今や葬祭場は全国に1万カ所以上あると推定されている
令和になり、地方都市の国道沿いなどに「家族葬」を掲げる葬祭場を多く見かけるようになってきた。なかには数十メートルおきにあり、まさに「乱立状態」とも言えるが、その実数は所管する経済産業省でも把握できていないという。
「葬儀社、葬祭場を開業するにあたり、国からの許認可などを必要としないためです。近年は異業種から続々と参入していることもあり、経産省も件数を把握できていません。敷地30坪という狭小地が『気がつけば、家族葬向けの葬祭場になっていた』ということも珍しくありません。そうしたことから、葬儀業界では『全国には大小合わせて推計1万カ所以上の葬祭場があるのではないか』といわれています」(葬祭会社社員)
家族葬が増えている背景に何があるのか。仏具店に勤務しながら葬祭関連のライターとして活動する玉川将人氏に聞いた。
「家族葬が増える予兆は、バブル経済が崩壊した1990年代後半からありました。それまでは会社や地域の方などが大勢参列する大規模な葬儀がステータスでしたが、日本経済の沈滞にともない、葬儀費用を抑える傾向が強まったのです。
同時に、世の中の価値観が『モノ消費』から『コト』や『心』の充足へと移り変わり、見栄よりも『自分らしい葬儀』を指向する人が増え、そこへ高齢化による参列者自体の減少、さらに核家族化や非正規雇用の増加による『家族・社縁・地縁の希薄化』が拍車をかけました。この複合的な流れを決定づけたのが2020年のコロナ禍です。感染を防ぐために家族だけで故人を見送るようになり、その流れが今でも続き、いまや家族葬は日本のお葬式のスタンダードスタイルとなりました」
自社で斎場をもたず、インターネットで家族と葬儀社を全国規模でマッチングする「ベンチャー系葬儀社」も増えている。そういった葬儀社のサイトでは、家族葬が目立つように案内されていることが多く、葬儀選びにも影響しているようだ。葬儀相談依頼サイト「いい葬儀」が2024年3月に実施した「第6回お葬式に関する全国調査」によると、執りおこなった葬儀は一般葬30.1%、一日葬10.2%、直葬・火葬式9.6%に対して家族葬は50.0%と半数を占める。
同社の葬祭事業部長・兵藤大介氏は「調査した2024年は、コロナ禍が沈静化したこともあり、2022年の前回調査と比較すると家族葬の割合が減り、一般葬の割合がやや増えている傾向にありましたが、それでも家族葬を選ばれる喪主さまが多いことがわかります」として続ける。
「故人さまが生前に『自分は家族葬で』とご遺志を伝えているケースもありますが、私は家族葬が選ばれる理由として『年賀状文化がなくなったこと』も一因にあると思っています。核家族が多いなか、親御さんがお亡くなりになったとき、年賀状がないと親しい方への連絡先がわかりません。そしてスマートフォンのアドレス帳を見ようにも、ロックがかかりアクセスできない。そのため参列者がお身内だけとなり、家族葬でご葬儀を営まれる喪主さまが多いと感じています」
費用面で家族葬を選ぶ遺族も多いようだ。
「いい葬儀」によると、葬儀の費用は大きく分けて斎場・火葬場利用料、祭壇、棺などが含まれる「基本料金」と通夜ぶるまいなどの「飲食費」、香典へのお礼となる「返礼品」の3つに分類されるという。これらを合計した平均額は一般葬が161.3万円、家族葬が105.7万円、一日葬が87.5万円、直葬・火葬式が42.8万円だという(「第6回お葬式に関する全国調査」より)。
葬儀を執りおこなわず、火葬だけをする直葬・火葬式も増えているそうだ。兵藤氏は「今後も増えていくと思います」という。
「男女の未婚率が上がり、出生率も下がっていますから、『身寄りのないお年寄り』は確実に増えていきます。ある日、会ったこともない遠い親戚の方が亡くなり、警察から『●●さんがお亡くなりになりました』と連絡があり、そこで初めてご自分が『会ったこともない親戚の相続人第1順位になっていた』ことがわかり、『喪主として葬儀を出すことになった』という話はよく聞きます」(兵藤氏)
こうしたこともあり直葬・火葬式が増えているのだという。また、玉川氏は「地方出身の方が東京でお亡くなりになり、東京で荼毘にふしてから、生まれ故郷で本葬をするという方もいるそうです」と、企業などが集中する東京ならではの事情を話す。時代とともに、葬儀の形も多様化しているのだ。
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