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がん、糖尿病、脳出血も発見!命を救った「ドアノブ・クエスチョン」医師が明かす20の実例
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.02.19 12:46 最終更新日:2023.02.19 12:47
■<函館稜北病院 総合診療科 舛森 悠医師>
◎「脚が痛い」ーー 劇症型溶血性連鎖球菌感染症
診察ではなく、自己治療でも注意が必要だ。「私が研修医のときに先輩医師が診察した中年の男性患者さんが強く印象に残っています。急激に脚が痛くなったと救急搬送されてきましたが外傷はなく、診察のため触れると激痛を訴えていました。血圧は低下し、採血検査ではすでに多臓器不全を示す結果でした。
そして、2日後に息を引き取りました。原因は、人喰いバクテリアと呼ばれる劇症型溶血性連鎖球菌感染症。感染から数十時間で、約3割が死に至るという感染症です。皮膚からの侵入が多いため、小さな怪我でも傷口はよく洗い、消毒しましょう」
◎「熱と頭痛」ーー 髄膜炎
「50代の男性患者さんが、咳と発熱で近くの病院を受診しました。風邪の疑いで、薬を出されて帰宅。薬を服用し、一度は解熱しました。しかし再び発熱し、頭痛もすると、再度受診しましたが、やはり痛み止めを処方されて帰宅させられたそうです。最初の発熱からこの時点で2日が経過。しかしその後、頭痛がひどくなり、嘔吐してしまったため、当院を受診しました。
検査の結果、ウイルス性髄膜炎でした。髄膜炎は種類によっては、速やかに抗生物質を使わないと命に関わることが多いです。発熱と頭痛がある際は、髄膜炎の可能性を疑います」
■<えびな脳神経クリニック理事長 尾崎聡医師>
◎「突然の頭痛」ーー 可逆性脳血管攣縮(れんしゅく)症候群
「44歳の女性が3日前に滝行をした後、突然の強い頭痛に襲われたということで受診されました。MRI検査をしたところ、血管が狭くなっている箇所があり、可逆性脳血管攣縮症候群と診断しました。
可逆性脳血管攣縮症候群とは、一時的に脳の血管がギュッと収縮し、痙攣を起こす症状です。自然に改善することも多いですが、なかには、血管が縮んだことによって脳梗塞などを起こすケースもあります。突然起きた頭痛は、放置しないでください」
◎「左後頭部が痛い」ーー 心筋梗塞
「70代の女性患者さんから、『左の後頭部が痛い』という訴えがありました。MRI検査をおこなっても異常はありませんでしたが、気になったため心電図を取ったところ、心筋梗塞であることがわかり、すぐに専門医がいる病院へ救急搬送することになりました。
胸の痛みや、息苦しさなどもまったくなく、ただ後頭部が痛いというだけだったので驚きました。左後頭部のみが痛いといった症状がある場合には、放置せず受診してほしいと思います」
■<NES駒沢クリニック代表理事 吉武光太郎医師>
◎「皮膚が痒い」ーー 帯状疱疹
「皮膚の痒みがあり、市販薬のステロイド軟膏を1週間ほど塗っていたが、回復せず患部が真っ赤になったと、受診された患者さんがいます。診察すると、ひと目で帯状疱疹だと診断できました。
帯状疱疹は通常ピリピリとした痛みをともなって紅斑と水疱ができるのですが、たまに赤みと痒みだけの方がいるため湿疹だと思い、初期の段階で放置してしまうケースもあります。酷くなると皮膚症状が回復した後も痛みが長く残る場合があります」
◎「額にシワ」ーー 眼瞼下垂
「50代の女性患者さんから、眉毛が下がりまぶたが重いと相談がありました。よく観察すると額のシワの状態から眼瞼下垂が原因だとわかりました。
眼瞼下垂は、加齢にともないまぶたを上げる筋肉が伸びてきてまぶたが上げづらくなる症状です。それにともなって無意識に額を使って無理やりまぶたを上げるようになるため、額にシワができてしまいます。手術をしたところ、目が開くようになり視界が開け、見た目も大きく変化しました」
■<クリニックF&T院長 高見澤哲矢医師>
◎「頬の内側が白い」ーー 口腔がん
「歯の検診のために受診した患者さんは長年、奥歯が頬に当たっていましたが、それほど痛みはなく、気にしていないということでした。しかし、口腔内を見ると頬の内側が白くなっていました。念のために大学病院の受診をすすめ、紹介状を書きました。
すると、やはり口腔がんと診断され、無事にすべて切除することができました。歯が頬などに当たるという方や、口腔内で変色している箇所がある方は、ぜひ一度受診してほしいと思います」
◎「インプラントを希望」ーー 扁平上皮がん
「40代の男性患者さんがインプラントにしたいと、4年ぶりに受診されたときのことです。雑談で『年齢のせいか最近疲れやすい』という言葉が気になったのですが、インプラントのために顎のレントゲンを撮影しました。すると黒く写る部分があり、これは怪しいと思い、大学病院に紹介。
結果、扁平上皮がんだとわかりました。幸い、その患者さんは寛解しました。雑談からヒントを得ることができた、まさにドアノブ・クエスチョンだと思います」
■<福住整形外科クリニック院長 亀田和利医師>
◎「首から腕が痛い」ーー 肺がん
「70代前半の男性患者さんは、半年前より左頚部から左腕にかけて痛みが出てきており、寝違いだと思って様子を見ていたそうです。次第に安静にしても痛むようになり、整形外科病院を受診。首のレントゲンとMRIを撮りましたが、異常はなく湿布と投薬で様子を見ました。しかし、1カ月たってもよくならないので胸部CTを撮ったところ、肺がんが左胸に見つかりました。
がんが神経にさわり、痛みが出てくるパンコースト腫瘍だったのです」
◎「ひどい腰痛」ーー 肺がん
「68歳のトラック運転手の患者さんは、腰痛に悩んでいました。徐々に右下肢のしびれも出てきて坐骨神経痛を疑い、市販の鎮痛薬を飲んでいました。
しかし、だんだん両下肢の力が入らなくなり、歩行困難となり、それを見ていた同僚が不安になり、本人を抱えて病院にいらっしゃいました。MRIで背骨に数箇所、腫瘍が認められ、細かく検査したところ、肺がんと診断。その後、リハビリテーション加療と放射線治療で、無事退院されました」
取材/文・吉澤恵理(医療ジャーナリスト)