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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』あなたの悩みを一瞬軽くする3つの方法
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.07.11 06:00 最終更新日:2022.07.11 06:00
■【方法1】視座を高める
悩みにもいろいろあって、すぐに解決できそうなものから、どこから手をつけていいのかわからないほど大きな悩みもあります。後者の悩みを富士山にたとえてみると、大きな悩みを前に呆然としている人は、富士山の登山口を前に「どうしよう」と立ちすくんでいる人と同じといえるでしょう。
しかし、実際に富士山の登山口まで行って、「あーどうしよう」と何時間も迷っている人はいません。登り始めて途中で体力の限界を迎えたら下山するか、山小屋で休みます。頂上までたどりつけなくても、誰かに叱られるわけでもなく、ペナルティーがあるわけでもありません。
5合目の登山口から登り始めて、約30分かけて6合目まで来たときに、後ろを振り返ります。そうすると想像以上に雄大な風景が開けていることに気づきます。登山口のあたりには木が生い茂っていて、眺めがよくなかったのが、1合登っただけで、見える風景がガラリと変わったわけです。このとき、間違いなく頂上に近づいていることを実感します。30分登っただけでここまで来られたということは、頂上まで登ることもそう無理な話ではありません。さらに登っていって、9合目まで来れば、「あともう少しだ」と登頂も非常に現実的になります。つまり、少しずつ歩みを進めていくことによって、富士山の頂上まで登るという目標が現実のものになっていったのです。
悩みについても同じです。最初の一歩を踏み出し、前に前にと進んでいくことで、物事を俯瞰できるようになり、かつ、自分の現在の立ち位置を理解できるようになります。そうすると、悩みの解決という “頂上” も視界に入ってくるというわけです。
これが「視座を高める」ということです。そして、視座を高めるには「どうしよう」と思い悩むばかりではなく、解決に向けての第一歩を踏み出すことです。
■【方法2】他人の視座を借用する
私の患者さんに、過干渉で支配的な母親、いわゆる「毒親」と同居している方がいました。母親の過激な言葉に動揺して、精神状態が不安定です。患者さんは「親の性格を変えるなんて今さらできないし、どうしようもない」と絶望的な気持ちになっています。「一人暮らしをしたら」という私のアドバイスに、患者さんはびっくり。生まれてからずっと親元を離れたことがなく「一人暮らしをする」という発想がまったく浮かんでこなかったのです。それでも、その患者さんは数カ月後に一人暮らしを始めて、精神状態がみるみる改善していきました。
自分の視座、つまり、自分の経験や体験、アイデアだけで考えようとすると、どうしても答えや選択肢の幅が狭まってしまい、いい対処法、解決法が浮かばないのです。
しかし、他人の知恵を借りる、他人の知識や経験を借用する、専門家のアドバイスや助言をもらうようにすると、何カ月も悩んでいた問題に、一瞬で解決法が示されることがあります。専門家でなくとも、あなたの身の回りの、自分よりも経験豊かな人、たとえば、職場の先輩に聞いてみるのもいいでしょう。
もちろん、それですぐに解決できるとは限りません。この場合、解決策そのものよりも、悩みを相談という形で外に出すことによって、自分一人で抱え込まないようにすることのほうが大切です。「相談する」というと、ハードルが高く感じられるので、視座やアイデアを借用するくらいのスタンスで聞くのがいいでしょう。
■【方法3】検索する
それでも、「人に聞くのは抵抗がある」「そもそも相談できる人が周りにいない」という悩みもよくあります。そういう場合、「他人の視座を借用する」うえで最も簡単な方法は「検索する」ことです。文章にすると「なんだ」と思われるかもしれないのですが、わざわざこうして書くのも、検索しない人がじつにたくさんいるからです。
私のYouTubeチャンネルには、毎日30個以上、1カ月で1000個以上の質問が寄せられます。しかし、そのうちの95%以上は、過去にお答えした質問とまったく同じです。昨日アップロードした動画と、全く同じ質問が寄せられることもあります
検索すれば、すぐに解決法が見つかることも多いのに、ほとんどの人は、一人で悩み続けます。これまでの知識、経験で解決できないことは、100時間悩んでも解決するはずがありません。しかし、他人の知識を借用すれば、視座が高まり、一瞬で解決するのです。
無料で悩みの相談ができる一番手っ取り早い方法が検索。検索を上手に活用するだけでも、あなたの悩みの大部分は、解決に向かいます。少なくとも、対処法や解決法はわかりますから、あとはそれを行動に移すだけです。
悩んでいると苦しいし、それがストレスになります。ひどくなると、メンタル疾患に陥るかもしれません。視座を高めることで、日ごろの小さな悩みを、小さなうちに解決する習慣をつけてください。
かばさわ・しおん
樺沢心理学研究所代表。1965年、北海道札幌市生まれ。札幌医科大学医学部卒。YouTubeチャンネル「樺沢紫苑の樺チャンネル」やメルマガで、累計60万人以上に精神医学や心理学、脳科学の知識・情報をわかりやすく伝える、「日本一アウトプットする精神科医」として活動
イラスト・浜本ひろし