どういう人がどんな街に住みたいと思っているのか。
それを分析するために私は2016年に、独自に「住みたい街調査」を行った。三菱総合研究所「生活者市場予測システム」(2015)に回答した人の中から、東京、千葉、埼玉、神奈川に住む20~40代の男女1500人に追加調査をしたのである。
質問は「あなたが今までに一度は行ったことがある(住んだことがある)街の中で、 今後(今後も)住みたいと思う街はだいたいどのあたりですか。以下の首都圏の街の中から、いくつでも選んでください。なお、その住みたい街にすでに住んでいる場合も選んでください」というものだ。
総合ランキングでは、1位が横浜みなとみらい。ただし、回答した人は、みなとみらい地区だけでなく、横浜駅周辺、山下公園、中華街、元町あたりも含めて回答した可能性も大きいと思われる。
以下、2位鎌倉、3位吉祥寺、4位恵比寿、代官山、中目黒(以下「恵比寿」と略す)。いずれも住宅地というだけでなく有名な観光地、商業地でもあるので、上位に来るのは当然だ。
住みたい街には、年収の基礎となる雇用形態や学歴の影響もある。4大卒で民間企業の正社員であれば都心に勤める人の割合が増えるし、高卒などでフリーターであれば地元の飲食店などで働く人の割合が増えるからである。そこで正社員(公務員は除く。以下同)と非正社員の住みたい街の違いを見てみる。
正社員の女性が住みたい街は、1位が恵比寿で18%。2位が表参道、3位が吉祥寺、4位が二子玉川、5位は横浜みなとみらい、以下、赤坂、六本木、三軒茶屋と続く。
これに対して、非正社員の女性が住みたい街の1位は横浜みなとみらい。2位は同率で鎌倉と千葉、4位が吉祥寺、5位が恵比寿。
参考までに専業主婦も見ると、横浜みなとみらいが1位で、2位が鎌倉、3位が千葉、4位が吉祥寺、5位が恵比寿。
このように非正社員の女性の街の好みは専業主婦と似ており、いわゆる人気のある街が多くあがる。そしてそれらの好みは正社員の男性と近い。正社員の男性と非正社員の女性が結婚している場合が主流だからである。
それに対して正社員の女性は、自分の稼いだお金で自分の好きな街に住めるので、選ぶ街が違ってくるのだ。
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以上、三浦展氏の新刊『東京郊外の生存競争が始まった! 静かな住宅地から仕事と娯楽のある都市へ』(光文社新書)から引用しました。
「地方化」する東京郊外/日本中で減った若者が23区内に集中/新宿区の女性未婚率は42歳で37%/さいたま市が表参道より人気……ほか生き残る街の未来を考えます。