グローバル政策研究機構・黒田岳士代表理事(左)とウチカラクリニック・森勇磨医師
「日本では、年齢にかかわらずBMI25以上は適正体重を超えた“肥満”と定義されています。3月10日に私たちは、50歳以上に限っては『適正体重の上限を27へ引き上げるべきだ』とする提言を発表しました」
2024年に設立された「一般社団法人グローバル政策研究機構」の黒田岳士代表理事はそう語る。同機構は国が定める基準やガイドラインに対し、科学的根拠に基づいた提言をおこなうシンクタンク。黒田氏は、消費者庁の局長級ポストである次長を務めた元キャリア官僚だ。
「厚労省の調査では、20~60歳男性の3人に1人が、BMI25以上の“肥満”にあたります。私も、その基準値をはるかに超えちゃっています(笑)。しかし、私が無理をして基準値まで痩せようとすると、かえって健康への悪影響のほうが大きいのではないかと思います。国の数値の定め方は、肥満リスクが相対的に過大に理解されてしまう恐れがあると考えます」(黒田氏、以下同)
肥満の判断基準となるBMIは「体重(kg)」÷「身長(m)の2乗」で求められ、この上限が2ポイント引き上げられた場合、身長170cmでは、適正とされる体重の上限は約72kgから約78kgへと変わる計算になる。6kgの差は、けっして小さくない。では、なぜ今回の数値の引き上げ提言に至ったのか。
「カギとなるのは高齢者における『痩せ』のリスクで、過度な減量志向はかえって健康を損なうおそれがあります。こうした『痩せ』は総死亡率の上昇とも関連すると指摘されています。そのため、厚労省の『日本人の食事摂取基準』では、適正体重の下限値が50歳以上から少しずつ引き上げられ、65歳以上は18~49歳と比べて、3ポイント(身長170cmの場合、9kg近く)も大きい21.5なのです。上限値は25未満のままなので、適正体重の幅が大幅に狭まります」
痩せれば見た目は引き締まり、生活習慣病の予防にもつながる。しかし、いきすぎたダイエットが健康にいいはずはない。とりわけ、代謝が低下しやすい50代では、体重を落とすにも相応の負担がともなうのだ。
「シニア以上に対しては、肥満よりも痩せのリスクをメッセージとして強調すべきです」
■数値をとらえ直す動きは医療現場でも広がっている
医療の現場でも、実態に即して数値をとらえ直す動きがある。予防医学に力を入れる「ウチカラクリニック」(愛知県名古屋市)の森勇磨代表医師が語る。
「実際の診療ではBMIが30以上の場合は明らかに減量をすすめ、27〜28あたりから生活指導をおこなうケースが多いですね。たしかに、25を少し超えた程度であれば、死亡リスクが大きく上昇するわけではありません」
加齢の影響は、健康診断の数値にも表われてくる。
「加齢にともない、インスリン抵抗性といって血糖値を下げるホルモンが効きにくくなり、代謝そのものも低下していきます。代謝が落ちることでカロリー消費量が減り、結果として脂肪がつきやすくなります。いずれも、シンプルに言えば『加齢』が原因といえるでしょう」(同前)
だが、基準値オーバーの数値が出ても、すぐに青ざめることはない。BMIと同様に、より柔軟に数値を読み解いてもいいケースがあるのだ。
上は、50代の本誌記者の健康診断結果。森医師に健診結果を見てもらい、この年になると気になる検査項目を中心に解説してもらったものだ。
数値の意味を正しく読み取り、自分の体の状態と照らし合わせることが大切なのだ。
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