(4)自己重要感・自己肯定感が高まる
また動物を飼ったり、植物を育てると、自己重要感が高まることが知られています。
自己重要感とは、自分が他人に貢献している、自分が他人から必要とされている感覚で自己肯定感を作り出す要素のひとつです。
猫を飼っていると家に帰って、餌、水を与えなければなりません。何日も家を空けると、死んでしまうかもしれません。つまり、猫はあなたを間違いなく必要としているのです。あなたがいないと生きていけない。
動物を飼うことは大変であり、責任を伴いますが、結果として間違いなくその動物の役に立っている。なので、自己重要感が高まるのです。
自己重要感が高まると、自分自身を大切にふるまえるようになります。すぐに自分を責めたり、卑下したりすることが減り、結果として自己肯定感も高まって、自分に自信を持てるようになります。つまり幸福を実感しやすくなるのです。
自己肯定感を高めるのは楽なことではありません。そのなかで、動物や植物を育てることは、最も簡単で効果も絶大なやり方といえるでしょう。
(5)ゴロゴロ音にセラピー効果
猫はときどき、喉をゴロゴロと鳴らします。この猫のゴロゴロ音には、人間を癒やすセラピー効果があるそうです。
猫のゴロゴロ音の周波数は、25Hz前後の低周波ですが、20~50Hzの音は、人間の体の緊張をほぐし、副交感神経の働きを優位にするといいます。
また、この低周波にはセロトニンを活性化する効果もあります。セロトニンは「脳の指揮者」と呼ばれるように、脳内物質の分泌を調整し、怒りやイライラなどの感情をコントロールする働きがあります。
このように猫のゴロゴロ音には、さまざまな効果があることが知られています。
■猫動画やぬいぐるみで代用可能か?
ところで、猫をなでるとオキシトシンが出る、という話をすると、「ぬいぐるみでも代用可能ですか?」という質問が必ず出ます。
実際に本物の猫とぬいぐるみの猫とでオキシトシンの分泌を比較した実験があるのですが、ぬいぐるみでも分泌はするものの、やはり本物の猫のほうがより多く分泌したという結果が出ています。
また、YouTubeには100万回以上再生されている猫動画がたくさんあります。
動画においても、オキシトシンの分泌効果やコルチゾールの低減効果は認められるのですが、やはり本物の猫のほうがより強い癒やしの効果を発揮するようです。
このように、ぬいぐるみや動画の猫も本物にはかなわない。猫が大好きだけど物理的、時間的に飼えないという人は、猫とふれあえる「猫カフェ」に行くか、あるいは、知り合いで猫を飼っている人に触らせてもらうというのも、オキシトシン効果という点でいいかもしれません。
猫がもたらす癒やしの効果について、科学的根拠を調べてみましたが、意外とたくさんの研究があって驚かされました。
今後、少子高齢化がさらに進み、また2040年には日本の単身世帯は4割にせまると予想されます。日本人の孤独を救ううえで、重要な鍵を握るのは、じつは猫なのかもしれません。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし