間が描かれます。自分で考えない、新しい行動をしない人間への風刺でしょう。
以上、魂が揺さぶられる充実の10作品。すでに動画配信サービスで視聴可能なものもあります。あなたの映画選びのお役に立てましたら幸いです。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし