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先進医療のさらに先!前立腺ガンは「凍結」して治せ
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2017.05.18 16:00 最終更新日:2017.05.18 16:00
前立腺ガンの分野で、先進医療のさらに先の技術の確立を目指している医師がいる。東京慈恵会医科大学付属病院泌尿器科診療副部長の三木健太医師だ。
通常、検査等で前立腺ガンが見つかると、患部の全摘や放射線治療、病気が進行している場合はホルモン治療が行われる。
そこに生まれた新しい治療方法が、患部を凍らせてガンを死滅させる凍結療法だ。全身麻酔を施した後、ガンに針を数本刺し、そこへガスを注入しマイナス40度に冷やす。すると、ガンが凍って死滅するのだ。
「2015年10月から臨床試験をスタートさせ、現在まで6名の患者さんに治療を行っています。一番長い方で治療後1年半が経ちましたが、全員腫瘍マーカーも下がり、合併症もなく、経過は順調です」(三木医師)
凍結療法自体は研究も盛んに行われている。日本でも腎臓にできる腎ガンでは凍結療法の研究が進み、現在は健康保険が適応されるほどポピュラーな治療法になった。
前立腺ガンも同じようになれば、もっと多くの患者さんが高額な医療費を気にすることなく治療を受けられるのではないか――。しかし、三木医師によると、それほど簡単なことではないという。
「現在、前立腺ガンの凍結療法は、患者さんに150万円ほどご負担いただいています。ですが、実は病院にも大きな負担がかかっているのです。凍結療法に使用する針は1本10万円ほど。それを一度の治療で4~5本は使い捨てしなければなりません。現状では凍結療法は病院にとって『まったく採算の取れない治療』なんです。当院は大学病院としての使命から積極的に行っていますが、一般的な病院が簡単にトライできる治療ではありません」
現在、前立腺ガンの凍結療法を行っているのは、日本でも三木医師ただひとりだ。それだけでも、病院側のハードルが相当高いことがうかがえる。
「お金だけの問題ではありません。まずは、何よりも安全性を確立させることが大切なんです。これまで凍結療法を行った6名の方は、放射線治療後に再発してしまった患者さんのみです。この適応が正しいのか、もう少し広げられるのかを慎重に検討していく必要があります。必ずしも新しい技術が万能で素晴らしいわけではありませんので、凍結療法の効果が上がる患者さんを見極めていくことが重要です。臨床試験をあと数年は続けなければ、保険適応になるかなど次のステップに移ることはないと思います」
高齢者でごくごく初期の前立腺ガン患者の場合、症状が出なければ、そのまま治療せずに定期的に体調をチェックするだけの場合もある。
「それこそ病院は採算が取れません(笑)。でも、見守るだけの治療が一番いい場合もあるのです。最先端の治療だけでなく、それぞれの患者さんの状況で最善の治療を提供していかなければならないといつも思っています」