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才能あふれる糸谷哲郎八段「将棋だけに専念すると思考が固定化される」

ライフ・マネー 投稿日:2018.08.02 11:00FLASH編集部

才能あふれる糸谷哲郎八段「将棋だけに専念すると思考が固定化される」


 天才集団といわれる棋士のなかでも、ひときわ才能がほとばしる糸谷哲郎八段。高校在学中、17歳でプロデビュー。 18歳で新人王戦優勝。その後、大阪大学文学部哲学科に入学。そして大学院在学中にタイトル戦の最高峰・竜王位を獲得。棋士としても、社会的にもエリートの経歴である。

 

 

 高校時代から、糸谷は大物感を漂わせていたという。物怖じしない態度。好奇心に満ちた眼差し。正しいと思うことは率直に発言する。哲学書を読み、自己探求型の印象だが、人を思いやる気持ちはとても強い。

 

 2013年、糸谷は棋士仲間と「西遊棋」を立ち上げた。関西を中心に将棋普及を目指した若手棋士たちのプロジェクトである。糸谷はその運営の中心を担う。

 

 対局だけでも過密な日程なのに、解説やイベントの仕事も可能な限り引き受ける。棋士仲間が「糸谷は3人いる」と言うほどのキャパシティだ。

 

 師の森信雄七段は「もっと自分の対局に専念すればいいのに」と心配する。

 

 糸谷は「将棋だけに専念すると、思考が固定化される。スランプになったときに、自分を客観視できなくなる」と語る。さらには「私は闘争心が湧かないタイプですから。それに悔しいという感情は、大人になって社会性の獲得とともに薄まると思っています」と話す。

 

 将棋界のトップ・A級に在籍しながら、なんとも達観した意見だ。それでも糸谷は将棋の魅力は、コンピュータより人間と指すことにあると言っている。

 

「人と指すときは、相手の心理を読んで、いちばん混乱する手を探る。それがおもしろい」  

 

 藤井の存在は、糸谷の闘争心を呼び覚ますのだろうか。

 

いとだにてつろう
1988年10月5日生まれ。29歳。広島県出身。森信雄七段門下。1998年、奨励会入会。2006年、四段昇段。同年に新人王戦優勝。祝勝会で「今の将棋界は斜陽産業。私たちの世代で立て直していきたい」とコメント。プロ入り1年後に大阪大学文学部に入学。大学院に進学し、2014年、竜王位を獲得した。今期はA級に昇級

 

写真&文・野澤亘伸

 

(週刊FLASH 2018年7月10日号)

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