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上野動物園には連日の大行列…パンダだけじゃない!日本で「もう観られなくなる」人気動物10

ライフ・マネー 記事投稿日:2025.12.28 06:00 最終更新日:2025.12.28 06:00

上野動物園には連日の大行列…パンダだけじゃない!日本で「もう観られなくなる」人気動物10

ジャイアントパンダ(上野動物園)

 

 東京・上野動物園で飼育されている2頭のジャイアントパンダ、シャオシャオとレイレイが、2026年1月下旬に中国に返還されることが決まった。1972年にランランとカンカンが寄贈されて以来、初めて国内からパンダがいなくなることになる。日本にはパンダ以外にも希少な人気動物が飼育されているが、そのなかには動物園で観られなくなる可能性が高い動物もいる。たとえばラッコ。国内で飼育されているのは、鳥羽水族館(三重県)のメス2頭のみとなっており、繁殖は望めない。シャチは、鴨川シーワールド(千葉県)など3カ所で6頭が飼育されているが、すべてメスで、やはり繁殖は不可能だ。

 

 複数の動物園で15頭飼育されているコビトカバは、血統的に近縁の個体が多く、繁殖のハードルが高い。同様の問題を抱えている動物は多い。

 

「テングザルは絶滅危惧種であり、ワシントン条約附属書I類として輸入の規制がかかっているため、海外から個体を輸入することが難しくなっています」(ズーラシア)

 

 このように、輸入規制などで動物を海外から受け入れることが難しくなっている。

 

「問題はワシントン条約だけではないのです」と話すのは、JAZA(日本動物園水族館協会)の生物多様性委員会委員長を務める上野動物園の堀秀正氏だ。

 

「ワシントン条約は商業取引を規制するものですが、その対象ではない絶滅危惧種もいます。野生動物の数が減少しており、動物が生息する国が捕獲や輸出を法律で禁止することも増えています。

 

 また日本では近年、感染症対策が非常に厳しくなっています。ヒトと共通の感染症を持つ動物は、原則的に輸入禁止。そうなると、哺乳類のほとんどが該当します」(同前)

 

 最近は、法律による壁が非常に高くなっているという。

 

「また、動物を輸入するためには、一定の要件を備えた施設で検疫をおこなう必要があります。その許可を得るための書類、ペーパーワークというのが大変なんです。つまり、金銭的なコストに加え、相当な労力が必要です」(同前)

 

 輸入ではなく、たとえば、ラッコは北海道周辺に生息している。それを捕まえて展示することは可能なのか?

 

「合法で可能です。ただ、それを世論が支持するかは別問題ですよね。このご時世、相当な批判を浴びる可能性が高いと思いますね」(同前)

 

 現状をふまえ、JAZAは複数の施設で、繁殖に共同で取り組んでいるという。動物園や水族館同士で、動物を貸し借りして繁殖を促すのだ。

 

「国内で繁殖させるといっても、膨大なコストがかかります。エサも飼育する場所も人手も確保しなくてはいけない。現状は厳しいです。

 

 ですから、多くの人に動物園、水族館に足を運んでいただき、経営を支えていただけるとありがたいですね。できれば、野生動物保護の募金にも協力してもらえると嬉しいです。動物園で観られる動物を確保するには、野生動物の保護は必然的にしなければいけないことですから」(同前)

 

 人気動物が「もう観られなくなる」という “危機” がすぐそこにあるのだ。

 

<ジャイアントパンダ(上野動物園)>

 

「世界三大珍獣」の一種で、日本ではアドベンチャーワールドや神戸市立王子動物園でも飼育されていたが、現在は上野のシャオシャオ(オス)とレイレイ(メス)の2頭。

 

<コビトカバ(上野動物園ほか)>

 

「世界三大珍獣」の一種。成獣でも体重は250kgほど。上野動物園では2025年3月に生まれたコブシ(オス)を含めた4頭を飼育。国内ではほかにも、東山動植物園、いしかわ動物園、神戸どうぶつ王国などを合わせ合計15頭が飼育されている

 

<クオッカ(埼玉県こども動物自然公園)>

 

小型カンガルー。顎の筋肉が発達し、口角が上がって笑顔に見えるため「世界一幸せな動物」とも。国内飼育は1カ所のみ。2020年にオーストラリアから来た4頭が順調に繁殖し、現在は11頭に

 

<テングザル(よこはま動物園ズーラシア)>

 

国内ではズーラシアの7頭のみ。日本を含め、世界でも5施設で計25頭しか飼育されていない(2025年10月時点)。高温多湿のボルネオ島に生息しており、温度管理やエサの確保などが飼育するうえで課題だという。鼻が大きいのは成獣のオスのみ

 

<タスマニアデビル(多摩動物公園)>

 

2024年にオーストラリアから来園。国内で見られるのはここの2頭のみ。「夜行性で開園時間中はあまり動かないのですが、ごく短時間ですが活動する様子が観られることも。タイミングよく観られた方はラッキーです」(多摩動物公園)

 

<ニシゴリラ(名古屋市東山動植物園ほか)>

 

国内では東山のほか、上野動物園、京都市動物園などで計19頭が飼育されている。ただ、血縁関係のない個体が少なくなっており、繁殖にも課題が多い

 

<コモドオオトカゲ(名古屋市東山動植物園)>

 

日本での飼育は名古屋市東山動植物園の1頭のみ。オスの14歳で名前はタロウ。「健康状態は良好。食欲旺盛です。野生と違い単調な環境のなかで、いかに運動させるか、レイアウトを時々変更するなど工夫しています」(飼育担当)

 

<オカピ(よこはま動物園ズーラシアほか)>

 

「世界三大珍獣」のキリン科の動物。日本ではズーラシアの4頭と金沢動物園(横浜)の1頭のみ。「国内での飼育データが少ないため、海外から情報収集をしながら、飼育管理方法を検討する点」(ズーラシア)が難しいという

 

■推定80歳超、もう立てないけれど……子・孫・ひ孫合計78頭、風太は “ゴッドファーザー” になっていた

 

 ジャイアントパンダは観られなくなるが、もう一種のパンダ、レッサーパンダは国内60以上の施設で計200頭以上が飼育されている。レッサーパンダといえば、2005年に一世を風靡した千葉市動物公園の「風太」だ。

 

 2025年7月に22歳になった風太。人間でいえば80歳超で、国内最高齢だという。「長寿の秘訣は、よく食べることと、好奇心旺盛なところじゃないですか」

 

 そう語るのは、千葉市動物公園飼育員の伊藤泰志さん。人間のような立ち姿で大ブームを巻き起こした風太。今は立ち上がることはないというが、人気は相変わらずだ。

 

「誕生日のイベントは、大勢の方に祝ってもらいました。暑さに弱い動物なので、夏場の体調管理には気を遣います」

 

 じつは “ゴッドファーザー” でもある風太。子、孫、ひ孫は合計78頭。そのなかには、遠くチリの動物園で飼育されている子孫もいるとか。

 

 レッサーパンダの飼育下での最高齢記録は24歳。記録更新を目指して頑張る風太だった。

 

写真・皆川拓哉、共同通信
写真提供・千葉市動物公園

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出典元: 週刊FLASH 2026年1月6日・13日合併号

著者: 『FLASH』編集部

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