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冷蔵庫の豚肉から札束が…「遺品整理人」の現場に密着!“親の隠し財産”を見逃さないための「今やっておくべきこと」

ライフ・マネー 記事投稿日:2026.02.01 06:00 最終更新日:2026.02.01 06:00

冷蔵庫の豚肉から札束が…「遺品整理人」の現場に密着!“親の隠し財産”を見逃さないための「今やっておくべきこと」

今回、遺品整理した戸建て。近隣にも空き家が多かった(写真・木村哲夫)

 

 関東近郊の最寄り駅から徒歩十数分。主を亡くした戸建て住宅の玄関を開けると、荷物がごちゃごちゃと置かれていた。それまでの生活の気配が、ありありと感じられる。

 

「これでも、こちらはきれいなほうですよ」と話すのは、生前整理・遺品整理サービスを提供するレガシーリンク代表の稲葉壮一朗氏だ。

 

 稲葉氏はかつて、古物の買取店で十数年働いていた。そこで扱ってきた品物のなかには、遺品整理や解体の現場から流れてきたとしか思えないものが多く見られた。「この状況を変えたい」。そんな思いから遺品整理業界に身を移し、同社を設立。現在は「相続を学ぶ遺品整理業者の会」を立ち上げ、相続や法律の知識を広めようとしている。

 

 昨年放送されたドラマ『終幕のロンド』(関西テレビ・フジテレビ系)では、草彅剛(51)が遺品整理人を演じた。

 

「高齢社会の進行もあり、遺品整理は身近な存在になりつつあります。弊社でも、ここ2年で受けた件数は、3〜4倍に増えています」(稲葉氏、以下同)

 

 故人の家を片づける業者は、残置物撤去業者と、遺品整理業者に分けられる。前者は家の中のものを「ゴミ」として扱うのに対し、後者は相続や思い出、資産価値に関わる可能性があることを前提に「遺品」として扱う立場を取る。

 

 だが、それらに明確な線引きはなく、いずれも免許や資格は不要だ。そのため業者数が急増している一方で、さまざまなトラブルも後を絶たない。正月の帰省で、高齢になった親の姿を目にした写写丸世代も多いはず。いざというときに慌てないために、何をしておけばいいのだろうか。

 

【事前準備編】豚肉の中に数百万円の札束……処分を防ぐためには!?

 

 毎年のように話題になるのが、ゴミ集積所や処分場などから高額の現金が見つかるというニュースだ。なぜ、そんなことが起きるのか。その背景について、稲葉氏は現場での驚きの体験を明かす。

 

「タンス預金、へそくりを子供に教えないまま、亡くなる親は少なくありません。弊社の現場で出てきた過去の最高額は、現金で1億円弱でした。押し入れに置かれたプラスチックの衣装ケースと、その奥の壁との隙間に、札束が積み重ねられていたんです」

 

 稲葉氏によれば、現金や貴重品などの “隠し財産” が意外な場所から見つかることは、珍しくないという。

 

「数百万円ぶんの札束が、ジップロックに入った状態で冷蔵庫内の豚肉にくるまれていたり、ページをくりぬかれた百科事典に埋め込まれていたりしたこともあります。また、ボストンバッグの底に金塊が数本隠され、その上に洋服がパンパンに詰め込まれていたケースもありました」

 

 推理小説顔負けの隠し方だが、気づかれなければ、ゴミとして処分されてしまう。

 

「現金や通帳、契約書の保管場所は、親が元気なうちに確認しておくようにしましょう。特に、土地の契約書や売買した領収書、境界確定図などの書類は重要です。それらの有無によって、売買したときの税金が数百万円単位で変わることがあります」

 

 だが、すでに親が認知症などになってしまい、保管場所がわからないケースもありうる。そんな際にヒントになるのが、さまざまな郵便物だ。

 

「銀行などの金融機関から届いたものはもちろん、捨ててしまいがちなダイレクトメールも、送り主とやり取りがあった証拠である可能性があります。たとえば古物商からのDMをきっかけに、親がその業者に高額な骨董品を預けていた――ということがわかったケースもあります」

 

 また、どんな遺品整理をしてもらいたいのか、親に確認しておくことも必要だ。

 

「日本では、 “魂が入る” とよくいいますよね。人形やぬいぐるみ、先祖のお位牌など、お焚き上げ供養してほしいものがあれば、あらかじめ聞いておくといいと思います。エンディングノートを書いておいてもらうのもおすすめです」

 

 希望を把握しておくことで、故人の遺志を実現でき、残された家族が処分の仕方に悩まずにすむのだ。

 

【死後対応編】業者が不法投棄したのに、客側が「撤去」を求められて――

 

