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樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』電車内でのトラブルが急増しているワケを脳の仕組みから考える

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2022.08.01 06:00 最終更新日:2022.08.01 06:00

樺沢紫苑の『読む!エナジードリンク』電車内でのトラブルが急増しているワケを脳の仕組みから考える

満員電車のストレスはすさまじい!

 

 最近、電車の乗客同士のトラブルが相次いで報道されています。

 

 たとえば、7月8日、小田急江ノ島線の車内で20代の男性の乗客同士が激しく口論し、別の乗客が非常通報装置を押したため電車が緊急停止。止まった電車から車掌が乗客全員を降車させた影響で、小田急の全線が運転見合わせになりました。駆け込み乗車をした男性に注意をしたことが口論の原因といわれています。

 

 

 また、さかのぼる7月4日には、東急田園都市線の車内で50代男性が暴れて、車両連結部の扉のガラスにひびが入り、器物損壊の疑いで現行犯逮捕されました。

 

 ほかにも、電車内や駅のホームなどで、喧嘩や口論などのトラブルが、7月に入ってから多発しています。そんな、電車での乗客トラブルが増えている理由、そして、満員電車に乗るとなぜイライラするのかを科学的に解説したいと思います。

 

■満員電車に乗っているとき、脳内はどうなっているのか?

 

 コロナ禍が一時期下火になったことで、リモートワークから出社勤務に切り替えた会社も増え、そのため電車が混雑することも多くなりました。約2年ぶりの満員電車。以前は、毎日経験していたわけですが、久しぶりということで、あらためて強いストレスを感じる人が増えているのかもしれません。

 

 満員電車に乗ると「イライラする」というのは、経験的には理解できますが、このとき私たちの脳や体ではどのような反応が起きているのでしょう?

 

 イギリスの心理学者、デイヴィッド・ルイスの研究によると、「臨戦態勢の戦闘機のパイロット」「機動隊の隊員」と、「ラッシュアワーに電車で通勤する人」の心拍数(脈拍)や血圧を測定して比較したところ、電車通勤の人が、最も高い数値を示したといいます。すなわち、電車通勤している人は、戦闘機のパイロットや機動隊の隊員よりも強いストレスを受けている、ということです。

 

 また、拙著『脳を最適化すれば能力は2倍になる』(文響社)でも紹介しましたが、スウェーデンで通勤電車の乗客を対象に、混雑が心身に与える影響を調べた研究があります。

 

 これによると、途中の駅から混雑した車両に乗り込んだ乗客は、始発駅近くの空いた車両から乗った乗客より、採取した尿から高いレベルのアドレナリンが検出されたといいます。このことは、徐々に混んでくることにはさほどストレスを感じない一方で、いきなり満員の車両に乗ると大きなストレスを感じるということを示しています。

 

 さらに、これはマウスを対象にした1960年代の古い研究ですが、狭いケージでたくさんのラットを過密状態にして飼育すると、アドレナリンの血中濃度が異常に高い値となり、噛みつき合うなどの攻撃的な行動が増えたといいます。

 

 さらに密度が増すと共食いをしたり、雄同士で交尾をしたりといった異常行動が表われたというのです。

 

 アドレナリンは、怒りを感じたり興奮したりしたときに分泌されるホルモンです。満員電車でキレやすくなるのは、アドレナリンが分泌されて、脳内が「臨戦状態」になっているからです。

 

■睡眠不足になると怒りっぽくなる

 

 電車でのトラブルが特に7月上旬に連発したのは、ストレスに加えて、記録的猛暑も関係しているでしょう。東京都心では、6月末から7月にかけて9日連続で気温が35度を超える猛暑日が続きました。この時期、夜間の蒸し暑さで寝不足になった人も多かったはずです。

 

 睡眠不足や不眠になると、自律神経のバランスが崩れて交感神経の活動が亢進(こうしん)し、血圧や心拍数の上昇が持続します。そうすると、怒りっぽくなったり、イライラしたりすることが増えてきます。

 

 また、日中の活動量が低下するため、セロトニンが減少します。睡眠を促進する睡眠物質・メラトニンは、セロトニンを原料として作られるため、セロトニンが減少するとメラトニンも減少し、さらに睡眠不足を引き起こすという悪循環が起きます。

 

 セロトニンには、「感情をコントロールする」という重要な役割があるため、イラッとさせられるような状況に直面したとき、セロトニンが活性化している人は、我慢することができます。ところが、セロトニンが減少している人は、すぐにぶちキレてしまうのです。

 

( 週刊FLASH 2022年8月9日号 )

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