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発売から53年ーー日米を熱狂させた名車「フェアレディZ」が純ガソリンエンジンを搭載して最終進化

ライフ・マネー 投稿日:2022.09.04 06:00FLASH編集部

発売から53年ーー日米を熱狂させた名車「フェアレディZ」が純ガソリンエンジンを搭載して最終進化

1969年産のS30(上)、2022年産のRZ34

 

 1月に「東京オートサロン2022」で日本初公開された新型フェアレディZ。240台限定先行発売されたモデルに1万件以上の応募が殺到した人気車を徹底解剖。純ガソリンエンジンを積んだ最後のモデルとなる新型には初代S30から受け継がれたZの遺伝子が宿っている。

 

■若きデザイナーの情熱が生んだZのレガシー

 

「じつは今、若いデザイナーが自主製作しているスポーツカーがあるから見ますか?」

 

 

 もしあのとき、この言葉がなかったら、そして当時の米国日産社長・片山豊氏が「すぐにでも見たい」と言わなかったら、スポーツカーの名車「フェアレディZ」は生まれなかったかもしれない。

 

 その若きデザイナーとは一昨年、86歳で亡くなられた松尾良彦氏。初代フェアレディZのデザイナーの一人である。のちに松尾氏は「片山さんと川又克二(日産)社長が、フェアレディZに心から惚れ込んでくれたおかげで、世界的なスポーツカーになった」と感謝の気持ちを語っていた。

 

 偶然ともいえる出会いによって誕生したフェアレディZはその後、スポーツカーの本場のアメリカ市場で、大量のバックオーダーを抱えるほどの大ヒットとなった。

 

 今でも世界中のスポーツカー好きから「S30型」の型式で呼ばれる初代モデルは、1978年に2代目(S130型)へと世代交代するまでの9年間で、約55万台生産されたのだ。このヒットによってフェアレディZは日産にとって特別な存在となり、以降2年ほどの販売中断はあったものの、最新の7代目モデルへとDNAは受け継がれてきたのである。

 

 そして2年前の9月、姿を現わした新型には「RZ34型」という型式が与えられていた。このRとは「リファイン」の意味であり、厳密には6代目モデル(Z34型)のビッグマイナーチェンジという立ち位置になる。実際に車体のベース部分は旧型を踏襲している。Z34型で熟成され、進化を続けてきたベースがあるなら「利用しない手はない」ということでの継承なのだろう。

 

 テストコースではあるが日産の自社開発による3リットルV6ツインターボエンジンは最高出力405馬力と強力。その加速性能は強烈で切れ味抜群。

 

 一方でサスペンションのセッティングはしなやかにして上質な仕上がり。けっしてじゃじゃ馬ではなく、車名のとおりエレガントで上質な走りを実現している。520万円台から650万円台にも届こうかという価格帯は額面だけを見れば、リーズナブルとはいえない。だが新型の性能とスタイルの仕上がりを考えれば「高性能をロープライスで」というZに与えられた使命を果たしているのではないだろうか。

 

 注目のデザインは「初代をはじめ、歴代Zへのオマージュ」を感じさせる要素を全身にちりばめながら激変した。

 

 全体のフォルムは、初代の特徴である伸びやかなエンジンルームと、ストンと垂直に切り落としたようなリアセクション。ロングノーズ・ショートデッキというそのフォルムは、ノスタルジーと進化の絶妙なる融合を果たしている。

 

 さらに、まるでスケールで線を引いたかのようなスクエアで大きめのラジエーターグリル。さらにボンネット中央にあるパワーバルジという膨らみ、そしてティアドロップ形状(しずく型)のLEDヘッドランプなども、初代を彷彿とさせる仕上がりである。

 

 そのほかにリアコンビネーションランプなどにも歴代Zの香りが漂っているのである。もしこのデザインを松尾氏が見たらどんな感想を抱いただろうか? 今となっては確認できないのが残念だ。

 

 世界にはこれまでZを支え、愛してきた数え切れないほどのファンがいる。この新型には賛否があると聞くが、熱狂的なファンと、そして世界のスポーツカーファンが待ち望んでいた「Z復活」はおおむね好意的に受け止められているようである。あまりの人気で納車まで2年、いや4年かかるなどといわれる。

 

 だが、残念ながら現状では注文すら入れられない。発売と同時に注文が殺到したことと、新型コロナウイルス感染拡大、ウクライナ情勢など世界情勢を鑑み、日産は「7月31日をもって受注をいったん停止する」と発表したのだ。スポーツカーとはある意味、平和の象徴でもある。だからこそなんの屈託もなく、走りを楽しめるようになることを祈るばかりだ。

 

取材/文・佐藤篤司

( 週刊FLASH 2022年9月13日号 )

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