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【世界最悪の旅】パキスタンでカラシニコフを撃ってみた
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2017.03.21 17:00 最終更新日:2017.03.21 17:00
パキスタンの「トライバルエリア(連邦部族直轄地域)」は、かのオサマ・ビンラディンが潜伏していたことで一気に世界に知れ渡った。アフガニスタンとの国境地帯であるこの地域は、パキスタン国家権力も及ばない無法地帯である。
ここに「ダッラ」という名前の銃器密造で知られる村があった。かれこれ20数年も前の話だが、当時は今ほど治安が悪くなかったので、多くの旅行者がこの村を訪れたものである。
彼等の目的は、カラシニコフを撃ちまくること。
なにしろパキスタンである。その料金は滅法安く、1発30円程度。日本の射的の方が高いくらいである。
ペシャワールからオンボロバスに揺られて3時間余。私の他にも西洋人旅行者が数人乗っていた。いずれも男子である。やはり男は武器を好むのだなあと思いつつ到着。下車すると散発的に銃撃音が聞こえる。今だったら直ちに地面に突っ伏すところだが、当時はのんびりしたものである。
「おお。やってるやってる」
逆に期待感が高まったものであった。
「ヘイ、ミスター。シューティング、ガン?」
地元のオヤジたちの中で英語の達者なのが数人、我々旅行者に話しかけてくる。それぞれ商談が始まり、旅行者は三々五々と散っていった。
私に話しかけてきたのは、他の饒舌な連中と違い、話し下手な感じのする純朴な男である。ここでは私は隠し持っていた「リーサル・ウエポン」を取り出した。
それはなにかといえば、「メイド・イン・ジャパン」のエロ本である。しかも2冊。
「オヤジ、これ1冊で10発。合計20発、撃たせてくれないか?」
案の定、オヤジは目を白黒させた。
「ダメだ。こんなものは、神のお許しがいただけるわけがない」
そんなことをつぶやいている。これは相手を間違えたかな、と思っていたら、世の中には目端の利く人がいるものである。
「ヘイ、ミスター、もちろんだとも。……ちょっと来い」
目端の利く男は純朴な男の肩を抱き、その辺を散歩し始めた。話の内容はこんな感じで間違いないだろう。
「あの日本人が持っているセクシーブックは、我が国では絶対に手に入らない希少本だ。さる筋に持ち込めば大変な高値で売れるに違いない。私が交渉してやるから、儲けは折半でどうだね?」
こうしてオヤジたちとの商談は成立し、私は2丁のカラシニコフ(1丁はロシア製でもう1丁は中国製だった)を携えて村はずれに赴き、20発をぶっ放して、意気揚々と村に帰ったのである。
すると、ついさっきとは全く違う殺気がみなぎっているではないか。広場に集まっている男達が、なにやら激しい調子で言い争っているのだ。
彼等の目的は……そう。私である。
次の瞬間、数十人の男達が私を取り囲んだ。彼等は口々に、何かわめいている。興奮した数人は、私に掴みかからんばかりのイキオイである。
間違いない。エロ本がバレたのだ。
敬虔なこのムスリムの国に、変なものを持ち込んだ日本人がいる。袋だたきにして山に埋めちまえ。そう。ここはトライバルエリアなのだ。
男達の血走った目が私を取り囲んだ。大声でわめいているせいで、なにを言っているのか聞き取れない。そのうち焦れた一人が、私の耳元で、こう叫んだのである。
「ギブ・ミー・ワンモア・セクシーブック!!!!」
(旅行ライター・中山茂大)