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40歳直前に部長をやめてカイロプラクティックの道へ

ライフ・マネー 投稿日:2017.04.06 12:00FLASH編集部

40歳直前に部長をやめてカイロプラクティックの道へ

 

 40歳を前に会社を辞めて、6年間の米国留学。貯金と退職金をつぎ込んで学んだのは、カイロプラクティックだった。

 転機には2つの種類がある。転機のほうからやって来るものと、自ら求めてつかみに行くものである。佐藤昌康さん(59)の場合は明らかに後者だった。

 

 あと2カ月で39歳を迎えるときだ。自分が40代になったときのことを想像してみた。ふと目の前を見ると大学の先輩で10歳年上の事業部長がいた。10年たったら事業部長の仕事か。そこからさらに7年頑張ると担当常務……。

 

 しかし、熱くなるものがなかった。20歳で成人して80歳まで生きるとしたら、大人の期間は50歳が折り返し点だ。40代はまだチャレンジしてもいいのでは……。

 

 大学を卒業してから西武百貨店に入社して2年後、チケットセゾンの設立時に事業部に配転となり、立ち上げから15年間同じ仕事に携わってきた。この仕事以外に何ができるのか?

 

 佐藤さんは太っていたこともあり腰痛持ちで、カイロプラクティックへ通っていた。ある日「先生の仕事って自由で楽しそうだし、客に喜ばれていいよね」と言った。すると同い年の先生が恐ろしいことをいった。

 

「サトマサもやってみたら。おもしろいよ!」
「40歳近くになってもカイロってできるの?」
「いくつになってもやろうと思えばできるでしょう。俺だってやってんだから」

 

 家に帰って奥さんに先生とのやり取りを話した。そして「やってみようかと思うんだけど、どう?」。

 

「普通の妻なら『40近くになって18、19歳の子供たちと一緒に勉強してどうするのよ』とか、『将来の保障は?』とか言って『馬鹿言わないで』となるわけですよ。ところがうちの場合は妻も変わっていて『おもしろそうじゃない。どうせ人生一回きりなんだからやってみたら?』『だろう?』」(佐藤さん)

 

 チャレンジするなら40前にと考えていた佐藤さんは、カイロの先生に、会社を辞めて勉強したいが、いい学校があるかと尋ねた。すると先生がまた恐ろしいことをいった。

 

「サトマサ、本格的にカイロを勉強するなら、本場のアメリカがいいよ」
「えっ? アメリカ?」
「アメリカじゃカイロは医学と一緒なんだ」

 

 そのことを奥さんに話すと「それはおもしろいわ」「じゃあアメリカへ行こう」となった。すぐ事業部長に「会社を辞めようと思う」と伝えた。

 

「辞めるって、お前どうするの?」
「カイロプラクティックの勉強を始めようと思います」

 

 こうして佐藤さんは1997年4月、39歳2カ月で当時部長職だった会社を辞めた。そして、1カ月半後には退職金と今までの蓄えを全部持って、夫婦2人でロサンゼルスへ旅立った。アメリカ生活の1年めは英語学校に通い、2年めから4年間「クリーヴランド・カイロプラクティック・カレッジ」で学んだ。そして1年間のインターン生活。6年を超える長期留学生活となった。

 

「やはり語学が大変でした。1年間英語学校に通いましたが、ネイティブの人たちと普通に会話ができるわけでもないし、医学の知識もないから、大学ではノートを取ることが難しかった。
聞き取れないんですね。大変苦労しましたが、それはそれで楽しみました。1年間やって単位も取れたので、2年めからはそこそこ自信がついてきました」(佐藤さん)

 

 アメリカではカイロプラクターは国家資格で、薬の処方と手術ができない点を除けば医者と変わらない。その資格を取って佐藤さんは46歳のときに帰国。

 

 以来カイロプラクターとして活躍中だが、日本ではアメリカのような医者同然の治療はできない。そこで、現在は独学でダイエット研究をしてきた奥さんと一緒に、ダイエットコーチングに力を入れている。

 

 奥さんの指導により3カ月間で12kg体重が落ち、血圧や中性脂肪の数値も改善され、悩まされてきた腰痛やぎっくり腰も出なくなった。ダイエットの効果は自ら実証済みである。

 

「カイロプラクティックの指導も施術もしますが、太った方や根本的なところが悪い方には、健康になる習慣を整えることをすすめています。3カ月間、生活習慣と食習慣を改善するダイエットの指導をすると『先生、カイロよりダイエットのほうが腰痛に効くねえ』。人にまかせた一回の施術よりも、自らの生活習慣を変えて健康になることを実感してくれることは嬉しいですね」(佐藤さん)

 

 佐藤さん夫妻は4年前に「日本ダイエットコーチング協会」を設立した。ダイエット方法を実際に指導するわけだが、ダイエットを自ら体験しながらコーチの資格が取れる講座もある。

 

「今は東京だけの活動なので早く全国へ広げたい。健康的な習慣を自分で考え、実行できるようなことを伝えていきたいし、コーチも育成したい」(佐藤さん)

 

 カイロプラクティックとダイエット。アメリカ留学が切り開いた道は、さらに大きな果実をもたらそうとしている。

 

(週刊FLASH 2017年4月18日号)

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