
米ハーバード大学での授賞式でスピーチする立命館大学の東山篤規教授(本人提供)
ユニークな研究に贈られる世界的な賞なのに、イロモノ扱いされがちなイグ・ノーベル賞。じつは、日本は2007年から連続で受賞者を輩出する「常連国」だ。その後、彼らにはどんな恩恵がもたらされたのか? 笑いの裏にある思い、そして人生の転機を聞いた!
「最初は冗談かと思って、メールを2回ほどゴミ箱に入れましたよ」
立命館大学の東山篤規教授(74)は、2016年にイグ・ノーベル賞知覚賞の受賞を知らされたときのことを、こう振り返って笑う。
東山教授の研究は、かがんで足の間から物を見ると、見え方がどう変わるか。対象を普通に見たとき、股のぞきをして見たとき、天地が逆転して見えるメガネをかけて普通に見たとき、かけたまま股のぞきで見たときの4パターンの見え方を実験。網膜像の変化ではなく、体の姿勢の変化が原因で視界の変化を引き起こすことを明らかにした。
「授賞式が開催されるボストンに行ったことがなかったから、ええ機会やくらいの気持ちでした」
ところが、受賞を口外しないようにというルールを守り、ギリギリで出張申請したら……。
「『授賞式に参加』と申請書に書いたら、事務長が『誰の受賞を見に行きはるんですか?』と言うので『私がもらいに行くんよ』と言ったら『ええー! それは大変なことですわ』と、大騒ぎになりました(笑)」
授賞式ではハーバード大学のサンダースシアターで1分、翌日、マサチューセッツ工科大学の教室で10分、計2回のスピーチを英語でおこなった。
「会場では股のぞきをしている人もおったし、翌日のスピーチ後には質疑応答があって、『色も変わるんですか?』と的確な質問を受けたことを覚えています。誰も見向きもしなかった研究を、受賞で多くの人に知ってもらえる場を与えていただきましたね」
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