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藤井聡太新名人&七冠 歴代名人「AI超え」神の手に感嘆するも…ひふみん「でも彼は史上最強じゃない!」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2023.06.07 06:00 最終更新日:2023.06.07 12:55

藤井聡太新名人&七冠 歴代名人「AI超え」神の手に感嘆するも…ひふみん「でも彼は史上最強じゃない!」

「谷川先生の40年前の記録が破られるとは、想像していませんでした」(森内九段) 写真・野澤亘伸

 

 将棋界のスーパーヒーロー・藤井聡太竜王(20)が、また偉大な記録を打ちたてた。

 

 渡辺明名人(39)に挑んだ第81期名人戦七番勝負は、6月1日に閉幕。藤井は4勝1敗で制し、史上最年少で将棋界最高峰の名人位を獲得した。同時に藤井は、史上最年少で七冠を達成した。

 

 大偉業を成し遂げた藤井について、元名人の加藤一二三九段、森内俊之九段、佐藤天彦九段に語ってもらった。

 

 

 1960年の名人戦で、加藤は大山康晴名人(当時)に挑戦。そのとき、加藤は20歳3カ月。藤井が名人に挑戦したのは20歳8カ月で、加藤の挑戦最年少記録はいまも破られていない。

 

「大山名人は37歳で、永世名人の資格もあった第一人者でした。僕もよく戦いましたが、1勝4敗で負けました。私と藤井さんは、素晴らしい手を指し続ければ勝てるのが将棋だ、と考えている点が共通していると思います」(加藤)

 

 1983年、当時21歳2カ月だった谷川浩司(現十七世名人)は、名人戦七番勝負で加藤名人(当時)を4勝2敗で下し、名人位に就いた。これが、藤井が破るまで40年間続いた史上最年少記録だった。

 

「最年少名人は、中学生で棋士にならないと、達成することが困難です。順位戦は1年にひとつしかクラスを上がれないし、名人への挑戦権を争うA級まで到達するには、時間がかかる難しい道中です」(森内)

 

 20歳で七冠という記録は、破られる可能性はあるのか。

 

「現状においては想像しがたいです。AIネイティブの子どもが中学生棋士になり、順位戦を駆け上がれば、最年少名人の記録更新は想像できなくもありません。それに比べると、20歳で七冠のほうは非現実的でしょう」(佐藤)

 

 現状、どうして藤井はここまで強いのか。

 

「藤井さんは、研究の量がじつに膨大。序盤戦は非常に巧みですし、終盤戦の力も非常に冴えています。(決着局となった名人戦第5局も)完璧な将棋を指していますね」(加藤)

 

「現在はAIを使った研究が主流です。少なくともこのやり方だと、藤井さんが抜けている。将棋の歴史を俯瞰したときに、これだけ先の先が読めて、質が高い手を考えられた人は、なかなかいない。読みの量と質は、鍛錬するとだいたい似たようなところにたどり着き、上位棋士の中でも差がつきにくい。ところが藤井さんの場合は、ほかの一流棋士と比べても、読みの質が、頭ひとつかふたつ高い。また、藤井さんはやりたいことを盤上で表現しながら勝つことができているので、自信を失いにくい。これだけ注目されながら戦って、高い勝率を維持し、タイトル獲得という実績を残されているのは、類いまれな精神力を持っているといえます」(佐藤)

 

 藤井がまだ取っていないタイトルは、王座ひとつのみ。八冠は実現するのだろうか?

 

「王座戦の挑戦者決定トーナメントでは、藤井さんは現在ベスト8まで進み、挑戦者になるにはあと3連勝が必要です。タイトル戦と違い、一度も負けられないので、そこがいちばん大きな鍵です」(森内)

 

「藤井さんが挑戦者となって永瀬(拓矢王座)さんと戦った場合、勝算は7割です」(加藤)

 

 ほかの棋士たちが、藤井に勝つには?

 

「藤井さんは研究が大好き。ライバルの棋士たちも、藤井さんと同じくらい研究することが大事だと思います」(加藤)

 

「いままでは、一流や上位を狙える棋士は、時代の流れとマッチしたうえで、自分自身の調子がよければタイトルを獲れました。ただ、これからは藤井さんという規格外の存在に勝たなければならず、ハードルはより高くなる。それでも、いろんなタイプの人が藤井さんにぶつかっていけば、彼の研究や思考が分散し、ほかの棋士が勝つチャンスが生まれるかもしれません。現状、トップの棋士を中心に、AIで同じようなツールを使って、同じような戦型を研究している。そうじゃない研究方法を選んだほうが、藤井さんに勝てるかもしれません」(佐藤)

 

「藤井さんは真っすぐな将棋を指すので、勝敗にこだわらない棋理を追求した挑戦者が、藤井さんに勝つというのが自然な流れでしょう」(森内)

 

 現在の藤井は、すでに史上最強といえるのだろうか?

 

「いやいや、史上最強ではないですよ。名人戦でも、つけいる隙は何度かありました。全盛期の私と藤井さんとは、いい勝負だと思います。大先輩では大山康晴十五世名人がいますし。最強かどうかは、今後の活躍で決まります」(加藤)

 

 藤井新名人、新七冠の誕生ですら、まだ伝説の“途中”ということか。

 

文・松本博文

( 週刊FLASH 2023年6月20日号 )

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