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北極に15回行った男が南極へ「南極と北極はこう違う」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.03.23 11:00 最終更新日:2018.03.23 11:00
「僕は、北極には15回行ったことがあるのですが、南は高知県までしか行ったことがなかった(笑)。もうひとつの極地・南極で、初めて北極に行ったときのようなワクワク感を味わってみたかったんです」
2018年1月6日(日本時間)、日本人初の「南極点無補給単独徒歩到達」に成功した冒険家・荻田泰永(40)。1月16日に帰国し、支援者への挨拶回りやメディアへの対応に追われるなか、このように語ってくれた。
荻田は大学を3年生で中退。目標を見失うなか、偶然テレビで見た冒険家・大場満郎氏が企画した北極700キロの旅に参加した。その時点ではアウトドア経験もなく、北極が初めての海外旅行。
その後、冒険に目覚めた荻田は、アルバイトをしては北極に行くというフリーター生活を何年もつづけた。
「2012年に北極点無補給単独徒歩到達に挑戦したころから(17日目で断念)、やっとバイトをせずに生活できています」
■ひたすら続く白い景色…北極とは違う困難がある
今回の冒険は総行程1126キロ。南極点の標高は2800メートルある。荻田はテント、食糧など100キロの荷物を積んだソリをひき、スキーを履いて進んだ。
「北極は海に浮かぶ氷の上、南極は巨大な大陸ですから、ぜんぜん違いました。北極のように乱氷帯(氷がぶつかってできた山)はないし、氷ごと流されたりしない。クマなど危険な生物もいません。
でも、それとは違う困難があります。南極点までは常に上り坂で、向かい風が吹き下ろしてくる。自分以外の生命はいない真っ白な景色の中を、歩きつづけなければならないのです」
出発から50日後、荻田は南極点に辿り着いた。
「もちろん簡単ではありませんでしたが、北極がマイク・タイソンとすれば、南極は日本ランカー。素人が行けば5秒でやられますが、僕は北極での経験がありますから(笑)」
南極点を制覇した男は、すでに次の目標をじっと見据えている。
「もう40なので、自分が大場さんに経験させてもらったような、若い人を連れて北極を歩く活動をしたいですね。今のような、ガリガリとした挑戦は10年後、20年後にはできないし、やりたくないので(笑)」
おぎたやすなが
1977年生まれ 神奈川県出身 2000年より15回の北極行きを経験。著書に『北極男』(講談社)。現在は北海道鷹栖町に妻子と暮らす
(週刊FLASH 2018年2月13日号)