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【ビジネス7シーンを図解で解説】サボリーマン、生成AIに仕事を “丸投げ” したら会社人生が楽ちんに!出勤から会議までどう使えばいいの?

満員電車に揺られてやっと会社に着いたかと思えば、午前からさまざまな相手にメールを送ったり、議事録を作ったり……。面倒くさい業務が山積みだ。誰かに “丸投げ” したくなってくる今日このごろ――。
「今、おじさんサラリーマンを取り巻く環境は、厳しくなっていますよね。若手に『明日までに議案を50個出せ』なんて言えませんし、ダメ出しするとハラスメントになりかねません。しかし生成AI(以下、AI)なら、いくら “酷使” しても大丈夫です」
企業業務ITコンサルタント・浅見純一郎氏がそう語る。自身のnoteで、現在193回まで連載している「忙しいサラリーマンのためのAI活用実践ガイド」が好評だ。
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「オープンAIの『ChatGPT』、グーグルの『Gemini』が、AIの代表選手。ChatGPTは議事録の要約や、メールの下書きをするのが得意。一方のGeminiは、Googleの持つ膨大なデータを下支えに、長文の校正や最新情報の収集、Gメールなど同社のサービスと連携できる点に強みがあります」(浅見氏)
使い方は簡単。インターネットで「ChatGPT」や「Gemini」と検索すれば、すぐにそれらのサイトがヒットする。トップページの検索枠に、AIにやってほしいことを打ち込むだけだ。
「まず、面倒くさいルーティンワークをまかせてみましょう。成果を実感できれば、AIを使うモチベーションが高まるはずです。ただし、指示(プロンプト)の仕方にはコツがあります。
たとえば『来週水曜日の会議でコスト削減の提案をしたいので、300文字ほどのメールで、几帳面な性格の上司に事前に伝えたい』と、できるだけ細かく、具体的に書けば書くほど、精度は上がります」(浅見氏)
両AIとも、見積書や契約書でも瞬時に書き上げてくれるが、自信満々に間違えることも多い。 “うさん臭さ” を感じるかもしれないが、あくまで「下書き」と考えよう。社外秘の情報を上げるのも避けたほうがいい。
「まずはメール・会議録・資料骨子の作成という3領域から始めるのが安全で、効果的だと思います」(浅見氏)
それぞれ、より高性能な有料版もあるが、今回は基本的に無償版でできることを紹介する。指示や質問に対する回答は毎回異なること、無償でできる内容が変わる可能性があることに注意が必要だ。
■AI先進企業・U-NEXTグループは業務 “超” 削減中!
飲食店で見ることが増えてきた、AI搭載の配膳ロボがコーヒーを運んできた。このロボを展開するUSEN&U-NEXT GROUPは、日本のAIの先駆的企業だ。
「AIがビジネスにもたらすのは、『新たなる時間』です」
同グループで、生成AIやオフィスソリューション事業を牽引する住谷猛氏が語る。
「今まで一日8時間、月に150時間仕事をしてきたとして、AIによって20%業務効率が上がれば、30時間の新しい時間が生まれます」(住谷氏)
同グループでは、2023年に独自の生成AI「Buddy」を開発。グループ約5000人のうち、20代前半の利用率がもっとも高く、約29%の社員が利用しているという。
「文章校正やコード生成で、Buddyが利用されているケースが多く、それぞれ一作業あたり約120分の業務削減につながっていると考えています。社内のBuddyの利用率は、基本的に若い世代ほど高く、現状では50代は約9.5%。よりAIを活用できる環境を整えていきたいと思っています」
と、社員1名につき業務時間を合計で年間100時間削減することを見込む。だが、ITリテラシーの高い同グループでも、50代でAIを活用しているのはまだ少数派のよう。住谷氏はこう旗を振る。
「AIは、“優秀な部下” だと思えばいいと思っています。まだ『AIは信用できない』という声はあるようですが、部下が作った資料をチェックせずに通してしまう上司はいませんよね。それと同じで、頼りっきりにせず、『これ、合っているかな?』と、問い直せばいいのです。それだけでも、効率や生産性は大幅に上がると思います」
長く人事畑を歩んできた住谷氏は、AIの登場で「出世」にも影響が出てきたと話す。
「日本企業は、『彼はコツコツと努力をしている』とか、プロセスを評価する部分があったと思います。しかし、AIの登場で、そこがブラックボックスになります。上司からすれば、短時間で成果を出す社員が現われるようになって、人事評価が難しくなりますよね。ある意味、正しいことだと思っていますが」(住谷氏)
AIによって生まれた「新たなる時間」は、どう使う?
「働く人が自由に使える時間です。給料を上げるためにより生産性の高い仕事をしてもいいし、副業で新たなビジネスを始めてもいい。家族と過ごす時間を増やしたり、趣味やボランティアに使ったりしてもいいと思います」(住谷氏)
と、 “意識の高い” 回答。だが住谷氏は、ニッコリ笑ってこう続けた。
「もちろん、AIを使ってサボったっていいと思いますよ。心と体を休めたり、自分の将来のキャリアを考えたりする時間は大切だと思いますし。僕も最初に入った証券会社では、ノルマを達成したらサウナでサボっていましたから(笑)」
AIは、サボリーマンの味方なのだ!
監修・浅見純一郎氏(企業業務ITコンサルタント)
イノベーティブ・ジャパン代表取締役。デロイトトーマツコンサルティング、KPMGコンサルティングを経て独立。江東区観光協会理事を務めるなど、東京・豊洲を中心とした地域コミュニティに関する取り組みもおこなう
イラスト・まるはま 取材/文・鈴木隆祐