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大橋巨泉と愛川欽也「ガン治療」の違いでわかった過剰医療リスク

ライフ・マネー 投稿日:2018.05.30 11:00FLASH編集部

大橋巨泉と愛川欽也「ガン治療」の違いでわかった過剰医療リスク

 

 死亡原因として、米国はじめ諸外国の間で話題になっている「過剰医療」。その “現代病” の実態とは。不要な医療を否定する新潟大学医学部名誉教授・岡田正彦氏が、日本の「過剰医療」にメスを入れる。

 

 ガンの治療過程にも、過剰医療の危険は潜んでいる。

 

「ガンになると、手術や放射線治療、抗ガン剤治療などが施されますが、なかには治療が有効でないケースも。不要な治療が、命を縮めてしまうことがあります」(岡田氏)

 

 手術となれば、臓器を切る際に組織をごっそり取り去る。ガンはリンパ管を通って転移するので、近くのリンパ節も全部取らなくてはいけない。体は大変な負担を強いられる。

 

「術後に何度も放射線を用いた検査をしますから、何重もの責め苦を負い、免疫力が大幅に落ちるんです。精密な検査で微細なガン細胞まで発見されて手術を受けるより、むしろ放置しておくほうがいい場合もあります」(同前)

 

 手術も放射線も有効でないステージ4に至ると、抗ガン剤治療しか手段はない。毒性も強く、当然苦痛を伴う。ガン治療の専門コンサルタントである(株)GMSの竹内規夫氏は、日本のガン医療制度が生む過剰医療を指摘する。

 

「日本の保険医療制度では、抗ガン剤治療が終了すると病院を出ることになります。『終了』とは、ガンに対応する認可薬をすべて試しきった、患者の体が投薬できない状態になった、患者が自分の意志で投薬を断わった、のケースです。

 

 病院を出た患者は、死と向かい合い、終末ホスピスに臨まなければならなくなる方がほとんど。だから、試せる薬が残っている限り抗ガン剤治療にすがるのです」

 

 国が認可する「先進医療」や、不認可の「自由診療」なども存在はする。しかし、いずれも保険がきかず高額だ。患者の選択肢の少なさが、不要な抗ガン剤の投与につながっているという。

 

 芸能人のガン闘病が報じられることも、ガン治療について考える契機になる。大橋巨泉さんが82歳で亡くなったのは2016年7月だった。巨泉さんは3度の手術と4度の放射線治療の末、鎮痛剤の過剰投与によって凄絶な最期を遂げた。

 

「海外では、鎮痛剤は治療初期から投与し、慣らしていくもの。末期に突然使用すると、体がショック状態に陥ることもあります」(竹内氏)

 

 一方、対照的なのは、2015年4月に肺ガンで亡くなった愛川欽也さん(享年80)だ。医師で医療ジャーナリストの富家孝氏が2人のガン治療を比較する。

 

「愛川さんは、手術せず在宅で治療を続けて、亡くなる直前までテレビに出演していました。どちらが正しいとはいえませんが、愛川さんのほうが最後まで自分らしく生きることができたのではないでしょうか」

 

 2015年9月、肝内胆管ガンで亡くなった川島なお美さん(享年54)についても、富家氏は治療に疑問を呈す。

 

「自覚症状のないまま、人間ドックでガンを発見され、ステージで余命宣告を受けた半年後に、なぜかこの段階では効果が望めない手術を受けました。しかも難度の高い腹腔鏡手術。もし、手術や治療を受けなかったら、もっと長生きできたかもしれません」

 

 早期発見・早期治療で救われる人もいるが、ガン治療は寿命を縮めるリスクをはらんでいる。岡田氏は、医療に依存しない方法を提唱し続ける。

 

「検査技術の進化は、不要な投薬・治療を生み、医療の犠牲者を増やします。むしろ、予防医学から運動、睡眠、食事を見直すだけで、ガンのリスクさえ減らせるんです」

 

(週刊FLASH 2018年4月24日号)

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