ライフ・マネーライフ・マネー

「まぶしいっ!」で気づく目の病気…人気眼科医が指南する「快眼生活」の基本ルール

ライフ・マネー
記事投稿日:2025.09.28 06:00 最終更新日:2025.09.28 10:24
出典元: 週刊FLASH 2025年10月7日号
著者: 『FLASH』編集部
「まぶしいっ!」で気づく目の病気…人気眼科医が指南する「快眼生活」の基本ルール

「眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック」の梶原一人院長(写真・木村哲夫)

 

 猛暑だった今夏の日本列島。照りつける太陽を見上げれば、目がくらむこともあるだろう。

 

「直射日光をまぶしく感じるのは自然な反応ですが、普通に生活しているのに光がやけに強く感じられる場合は、目の病気可能性があります」

 

 こう話すのは、『ハーバード×スタンフォードの眼科医が教える 放っておくと怖い目の症状25』(ダイヤモンド社)の著者で、「眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック」の梶原一人院長だ。光に過敏になる原因は、ドライアイや白内障、角膜炎など、さまざま。以下、それぞれの特徴を見ていこう。

 

 

■ドライアイは、初めしょぼしょぼ、悪化でゴロゴロ

 

「まぶしさを感じるもっとも多いケースが『ドライアイ』です。症状が軽いうちは目がしょぼしょぼし、進行するとゴロゴロする感じになります。涙が少なかったり質が悪かったりすると、角膜の表面が荒れて光がまぶしく感じられるのです。

 

 まばたきで潤すことで表面のザラつきは改善します。角膜、虹彩、水晶体、網膜それぞれで、病気になるとまぶしさが出る可能性があります」

 

■白内障は、汚れた窓ガラス越しに見る感じ

 

 次に多いのが「白内障」で、多くは加齢によるもの。細菌感染や、ヘルペスウイルスが原因となる「角膜炎」も似た症状を引き起こす。いずれも光の通り道が濁り、汚れた窓ガラス越しに見るような状態になる。

 

「白内障や角膜炎では、この『濁り』が問題になります。夜道で対向車のヘッドライトをまぶしく感じることは正常な反応ですが、角膜や水晶体が濁っていると、その光が乱反射してしまう。結果、ヘッドライトの光がにじんで広がって見えるのが特徴です」

 

 この2つの疾患の共通点が「濁り」なら、違いは痛み。角膜炎は細菌感染による炎症で、目を開けていられないほどの激しい痛みを感じる。

 

「角膜炎は治療で炎症がおさまっても、濁りが残ると視力低下や強いまぶしさが続くことがあります。その場合は、健康なドナーから提供された透明な角膜と入れ替える移植手術が必要になるケースもあります」

 

 白内障は中高年の病気と思われがちだが、若くして発症することもある。

 

「アトピー性皮膚炎の人は、40代ぐらいで発症することが多いんです。かゆみのせいでアレルギー性結膜炎がひどくなったり、網膜剥離になりやすかったりもしますので、皮膚科だけでなく、眼科での受診も頭の片隅に入れておいてほしいと思います。

 

 糖尿病の人も40代で発症することがあります。さらに、先天性のケースもあり、まれに『まぶしい』ではなく暗く見えるタイプもあります。いったん白く濁った水晶体は、手術で人工レンズに入れ替えない限り、まぶしさが変わることはありません」

 

■充血があるなら虹彩炎の可能性

 

 梶原院長は、前記とは異なる仕組みで起こる “まぶしさ” として、「虹彩炎」を挙げる。3番めに多いケースで、もっとも注意が必要なのだという。

 

「虹彩は瞳の茶色い部分で、中央の瞳孔の大きさを変えて光を調整する “カメラの絞り” のような役割を担っています。ここに炎症が起こると、強い光で瞳孔が縮んだとき、しみたり、痛みを感じたりします。

 

 放っておくと、虹彩と水晶体が癒着し、瞳が変形したり、動かなくなってしまったりする可能性があります。虹彩炎や角膜炎は、炎症で白目が赤く充血するのが特徴です。まぶしさを感じて充血や痛みがある場合は、病気の可能性が高いと考えて受診すべきです」

 

■失明寸前まで、大半が緑内障を自覚できない

 

