
慶應義塾大学の渡辺茂名誉教授
ユニークな研究に贈られる世界的な賞なのに、イロモノ扱いされがちなイグ・ノーベル賞。じつは、日本は2007年から連続で受賞者を輩出する「常連国」だ。その後、彼らにはどんな恩恵がもたらされたのか? 笑いの裏にある思い、そして人生の転機を聞いた!
慶應義塾大学の渡辺茂名誉教授(77)は、ハトを2つのチームに分けてピカソとモネの絵画を見せ、区別させることに成功。イグ・ノーベル賞心理学賞を受賞した。一方はピカソの絵が見えたときにつつくとエサがもらえ、モネの絵ではエサがもらえない、もう一方は逆のパターンでの訓練をおこなった。20日ほど続けると、いずれのチームも見分けられるようになったという。
「僕が1995年に受賞したころは、ぜんぜん知られていない賞でしたね。日本の新聞も報道しなかったと思います。受賞を知ったときのことも、よく覚えていません(笑)」
渡辺名誉教授いわく、イグ・ノーベル賞が日本で有名になったのは、2002年受賞の犬語翻訳機「バウリンガル」のあと。
「それから『渡辺というのが受賞してるぞ』となって、取材を受けるようになりました」
ハトにピカソとモネの絵画を見分けさせる研究で受賞しただけあり、子供のころは画家志望だった。
「中学で挫折して、だから研究者はセカンドチョイスなんです(笑)。音楽は苦手でしたが、文鳥がバッハとシェーンベルクの音楽を聴き分ける実験で、論文も書きました」
最近は自宅の裏に完成したラボで実験をおこなっている。
「ウナギが『自分が休める場所を覚える』ことを実験しました。ちゃんと学習しますよ。アナゴは実験中ですが、ちょっと難しいようですね」
テーマは尽きない。
「研究は、役に立つことだけが価値ではないと思うんです」
探究自体が楽しくて仕方がないようだ。
写真・佐々木恵子
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