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ライフ・マネーライフ・マネー

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レコード会社をやめ家業の呉服屋を復活させた男の仕事術ライフ・マネー 2017.09.07

写真:AFLO

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 夏が終わり、祭りも秋のシーズンを迎える。安居卓実さん(34)は祖父の代から70年続く「丸星」という呉服屋を経営している。

 

 といっても主力商品は着物ではなく、半纏などの祭礼用品だ。6月からの半年間が稼ぎ時となる。店は横浜・鶴見の商店街にある。かつては約200軒の商店で賑わったが、今はシャッター通りと化し、開いている店は二十数軒あるのみだ。

 

 安居さんはまだ34歳と若いが、 家業の立て直しや借金返済、病気など、人の何倍も苦労を重ねてきた。

 

「音楽がやりたくて大学卒業後、浜崎あゆみなどが所属しているエイベックスというレコード会社に入ったのです。契約社員としてレコーディング・エンジニアや作曲をしていました。

 

 給料は出来高制。曲が売れなくて収入が少なく、大手通信会社の契約社員を掛け持ち。アンテナを建てる土地を探し、貸してもらえるよう交渉する仕事です。

 

 1年めなのに、景観法が厳しくて20年のベテランでも契約が取れずに苦労していた鎌倉と京都で、契約を結ぶことができました」

 

 安居さんは「運がよかっただけ」と謙遜するが、けっしてそうではない。京都で最初に契約してくれたおじいちゃんには、部屋に飾ってあった従軍時代の賞状を見て、ビルマのインパール作戦の数少ない生き残りだった祖父から聞いた戦争の話をした。

 

 それがたいそう喜ばれ契約の運びとなった。当時、会社では売り上げトップの営業マンに、社長賞として毎年100万円のボーナスが出た。1年めで東日本1位となった安居さんはこれを手にした。 23歳のときだ。

 

 そのボーナスを持って京都のおじいちゃんを訪ね、そのまま差し出した。「まだ子供だったんです。恩返しのつもりでした」と安居さんは笑う。おじいちゃんは100万円を受け取らず、その代わりに地主を何人も紹介してくれた。

 

「特別な営業はしませんが、売って終わり、ではなく顧客を大事にすることが重要です。それが今の仕事に生きています」

 

 安居さんは4年間社長賞に輝いた。4年めの表彰は病気で会社を辞めた後のことだった。しかし、「安居さんでなければ」という契約相手には、今でも安居さんが更新手続きをおこなっている。

 

 26歳のときに椎間板ヘルニアの手術を受け、同時に内臓の病気にもかかった。身長180センチで100キロあった体重が60キロに減った。しばらくの間まったく動けなくなり、どちらの会社も辞めた。

 

 父親は祖父から受け継いだ家業を細々と続けていたが店をたたむつもりでいたので、在庫整理の手伝いをしながら次の仕事を探そうと思い、「丸星」に入った。

 

「私の祖父は小学校を出ると滋賀県から上京し、結婚してからは古着や廃棄された着物を集め、それを祖母が直して古着として売ることを始めました。それで資金を貯え、鶴見にビルを建てました。呉服から始まって婦人服、子供用品、下着やタオルなども扱い、店は結構繁盛しました」

 

 父親の代になると着物が売れずに売り上げが落ち込む一方だったが、有効な経営改善策は試みられなかった。銀行の借り入れが4000万円になり、店を売ってその返済にあてることを考えていたが、調べてみると在庫の価値はそれほど高くなく、店にある反物は二束三文にしかならない。店を売った後の展望もなかった。この店で何かできないか? 

 

 ある日、荷物を整理していたとき、お祭りの半纏の型紙を見つけた。手先が器用だった母親が以前、暇つぶしにと呉服屋の染めの技術を生かして近隣の町内会用に作ったものを、残しておいてくれたのだ。それを見て安居さんのDNAが反応した。自分で作ってみよう!

 

「お祭り用品の顧客数は、10年前は100人にも満たなかったのが今は約5000人。いろいろな職人の技術を見て回るとともに学び、自社でできないかと挑戦しました。店を閉める予定だったので、次につなげるとか、利益のことはまったく考えず、常に最後の客と思って作ったから印象に残り、口コミで広がりました。

 

 この業界はいろいろな仲介業者が入っているので、職人が1万円で作ったものを、お客様は最終的に5万円で買ったりします。うちは自社製作ですから他社より圧倒的に安く、細かな注文にも対応できると、多くのお客様から驚かれます」 

 

 借金は8年かけて返済し、今は無借金経営だ。株や土地の整理もしたが、急増した祭礼用品の売り上げが大きかった。安価で良質、個性的とくれば千客万来なわけだが、増えていく客に対し製作が追いつかないのが現状だ。

 

「組織化し大量生産するのも可能ですが、そうするとお客さんの細かいニーズに応えることが難しく、つまらない店になるのが心配です」

 

 この状況をどのように乗り越えるのか、安居さんのさらなる飛躍はその先に待っている。
(週刊FLASH 2017年9月19日号)

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