「大人のやる気ペン」
老舗文具メーカー・コクヨが送り出したIoT(モノのインターネット)文具、それが「やる気ペン」シリーズだ。名前は「ペン」だが、 “電子ペン” を開発するのではなく、市販の筆記具に取りつけるデバイスにしたのがミソ。デバイスが筆記具の動きを検知することで、どれだけ勉強に取り組んだかを記録し、スマホの専用アプリで日々の努力を可視化する。それにより「やる気」が生まれてくる、というアイデアがヒットに繋がった。
「最初に開発したのは、小学生を対象にした『しゅくだいやる気ペン』です。当時、自分の子供が小学1年生で、見守りというか、そういうものを模索していたなかから、発想しました」
そう語るのは、開発者の中井信彦さん。「しゅくだいやる気ペン」は、2019年の発売から6万台以上も売れるヒット商品となっている。
「ネットを見ていたら、想定していなかった大人の方からの書き込みが出てきたんです」
さっそくユーザーと直接話してみると、意外な事実が浮かび上がってきたという。
「日記か何かで使っていると思っていたんですが、宅建とか社労士とか、難関といわれる試験を受ける人ばかりだったんですよ。衝撃でした。皆さん口を揃えて言うのが『毎日勉強するのがつらい』『やり始めの10分がつらい』と。それで『やる気ペン』を購入したということでした」
さらには、大人ならではの悩みもあったという。
「仕事をして、さらに勉強もって、よほどのモチベーションがないと続かない。励ましてくれる親もいない。 “孤独” なんですよ。孤独のなかで頑張って勉強している方が大勢いる。そこを応援するものを作りたいと思いましたね」
子供向けの「やる気ペン」を大人用にブラッシュアップ。ほかのユーザーの頑張りを知ることで、自らのモチベーションアップにつなげる機能も加えた。昨年に発売した「大人のやる気ペン」は、これまでに1万8000台以上が売れている。今年7月には、機能をアップさせた「Ver.1.5」も登場した。
中井さんは以前、家電メーカーで液晶テレビの開発を手がけていた技術者だという。
「転職して13年めですが、コクヨは『書くこと』に関して、すごく大事にしている会社だと思います。だからこの企画も、ほぼ反対意見はありませんでした。以前の会社なら『紙にペンで字を書く時代じゃない』と、ボツだったでしょうね(笑)」
写真・梅基展央
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