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ドラマ『99.9』で話題「刑事専門弁護士」はぜんぜん儲からない
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.02.25 11:00 最終更新日:2018.02.25 11:34
「前シーズンから、弁護士のあいだで、法廷でのやり取りがリアルに描かれていると評判になっていました」
刑事事件の弁護を得意とする山田法律事務所・山田雄太弁護士が語った。
日曜劇場『99.9』(TBS系)が好調だ。松本潤、香川照之、木村文乃ら旬のキャストで、有罪率が100%近い刑事裁判の現状を描き、1月スタートの民放連ドラのなかで視聴率トップに。弁護士のあいだでも評判になっているのだ。
元検察官で若狭・高橋法律事務所の若狭勝弁護士も絶賛する。
「しつこいほどの証拠調べ、被告との接見などで真相を明らかにしていくところに、醍醐味を感じている。本当のところ、自分も主役の深山弁護士のような仕事をしてみたいんですよ」
では、ドラマで描かれる「刑事専門弁護士」とはどのような存在なのか。弁護士の大半は、離婚訴訟など民事が中心で、ローテーションで国選弁護人や当番弁護士を請け負う程度。
刑事事件に強いヤメ検などの需要はあるが、各弁護士に聞いても「“刑事専門”を名乗るのは極めて少ない」と口を揃える。以下、刑事弁護の実態に迫ってみたい。
「被疑者の方の人生を背負うことになりますから、刑事事件はやり甲斐がある仕事です。被疑者の方を最後まで守れるのは、弁護士だけなんです」
前出の山田弁護士はそう話す。
裁判所ウェブサイト「司法統計」よると、2011年以降の地方裁判所の有罪率は98%で推移し、実際は “99.9%” とはいかないが、それに近い数字だ。
ちなみに高裁、最高裁を含めれば有罪率はさらに上がり、最高裁判所司法統計上では、99.79%にもなる。
「検察官は、証拠を固めて、立証できると考えたものを起訴してきます(起訴率は約27%。2015年度)。起訴されると、裁判で覆すのは相当難しい。
逮捕されてしまったら、すぐに弁護士に相談したほうがいいでしょう。取り調べへの対応のしかたなど、いろいろなアドバイスができます」(同前)
■ドラマ内の松潤さながらの弁護士も存在
実際に、松本演じる深山大翔のように、次々と無罪判決を勝ち取る弁護士がいる。アトム市川船橋法律事務所の高橋裕樹弁護士だ。
殺人事件、覚せい剤取締法違反事件など、2016〜2017年にかけて4件連続で無罪判決を勝ち取った高橋弁護士も、ドラマのファンだという。
「さすがに弁護士が捜査までおこなうことはありませんが(笑)、何度も現場に足を運び、検証しています。もちろん、資料は徹底的に読み込み、被疑者の気持ちに寄り添うようにしています。深山弁護士と近いところはあるかもしれませんね」
4件のうちの1件は、対向車線から右折してきた原付に衝突し、運転手を死なせてしまったという事件だ。
高橋弁護士は、検察庁OBに事故時の走行スピードの鑑定を依頼。「時速150キロで走行し、制御困難だった」との起訴内容が、実際は「時速100キロだった」と裁判所に認められ、危険運転致死を一部無罪判決へと覆した。
ほかに、傷害致死の共犯容疑で懲役12年を求刑された裁判、外国人の覚せい剤取締法違反容疑の裁判では、ともに完全無罪判決を獲得。0.1%の無罪を4件連続で達成したと単純に考えれば、「1兆分の1」という快挙になる。
「すべて国選弁護なので、金銭的には割に合いません。勝訴すると100万円くらいになることもありますが、逮捕から判決までは1年以上に及ぶこともありますし、審理期間は完全にかかりきりになりますから。
さまざまな準備も必要で、はっきり言って、大赤字になってしまう。ただ、弁護士として、0.1%となる無罪の方々を救いたいだけなんです」
(週刊FLASH 2018年2月13日号)