
デバイスの使い方を実演する明治大学の宮下芳明教授
ユニークな研究に贈られる世界的な賞なのに、イロモノ扱いされがちなイグ・ノーベル賞。じつは、日本は2007年から連続で受賞者を輩出する「常連国」だ。その後、彼らにはどんな恩恵がもたらされたのか? 笑いの裏にある思い、そして人生の転機を聞いた!
2023年にイグ・ノーベル賞栄養学賞を受賞したのは、明治大学の宮下芳明教授(49)。通電させた箸やストローが、味覚を変化させることを実験した。
キリンホールディングスと共同で減塩食品を約1.5倍にしょっぱく感じられる電流波形を開発、スプーンやカップ型のデバイス「エレキソルト」に搭載された。塩分を減らしても、口内では通常の食事と同じ塩味やうま味を感じられ、減塩サポートの強い味方に。2025年11月からは、家電量販店でも販売展開される予定だ。
「2023年に賞をいただきましたが、その1年前にデバイスや商品名を発表しています。2019年からずっと企業と共同開発していたので、受賞がきっかけで商品化されたわけではないんですよ」
もともとは、宮下教授のゼミの学生だった中村裕美さん(イグ・ノーベル賞共同受賞者)との研究がきっかけだ。
「学生の興味に合わせてさまざまなテーマを探すなかで、食に関心を持つ学生がいたからこそ “電気で味を変える” 研究を始められました」
そんな研究が、今も学生たちに引き継がれている取り組みになった。
「将来は、誰が発明したかわからないけど、どこの家にでもある家電にすることが目標です。検索したら僕の名前やイグ・ノーベル賞が出てくる状況は、まだ道半ばですね」
イグ・ノーベル賞を受賞した役得は、ほかにもある。
「ニュートリノ物理学の梶田隆章先生とは、日本科学未来館のイベントで2年連続ご一緒しています。本物のノーベル賞受賞者とざっくばらんにお話しできる機会は、イグ・ノーベル賞以前はなかったことです。『エレキソルト』も体験いただいていますよ」
写真・福田ヨシツグ
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