 日本人の約500万人、20人に1人が罹患しているという「緑内障」の恐ろしい点のひとつが、末期に「強いまぶしさ」を訴える人がいることだ。

 

「視野がほとんど失われているのに、『まぶしい』と繰り返されるんです。デジカメにたとえると、画素数が極端に少ない状態で暗い場面を撮ろうとすると、ISO感度を上げて画像が粗くなりますよね。同じように目も感度を上げようとし、光が強調されてまぶしく感じるのでしょう」

 

 しかし、緑内障は “加齢で発症する、眼圧が上がって視野が欠けてくる病気” だと思われがちだ。「けっしてそうではないからこそ、定期検診が欠かせない」と梶原院長は強調する。

 

「たとえば、私のクリニックでは緑内障患者の97%が正常眼圧なんです。初期症状がほとんどなく、進行しても “スマホの文字が見づらい” などと老眼と勘違いされ、失明寸前の末期になるまで、視野が欠けていることを自覚できる人はほとんどいません。

 

 これまで、私のクリニックで緑内障と診断した数千人のなかで、眼圧が高い人はわずか3%。自覚症状のある人も、5%ほどです。だから私は、あえて『緑内障は “視野が欠けない病気” だと思ってください』と伝えています。検査をしないと見つからない病気だと認識してほしいからです」

 

 気づけば末期になってしまうケースが後を絶たない “沈黙の病” なのだ。

 

「正常眼圧の患者さんが多いとはいえ、その方たちも眼圧を下げれば進行を遅らせることができることはわかっています。まずは点眼薬、それでも不十分ならレーザー治療、さらに進行していれば手術も選択肢になります。

 

 最近は負担が少なく、短時間ですむ低侵襲手術も増えていますが、あくまで進行を遅らせるのが目的で、失った視野を取り戻すことはできません。

 

 だからこそ早期発見が重要です。40歳を過ぎたら検診を受けてください。遺伝する人も多いため、親が緑内障の方は30代からの検査をおすすめします」

 

 病気のサインとなる “まぶしさ” を遠ざけ、目の健康を保つにはどうすればいいのか。答えは日々の “基本ルール” にある。

「パソコンやスマホで感じる目の疲れや日常の不快感も、工夫次第で予防・改善できます。30分に1回、10秒ほどかけてゆっくり首を回すだけでも、肩や首の筋緊張がほぐれて楽になります。

 

 また、私は一日の終わりにレンジで1分温めた濡れタオルをまぶたに載せ、リラックスするようにしています。3分ほどすると血流が促され、疲れた目のまわりの筋肉がほぐれるのを実感できますし、目のまわりの『眼輪筋』の血流改善が期待できます。ドライアイの改善にも役立ちますよ」

 

 また、目の健康を守るには、五大栄養素(タンパク質、炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラル)が欠かせない。

 

「このうちタンパク質は、水晶体や角膜の材料になります。ビタミンCやビタミンEといった抗酸化ビタミンには目を守る働きがあり、ブルーベリーに豊富なポリフェノールも抗酸化作用が強く、老化を遅らせる効果が期待できます」

 

 さらにDHAやEPAなどのオメガ3系不飽和脂肪酸も、目の健康に効果的だ。

 

「オメガ3系不飽和脂肪酸はサバ、イワシ、サンマなど青魚に多く含まれ、血流をよくしてくれます。目の健康には、動脈硬化や糖尿病を防ぐための『血管の健康』、中性脂肪やコレステロール、血糖値を調える『血液の健康』、そして酸素や栄養をきちんと届ける『血流の健康』が大切です。

 

 空腹時に加糖飲料を飲むと、これらの『3つの健康』を損なう大きな要因になります。食物繊維をあわせて摂り、血糖値の上昇をゆるやかにしましょう」

 

 人生100年時代。快眼生活を “まぶしさ” に邪魔されず楽しむためにも、基本ルールを守り、異常があれば早めに受診することが必要だ。

 

梶原一人院長
慶應義塾大学医学部卒業後、眼科医に。ハーバード大学研究員、スタンフォード大学リサーチ・アソシエートなどを経て、2006年に東京・錦糸町に「眼科 かじわら アイ・ケア・クリニック」を開院。口コミで評判が広がり、現在は整理券を配布しても行列ができるほどの人気医院に

続きを見る
12

今、あなたにおすすめの記事

ライフ・マネー一覧をもっと見る