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なぜ人は自分で「才能の開花」を抑えてしまうのか…世界を二つに分けてしまう「心のメカニズム」とは

ライフ・マネー 記事投稿日:2026.03.21 16:00 最終更新日:2026.03.21 16:00

なぜ人は自分で「才能の開花」を抑えてしまうのか…世界を二つに分けてしまう「心のメカニズム」とは

写真はAC

 

 田坂広志氏の新刊『才能を磨く 多重人格のマネジメント』より、人が自分で才能の開花を抑えてしまうメカニズムを紹介します。

 

 

田坂 言葉というものが無意識に「世界を二つに分けてしまう」ことの怖さです。哲学的に言えば、「世界を分節化してしまう」ことの怖さです。

 

─ 「分節化」ですか……。「世界を二つに分ける」ことの怖さですか……。

 

田坂 この説明では、分かりにくいですね。では、面白いエピソードで、分かりやすく説明しましょう。

 

 例えば、ある幼稚園で、園児の太郎君と花子ちゃんが、砂場で遊んでいたとします。

 

 そこに園長先生がやってきました。

 

 丁度そのとき、二人の遊びが終わり、太郎君は、遊びに使ったスコップを、使いっ放しにせず、元の箱に戻しに行きました。

 

 それを見て、園長先生が、大きな声で、太郎君を誉めてあげます。
「まあ、太郎君は、良い子ね!」

 

 その園長先生の声に、太郎君は、嬉しそうに振り返ります。

 

 その太郎君を見て、園長先生は、もう一度大きな声で、太郎君を誉めてあげます。
「まあ、太郎君は、本当に良い子ね!」

 

 すると、横にいた花子ちゃんが、不満そうに、園長先生に言います。
「先生、じゃあ、花子は、悪い子なの……?」

 

─ 思わず笑ってしまうエピソードですね……(笑)。

 

田坂 その通り、これはたしかに、思わず笑ってしまう可愛らしいエピソードです。

 

 しかし、実は、このエピソードは、見事に、「人間心理の機微」を象徴しています。
そして、「言葉」というものの怖さを、象徴的に教えています。

 

─ 「人間心理の機微」ですか……。

 

田坂 そうです。すなわち、この状況において、園長先生が、「太郎君は、良い子ね!」と言った瞬間に、この言葉が、世界を「良い子」と「悪い子」に分けてしまうのです。
 そして、その結果、「良い子」と言われた太郎は、嬉しく思うのですが、「良い子」と言われなかった花子は、必然的に、自分は「悪い子」と言われたと思い始めるのです。

 

─ たしかに、実社会でも、同じような心理が生まれるときはありますね……。

 

■世界を二つに分けてしまう「心の機微」

 

田坂 ええ、例えば、会社の企画会議などで、田中君と鈴木君が、それぞれ、あるテーマについての企画案を出してくる。二人の説明を聞き終わった後、企画課長が、田中君を誉めて励まそうと思い、他意もなく、こう言ったとします。「田中君の企画は、なかなかセンスの良い企画だな……」。しかし、この瞬間に、必ずと言ってよいほど、鈴木君の心の中に「じゃあ、僕の企画は、センスの悪い企画なのか……」という思いが生まれます。

 

─ そうですね。会社においては、そうした心理も、よく生まれますね(苦笑)。

 

田坂 このように、いま述べた二つのエピソードは、「言葉」と「心」の機微の怖さを教えているのです。

 

 すなわち、「言葉」というものが、しばしば、「世界を二つに分けてしまう」ことの怖さです。我々が無意識に使う「言葉」が、意図せずして、世界を「プラスの世界」と「マイナスの世界」の二つに分けてしまうのです。「真と偽」「善と悪」「美と醜」「好きと嫌い」「優秀と劣等」といった二つの世界です。そして、その二つの世界のうち、「マイナスの世界」が、我々の「心」を、無意識に支配してしまうことの怖さです。

 

─ たしかに、そう考えると、日常、何気なく使っている「言葉」が、我々の「心」に、思わぬ形で影響を与え、我々の「心」を支配してしまうのですね……。それは、怖いことですね……。

 

田坂 その通り、実は、とても怖いことなのですね。

 

 そして、さらに怖いことは、この「言葉」と「心」の間で起こる問題が、そのまま、「表層意識」と「深層意識」の間でも起こることなのです。

 

 すなわち、「表層意識」が「世界を二つに分けてしまう」ことの怖さと、その結果、「マイナスの世界」が「深層意識」を支配してしまうことの怖さです。


─ なるほど、何か分かるような気がしますが、もう少し分かりやすく説明して頂けますか?

 

■「誇り高き技術屋」の自己限定

 

田坂 では、分かりやすい例を述べましょう。

 

 例えば、大企業などで、しばしば使われる言葉に、「技術屋」「事務屋」という言葉があります。一般に、大学の工学部や理学部などを出て、「技術職」として入社した人間を「技術屋」、法学部や経済学部などを出て、「事務職」として入社した人間を「事務屋」と呼ぶ習慣があります。

 

 そのため、企業の会議などでは、しばしば、次のような言葉を耳にします。

 

「私は、技術屋ですから、この設計については、一言、申し上げますが……」
「私は、事務屋ですので、この契約については、意見を申し上げますが……」

 

 こうした言葉は、どちらも「技術屋」「事務屋」としての誇りや矜持を感じさせる好感の持てる発言ではあるのですが、いま述べた「表層意識」と「深層意識」の視点から見ると、怖い問題が生まれてくるのです。

 

 すなわち、「私は、技術屋ですから」という言葉は、「私は技術屋ですから、技術については、それなりの見識を持っています」という「肯定的な意味」を持った言葉なのですが、しかし、この「表層意識」が語った言葉の裏に、次の「深層意識」が生まれてくるのです。
「私は技術屋なので、契約などについては、よく分かりません……」

 

─ なるほど、表層意識が語る「肯定的な言葉」の裏に、深層意識の「否定的な言葉」が隠れているのですね……。

 

田坂 そうです。すなわち、我々が、表層意識で「ある能力を肯定する」瞬間に、深層意識では、「逆の能力を否定する」という心の動きが起こってしまうのです。

 

 例えば、「私は、数学は得意です」という言葉の奥に、「けれども、国語は不得意です」という思いが隠れていたり、「私は、営業に向いています」という言葉の奥に、「しかし、経理には向いていません」という思いが隠れていることが、しばしばあります。

 

 そして、これが、まさに「自己限定の深層意識」となって、我々の能力の発揮を妨げ、才能の開花を抑えてしまうのです。

 

 

 以上、田坂広志氏の新刊『才能を磨く 多重人格のマネジメント』 (光文社新書)を引用しました。なぜ、「隠れた人格」を育てると「隠れた才能」が現れるのか? 「多重人格のマネジメント」について考えます。

 

●『才能を磨く 多重人格のマネジメント』詳細はこちら

出典元: SmartFLASH

著者: 『FLASH』編集部

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