 そして、訪れた親の死。故人の遺志をかなえるためにも、遺品整理業者の選び方は重要になる。実際、業者選びを誤ったことで、取り返しのつかない事態に発展するケースも少なくないという。

 

「相続手続きに詳しい業者であれば、片づけながら重要な書類を探していきますが、相続について知識が乏しい業者に当たると、処分されてしまうこともあります」

 

 さらに悪質な業者になると、現金や貴金属などを窃盗することもある。だが、稲葉氏は見落としがちな別の “落とし穴” もあると指摘する。

 

「『家から出てきたものの権利は手放す』という書類に捺印を迫る業者がいます。これに応じてしまうと、現金や貴重品が見つかっても、その権利は業者のものになってしまいます。必ず『現金や貴重品は返却する』という内容を契約書に入れてもらってください。また、安い料金で請け負っておきながら、作業が進むにつれて追加料金を加算し、結果的に高額請求する業者もいます。見積書や契約書に『追加請求はしません』という文言があるかを確認し、ない場合は入れてもらってください」

 

 料金の相場は、一般的に戸建ての場合で40万円〜。ただ、「家の広さや荷物の量、トラックを家の横につけられるかどうか、地域の処分場の受け入れ価格などで変わってくるため、一概には言えません」と稲葉氏は言う。だが、10万円以下などの低料金を謳う業者は、追加請求の有無を確かめるべきだろう。

 

 また、自治体の定める処分費用を浮かせるためか、違法行為に走る業者もいる。

 

「数年前、近県の不動産業者から弊社に、遺品整理の打診がありました。それ以前に依頼していた遺品整理業者が不法投棄をしており、その不動産業者の顧客のもとに『荷物を撤去しろ』という連絡が入ったそうなんです」

 

 家の中のものは個人情報だらけ。不法投棄された荷物の一部から、顧客の連絡先が判明したのだろうと稲葉氏。

 

「不法投棄をした業者はすでに連絡が取れず、顧客が支払った料金を、不動産業者が肩代わりする形になったそうです。遺品整理業者に支払ったのは60万円だったのに、最終的な撤去費用は800万円を超え、全額を支払ったと聞いています」

 

 有象無象が入り乱れるなかで、業者選びは非常に難しいと、稲葉氏も頭を抱える。

 

「貴重品の価値がわかること、お焚き上げをきちんとおこなうこと、相続の知識があること、法律を厳守すること。これらを満たす業者であれば、不法投棄の心配はないと考えられます。ただし、実績でしか判断できないのが現実なので、弁護士や司法書士などの専門家に、信頼できる業者を紹介してもらうよう依頼するのが無難だと思います」

 

【具体行動編】冷蔵庫を確認せず電気を解約すると……強烈な異臭が!

 

 では最後に、 “その日” が来る前に、今からできること・避けるべきことを聞いた。

 

「警備会社などが比較的安価に提供している『見守りサービス』を契約しておくのはおすすめです。異変があれば家族に連絡が入り、万が一の際の早期発見に繋がります。ペットを飼っている場合は、その命を守ることにもなります。発見が遅れると、状況によってはご遺体の腐敗が進み、特殊清掃が必要になることもありますから」

 

 そして、いよいよ遺品整理の当日。稲葉氏が「やっておいていただけると嬉しい」と明かしたのは、意外で些細なことだった。

 

「空き家になったからといっても、電気を解約する場合は、事前に必ず冷蔵庫の中身を確認していただきたいんです。生ものが残った状態で解約すると、腐っちゃって本当に強い異臭が出るんです(苦笑)」

 

 逆に、善意からやってしまいがちだが、避けてほしい行動もあるという。

 

「業者の負担を減らそうと、事前に遺品やゴミを袋などにまとめておいてくださる方がいます。ただ良心的な業者は、現場で貴重品や重要書類が紛れ込んでいないか、ひとつひとつ確認しながら作業を進めています。先ほどお話ししたように、一見してそれとわからないケースも多く、すべて袋から出して検分する必要があります。かえって作業時間がかかってしまうんです」

 

 こうした根気のいる作業が続くため、たとえば冒頭の戸建て住宅では、すべての遺品を整理し終えるまでに3日間を要した。室内がすべて空っぽになった後、稲葉氏は欠かさず雑巾がけをするという。

 

「ご依頼主にも『お時間が許せばご一緒に』と、お声がけをします。この作業に参加された方は皆さん、育った家や親に対して『ありがとう』とおっしゃいます。涙を流す方もおられます」

 

 トラブルなく、残された家族として気持ちに整理をつけるために、今から準備しておこう。

 

写真・木村哲夫

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出典元: 週刊FLASH 2026年2月10日・17日合併号

著者: 『FLASH』編集部

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