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外資企業の給料はどうやって決まる? 意外や意外「業界水準を横目に見ながら」だった!

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2024.08.26 11:00 最終更新日:2024.08.26 11:06

外資企業の給料はどうやって決まる? 意外や意外「業界水準を横目に見ながら」だった!

写真はAC

 

 私は外資系、それも比較的大手の外資系企業の人事部長を長く務めてきましたが、ご存知のように、日本における外資系企業のプレゼンスは、思いのほか、「量的にはとてもニッチなもの」なのです。それは経済産業省の統計を見てみると、ハッキリと分かります。

 

 それによると、2020年3月末時点で、外資系企業の数は約2800社あまりなのですが、日本における会社の総数は、およそ420万社といわれていますので、外資系企業の存在とは「全体の1%にも満たない」、かなり小さなものといえます。

 

 

 とはいうものの、その割合は「単純に数で表したもの」に過ぎませんから、たとえその数は小さいものだとしても、その質(中身)に関しては、時としてその他99%の日本企業のはるか先を行くケースもあります。そしてそのよい例が、「ジョブ型」雇用制度となります。そこで、気になる「ジョブ型」での「給与格差」について、そのメカニズムに触れていきたいと思います。

 

 よく「ジョブ型」での報酬は、「各々の職務(ポジション)に紐付けられたジョブ・グレード(等級)に、あらかじめ割り振られたサラリー・レンジ(給与バンド)の範囲内で、個々人と会社の業績に応じて決定される」といわれています。

 

 もし、そうなのだとすると、

 

「より具体的に、そのレンジの中で、自分の給料は、誰がどう決定するのか知りたい」

 

「外資型に『春闘』がないとしたら、いったいどうやってそのレンジが更新(「日本型」でのベースアップ)されるのか?」

 

「そもそも昇給ってあるのか……」

 

 などなど、気になるところが多いと思います。

 

 ちなみに、サラリー・レンジはマーケットの現状に応じて決定されるのが原則なのですが、「そもそもそのマーケットって何?」というのが正直なところでしょう。そう、もっと「日本型」のサラリーパーソンにも分かりやすく説明してよ、というのが本音だと思います。

 

 その「マーケット」という概念についてですが、たとえばここ日本でのケースでいうなら、「国内での同業他社など、わが社が参考とする業界における他社での実際の給与実績」であり、そのマーケット・データに基づいて「わが社があるべき立ち位置」に応じて、もしくは参考にして決めるのが、基本的な「外資型」での給与決定方法となります。

 

 すると、「その他社での給与実態データを、いったいどうやって入手するのか?」とさらなる疑問が生まれます。

 

 その「同業他社における給与実績データの入手方法」についてですが、基本的には毎年、ある一定の時期に、「報酬分析調査」といった名目で、大手外資系コンサル会社が全産業別、もしくは特定のセクター(たとえば「金融関係」のみ)に対して行なっております。

 

 より具体的にご紹介すると、「今年も調査に参加しませんか?(もちろん有料です)」「ご参加された企業の皆様には、例年通り同業他社のデータを(もちろん匿名やコード・ネームで)共有しますので、採用・昇給・昇格にお役立てください」というビジネスモデルです。

 

 そしてこのやり方は、欧米では一般的で、したがって、その会社の関連会社・子会社である在日の外資系企業が、ここ日本でも同様のビジネスを展開しています。

 

 サーベイに参加した企業は、自社での報酬実績と提供されたデータとを比較検討して、今後の報酬額の決定に際して役立てるわけですが、その結果、往々にして、次のようなセリフが人事担当者と社員との間で飛び交うことになります。

 

「あなたの報酬はマーケットと比較してフェアに決定されています」
「わが社では、他社と比較して十分に競争力のある(これを英語では「Market Competitiveness」〔市場競争力〕と呼びます)報酬を提供しています」

 

 もっとも、そのマーケット・データを人事担当者以外が実際に目にすることはおそらくありませんから、それが本当に「競争力があるものかどうか」は、ブラック・ボックスの中にあるわけです。

 

 とはいっても、実際に競争力のない報酬を支払っていては、よい人材は採用できませんし、何より競合他社へと転職されてしまいますから、その謳い文句には、おおむねウソはないと思われます。

 

 そうすると、さらなる疑問が生まれてきます。つまり、その会社ごとに異なる「競争力」の定義とは、いったい誰が、どう、いつ決定しているのだろうか、という疑問です。そしてそれこそが「給与格差」を生む元になるわけです。

 

 なんのことはない、「ジョブ型」でも、これまでの「日本型」がそうであったように、「業界水準を横目に見ながら決定されている」というのが実態です。

 

 じつはここで、さらなる疑問が生まれたかもしれません。つまり、「その水準が変わらないとしたら、自分の給料は(日本企業におけるベースアップのように)上がることはないのか?」という質問です。

 

 答えは、「ご安心ください、決してそんなことはありませんよ」となります。それは “メリット・インクリーズ(成績評価に基づく昇給)”、ならびに “インフレーション(物価上昇分)” を考慮するからです。

 

 ついでにいうと「それではデフレの時代はどうだったのか?」と思われるでしょうが、日本のデフレ時においても、外資系企業では「定期昇給」はありました。

 

 いうまでもなく「外資型」の基本とは、「やったら(業績を上げたら)その分キチンと支払う」ですから、もしもそれが機能していない会社に勤めていたとしたら、その時は「辞め時と考える」、それが基本姿勢なのです。

 

「それなら『外資型』になっても、それほど自分の給料の心配はしなくてよさそうですね」と聞かれたら、私なら「そう、あまり心配しなくて大丈夫ですよ」と言います。

 

 それは、「あなた」が業績を上げ続けている限り、そして会社も利益を上げている限り、さらに(次の点が最も大事なのですが)自分のジョブ・グレードでのレンジの上限に達するまでは、「給料は上がる」というのが「外資型」における基本です。

 

 言い換えれば、もし「上限に達してしまったら」、その場合はいくつかの例外はあるにせよ、「次のグレードに上がるまで」、もしくは「サーベイの結果で、サラリー・レンジの更新が行なわれない限り」、基本的には給料が上がることはありません。これが「ジョブ型」の基本の姿なのです。

 

 つまり、「そろそろ昇格させるか。十分に経験も積んできているし……」といった、「日本型」でよく耳にする「昇進」「昇給」、そして「昇格」はありません。これが「外資型」における他社と自社との、さらには自社内における他者との「給与格差」の実際なのです。

 

 

 以上、梅森浩一氏の新刊『定年いたしません!』(光文社新書)をもとに再構成しました。ベストセラー『「クビ!」論。』の著者が、「終身雇用」崩壊の時代に知っておくべきことを明かします。

 

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