
元妻から説得されオープンマリッジを実践した立花岳志氏
人気YouTuberのヒカルが9月14日に公開した動画で、「僕たちはオープンマリッジで生きていきます。簡単に言うと、浮気OKになりました」と宣言し、大きな注目を浴びた。同時に批判も呼び、ヒカルのYouTubeチャンネル登録者は、数万~十数万人がいっせいに離脱したとみられる。
ただ、この動画や関連報道に接し、初めて「オープンマリッジ」という言葉を知り、あるいは意識した人も多い。実質的なオープンマリッジ実践者だった元人気ブロガー・立花岳志氏もそうだ。
立花氏は、2010年代、セミナーを運営する人気ブロガーだったが、鬱病を発症し、現在はリハビリ生活を送っている。その間に生活保護を受給し、自己破産の手続きも踏んだ。夫婦関係の破綻で、2人で取り組んでいた共同事業まで暗礁に乗り上げた。
「ヒカルの話は耳にした程度でした。私はポリアモリー(複数恋愛制)の実践者でしたが、“オープンマリッジ” という言葉はまったく知りませんでした」
こう語る立花氏だが、既婚者同士がポリアモリーを掲げれば、それはオープンマリッジと解釈できる。立花氏と元妻が夫婦でポリアモリー宣言をしたのは2017年の暮れ。このテーマで、フジテレビ系列の『ノンストップ!』の取材を受けた。
「自宅にカメラが入りましたよ。ただ、家にテレビを置いていないので、実は放送を見ていません(笑)。もっと反響があるかと思っていたら、懸念された批判コメントの類もいっさい来ず、ブログのアクセスも微妙に上がった程度でした」
なぜ主婦層の視聴者が圧倒的に多い朝のワイドショーでポリアモリーが取り上げられたかといえば、妻が「これからの男女のパートナーシップ」と主唱していたからだ。
立花氏は「元妻とはすでに別れて久しく、彼女も言い分を自身のサイトで表明しています。だから、この先はあくまで僕個人の見解と受け取ってください」としながら、ポリアモリーの歳月を振り返った。
「ポリアモリーは元妻から切り出され、むしろゴリ押しに近かった。確かに当時の僕は稼いでいたから、女性もたくさん寄ってきた。実際には、ほかの女性と食事に行っても、スレスレのラインで踏みとどまっていたんですが、彼女も薄々そのあたりは気づいていたようで、コソコソやられるよりはいいと思ったんでしょう。ブログでの公開も彼女の希望でした」
妻からポリアモリーの価値観を繰り返し説かれ、2017年7月、ついに2人で実践に移す。直後、立花氏には彼女ができた。ポリアモリー生活について初めて公にしたのは5カ月後の12月だった。公開とともにフジテレビから取材依頼が来たわけだ。
「元妻とは、結局、1年後の12月末に離婚しました。ポリアモリー状態にあった1年半の間に、相手は3人いました。不思議なことに、全員未婚で16歳下の32歳でした。みんな僕が既婚者でポリアモリー実践者と了解のうえで付き合ってくれました」
夫の相手がそろって32歳となると、妻は表面では冷静を装っても、嫉妬しないではいられなかったのではないか。
「でも、元妻はずっと家に引きこもっているんです。もともと出不精ですしね。それでは彼氏なんてできっこない(笑)」
夫にはほかにパートナーができても、妻にはできず、むしろ作ろうとさえしない。自虐志向にすら見えるが、モテる夫の火遊びを肯定することで自身のプライドを守ったのかもしれない。
結局、互いが別パートナーを持つことで、停滞していた結婚生活を打破しようとする2人の目論見は見事に崩れた。元妻が出した結論は「われわれが夫婦でいる限り、自分には恋人ができない」だった。
立花氏にできた3人の彼女のうち、1人とは関係が1年続いた。しかし、2018年7月にはそれも解消。その前月には元妻から別居を突きつけられた。
文字どおり、“二兎を追うものは一兎をも得ず” になってしまった立花氏。夫妻は正式に別れたが、2人はビジネス上のパートナーでもあったので、離婚後もしばらく共同経営を続けたが、間もなく破綻した。
2人の最大の収入源はセミナーと、そこを起点におこなう個人カウンセリングだった。しかし、破局を迎えたことで、元妻はセミナーの共同開催を拒み、立花氏は窮地に追い込まれた。
それまで最大で年収5500万円を稼ぎ、六本木や鎌倉など4拠点生活で家賃は毎月140万円に達していた。ところが、コラボ解消で収入は激減し、立花氏の意欲も大幅に減退。たちまち2000万円の借財を抱え、利息返済がやっとの暮らしに陥る。
言うなれば、前妻に押し切られた格好で踏み込んだポリアモリーによって生活バランスが著しく崩れ、立花氏はその泥沼からいまだに抜けきれずにいる。
「周りの親しい人からも、立花にはポリアモリーなんて無理だ、あり得ないと言われました。でも、僕はまったく後悔してません。あの時期の僕には必要だったと思うんです。
ポリアモリーという概念は、『複数の相手を対等に序列なく同レベルに愛し続けること』が前提なんですが、僕の中では常に序列があった。
そして、短期的にはポリアモリー的状況を楽しむことはできたし、やってみてよかったと思います。ただ、モノガミー(単婚制)が当たり前とされる現代日本社会で、中長期的にポリアモリーをバランスよく楽しみながら継続することは、現実的に難しいのではないかと感じています」
立花氏にとっては失敗に終わったが、夫婦のセックスレスの解決法としてオープンマリッジが試みられることは多い。仮に夫婦のどちらか一方がアセクシュアル(他者に性的欲求を抱かないセクシュアリティ)傾向にあったとしても、他方が家庭外での性交渉を認め、うまく行っている例も見受けられるからだ。
取材・文/鈴木隆祐
![Smart FLASH[光文社週刊誌]](https://smart-flash.jp/wp-content/themes/original/img/common/logo.png)







