読経供養で持ち込まれた「木彫り熊」(写真・福田ヨシツグ)
「これまで家族を守ってくれたくまさんは、人里ではなく山へ戻っていただき……」
本州で唯一、野生の熊による被害がない千葉県富津市の葬儀社「かじや本店」の式場に、住職の厳かな声が響いた。
同社は9月3日を「くまさんの日」と名付け、日本初となる「くま供養」を開催。祭壇には約30体の木彫りの熊が並び、30分にわたって読経供養がおこなわれた。
「4月に『人形供養』をおこなった際、『木彫りの熊もお願いできますか?』と相談を受けたのがきっかけです」
そう話すのは、同社代表の平野清隆氏。じつは、以前から「木彫り熊」の存在が気になっていたという。
「葬儀の打ち合わせでお宅へ伺うと、木彫りの熊が飾られている家が多く、以前からそればかり見てしまいまして……。そんな折、同じ千葉の勝浦市で開催される『かつうらビッグひな祭り』(全国から役目を終えたひな人形を集めたイベント)を目にし、処分方法に困っている木彫りの熊を使って、町おこしをできないかと考えたんです」(以下、平野氏)
木彫り熊は昭和の時代、北海道土産の定番として「床の間」などで一家に一体は飾られていたもの。親や祖父母が購入した品も多く、「ごみとしてそのまま捨てるには抵抗がある」と感じる人は少なくない。そこで平野氏は、役目を終えた木彫り熊を集めて供養する「くま供養」を思いついた。供養料は一体500円。「かじや本店」に直接持ち込まれた木彫り熊のみ受け付ける。
「供養した熊は最終的にウッドチップ化する予定ですが、すぐには処理せず、富津市の町おこしのためにもうひと働きしてもらおうと考えています。具体的には、富津の観光名所や市内の飲食店に木彫りの熊を飾り、観光客が写真を撮りたくなるようなスポットにしたいですね。千葉県は野生の熊がいないからこそ、熊を集める。持ち込みのみにしたのは富津に来てもらい、お金を地元に落としてもらう狙いがあります」
ウッドチップ化された木彫りの熊は、地元・鋸山の休憩所や歩道に撒かれ、山へ帰る予定だ。
写真・福田ヨシツグ
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