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佐藤天彦名人インタビュー「理想の女性はポンパドゥール夫人」
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.05.12 08:00 最終更新日:2018.05.12 08:31
「羽生さんは40代後半で、多くのタイトルを保持し、しっかり強さを保たれている。玄人目にも、恐ろしいことです(笑)。羽生さんは僕が子供のころから憧れていた人なので、名人戦を戦えること自体が幸せなことです」
第76期名人戦の開幕前にこう意気込むのは、佐藤天彦名人(30)。挑戦者は、2016年に名人位を奪った相手、羽生善治竜王(47)だ。
「名人になるまで、羽生さんとのタイトル戦はこちらが挑戦する側でしたが、今回は初めての防衛戦。ワクワクする気持ちは非常に大きいですね」
名人位は、将棋界の七大タイトルのなかでも最古で、“最高峰” 。慶長17年(1612年)に、将棋の家元として大橋宗桂が江戸幕府から俸禄を与えられたことを起源とする。1937年に、実力制名人戦が始まって81年、名人位に就いたのは、たった13人だ。
「名人になってみて、周りからの見られ方や期待が特別なものだなと思いました。もちろん、『名人はこうあってほしい』というファンの期待に応える気持ちはあります。
ですが、将棋だけではなく、趣味に対する興味などは変えずに、自分の個性を映していきたい。そういう名人像は、自分にしかないものですし、大事にしたいと思います」
佐藤名人といえば、クラシック音楽や西洋の中世文化へのこだわりから、“貴族” というあだ名を持つことで知られる。棋士の中では珍しく、ファッションに独自のこだわりを持つ。この日のスーツもオーダーメイドだ。
「対局にも着ていくので、座ったときに余裕があるように、スラックスはゆったりめに仕立てています。僕は、西洋の中近世の文化に惹かれるところがあります。そのエッセンスを感じる、『アンドゥムルメステール』というベルギーのブランドを愛用しています。
凝り性なので、趣味にのめり込みがちなのですが、そこで得たインスピレーションやおもしろいなという気持ちを、将棋につなげているつもりです。
最近は、美術に対する好奇心が高まり、絵画教室に通い始めました。まだ、お見せできるものではありませんが……(笑)」
佐藤名人は福岡県出身。2006年に四段に昇段しプロデビュー。羽生名人(当時)からタイトルを奪ったとき、“羽生世代” 以降で初めての名人誕生、史上4番めの若さでの名人位獲得に、棋界が沸いた。
「将棋を始めたきっかけは、母親からもらった将棋の本。学童保育に通っていたのですが、そこがなくなり、将棋道場に通いだしたんです。年上の強い人が来たら教えてもらって。同世代の友達が来たら、野球をしたり、駄菓子屋に行ったり、楽しくやってましたね。
プロを意識したのは小学校3年生ごろです。好きな将棋で生きていきたい、強い人とやりたい、という気持ちがありました。
でもそれ以上に、朝起きるのが苦手で(笑)。毎日出社するサラリーマンより、棋士のほうが理想的だなと、子供ながらに考えたんです」
まだ独身の佐藤名人。最後に、理想の女性について聞くと、彼らしい答えが返ってきた。
「18世紀のフランスでファッションリーダーのような存在であったポンパドゥール夫人のように、センスが様式になるというか、美意識をしっかり持っている人がいいなと思います。将棋に打ち込みたいというわけでもないんですが、結婚の予定はないです(笑)」
さとうあまひこ
1988年1月16日生まれ 第74期・第75期名人。中田功七段門下
(週刊FLASH 2018年4月24日)