
佐藤誠志さんがヘッドカメラで撮影していた、子連れ母グマとの格闘の様子(佐藤さん撮影)
連日報じられている“クマ被害”。4月から11月12日まで、13件の死亡事例が発生しており、史上最悪ともいわれる。全国の出没件数は上半期だけで2万件以上で、すでに昨年度の1年分のデータを上回る過去最多の数値だ。
一方、クマを相手に“勝利”を収めた人たちもいる。襲われながらも反撃し、見事“生還”した男たちの攻防とは――。
山菜採りを生業とし、山歩き動画をYouTubeにアップしてきた佐藤誠志さん。2023年9月、マイタケ採りの最中に山中でクマと遭遇した。
「連れていた犬が戻ってきたかと思うと、子グマがパーッと木に登る姿が見えたんです」
そばには母グマもいた。2頭を見て、「これはやられる」と覚悟した瞬間、母グマは目にも止まらぬ速さで襲いかかってきた。
日ごろからクマとの遭遇は覚悟していたので、緊急時のシミュレーションはおこなっていた。しかし、現実は予想以上に展開が早かった。佐藤さんは杖代わりに持ってきていた棒切れを咄嗟に拾い上げ、「ホアーッ!ホアーッ!」と大声で叫びながら、その棒を振りまわして闘った。
鋭い爪で襲いかかってくるクマに対して、佐藤さんは近くのミズナラの木を盾にして身を守ろうとするが、クマも回り込んでくる。スピードが速く、なにしろパワーが桁違いだった。
「『自分にできることは、アドレナリンを全開にし、ハッタリで勝つことしかない!』と覚悟を決めました」
棒切れで攻撃をし続けると、1回はクマの弱点といわれる鼻先に当たることは当たった。だが、それでもクマの攻撃は続いた。「しつこい!」と思いながら腕を振り上げたとき、左腕を噛まれた。あまり痛みを感じることはなかったが、クマは噛みついたと思ったら、なぜかそのまま去って行った。間一髪で命拾いをしたのだ。それでも複数カ所を噛まれ、引っかき傷も多数負っていた。
動画撮影用に装着していたヘッドカメラに攻防の一部始終が残されていた。実際には10~20秒の出来事だったが、この様子はインターネット上で拡散され、佐藤さんは「クマとリアルに闘った人」として知られるようになる。
取材・文 風来堂(兼子梨花/今田壮)
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