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日本人の健康をおびやかす「砂糖」と「果糖」に気をつけろ

ライフ・マネー 投稿日:2018.07.30 06:00FLASH編集部

日本人の健康をおびやかす「砂糖」と「果糖」に気をつけろ

 

 長らく甘味料の中心は砂糖でしたが、現在では「異性化糖」と呼ばれる甘味料が砂糖に次いで広く使用されています。

 

 異性化糖は、デンプンを分解してできたブドウ糖の半分程度を果糖に変化(異性化)させたものです。加工食品の原材料欄に、「果糖ブドウ糖液糖」(果糖の含有率が50%以上のもの)、または「ブドウ糖果糖液糖」(果糖の含有率が50%未満のもの)と表示されているものが異性化糖です。

 

 

 身近にある清涼飲料水など加工食品のパッケージを見ると、異性化糖がたくさん使われているのが分かると思います。

 

 異性化糖の生産技術は1965年に日本で開発されましたが、1970年代後半以降にトウモロコシの一大生産国であるアメリカで、トウモロコシのデンプン(コーンスターチ)を原料に大量に生産されるようになりました。

 

 砂糖の主成分であるショ糖はブドウ糖と果糖が結合することでできていることから、ショ糖と異性化糖はほぼ同じ成分であり、また同じカロリーを有しています。

 

 一方、異性化糖はショ糖に比べてさわやかな甘味を持つのが特徴です。砂糖に比べて異性化糖は工業的に安価に作れるため、食品業界で広く使用されています。

 

 砂糖や異性化糖には果糖とブドウ糖が含まれています。この果糖の摂取に、私たちは注意をする必要があります。

 

 私たちの体は常に血糖値をモニターし、必要に応じてインスリン等のホルモンを用いて血中のブドウ糖濃度が一定以上にならないようにしています。この理由は、ブドウ糖が「糖化反応」などによって血管などを傷つけるからです。

 

 実は、果糖の糖化作用はブドウ糖の約10倍も強力なのです。この毒性のためか、体内に吸収された果糖は速やかに小腸と肝臓で代謝されるようになっていますが、大量に摂取した場合には小腸と肝臓での処理が追い付かず、残った果糖によって糖化反応が進行する危険性があります。

 

 また、果糖を大量に摂取していると、「高トリグリセリド血症」になりやすくなることも報告されています。また、ブドウ糖に比べて果糖の摂取は内臓脂肪を増やす危険性が高く、満腹感を与えにくいことが知られています。

 

 果糖の摂取が具体的にどれくらい危険なのかについては、まだ明確な結論が得られていません。

 

 しかし、ここで見たように、果糖については様々な危険性が予想されていることから、「果糖はわけのわからないもの」として、過剰な摂取をしないように注意する必要があるといえるでしょう。

 

 現在、砂糖や異性化糖の摂り過ぎは世界中で問題になっており、各国で摂取量を抑える努力が進められています。

 

 世界保健機関(WHO)が2015年に発表した「成人及び子どものための糖類の摂取に関するガイドライン」では、肥満や虫歯の予防のために、砂糖などの糖類の摂取量は総摂取カロリーの5%までにした方が望ましいとされています。

 

 大人一日の総摂取カロリーを2000キロカロリーとすると、5%は100キロカロリーとなり、砂糖では25グラムに相当します。

 

 この25グラムはとても少ない量です。例えば、一般的なコーラ飲料350ミリリットル缶には約40グラムの砂糖が含まれているため、一本で一日の推奨限度を軽くオーバーしてしまうことになります。

 

 また、一般的なスポーツドリンクでも500ミリリットルのペットボトル一本に約30グラムの砂糖が含まれています。

 

 農林水産省の「砂糖及び異性化糖の需給見通し」によると、私たち日本人は一日に平均42.5グラムの砂糖と17.7グラムの異性化糖を消費しています。つまり、世界保険機関の推奨値を大幅に上回る糖類を毎日摂取しているというわけです。

 

 世界保健機関は砂糖や異性化糖の摂り過ぎを抑えるために、これらが入った飲料などに税金をかけることを推奨しており、2011年にはフランス、2014年にはメキシコ、2017年にインドとタイ、2018年にはイギリスとフィリピンが導入するなど、世界的に「砂糖税」の導入が進められています。

 

 このように、砂糖と異性化糖の過度な摂取が健康をおびやかすことは、世界中の常識になりつつあるのです。

 以上、新谷隆史氏の新刊『一度太るとなぜ痩せにくい? 食欲と肥満の科学』(光文社新書)を元に再構成しました。肥満が引き起こされる仕組み、美味しいものが認識される仕組み、食欲が生み出される仕組みなどを明らかにしながら、健康に生きるためのヒントを提示します。

 

●『一度太るとなぜ痩せにくい?』詳細はこちら

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