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1回60万円の注射で髪がよみがえる「脂肪幹細胞」治療
ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.10.09 06:00 最終更新日:2018.10.09 06:00
中年男性の大きな悩み、薄毛。原因は「AGA(男性型脱毛症)」だと聞くが、なかなか治療には踏み出せない。でも、ハゲは治る。大谷翔平らアスリートも怪我の治療に採り入れている最先端の再生医療「脂肪幹細胞」は、我らの毛髪をも救う!
「最初に『幹細胞を使った再生医療』と聞いたときはわけもわからず、しかも非常に高額なので迷いました。でも、日々の心配や手間、ほかの治療をずっと続けることを考えれば、コストが低いかもしれないと思うようになって。思い切って受けることにしました。実際に治療を受けると、1回で髪のコシやハリが回復し、毛量も増えて。そのうえ抜け毛も少なくなったんです」
喜びを語るのは、脂肪幹細胞による頭髪治療を受けた69歳の男性・Aさんだ。2枚の写真はそれぞれ、治療前と治療から47日後に撮影されたAさんの頭部である。明らかに髪の毛が増え、地肌がほぼ見えなくなっている。
「年齢とともに髪が薄くなり、発毛剤などを使いましたが目に見える効果はなく、外出時は頭皮用の黒い粉を頭にふりかけていました」(A氏)
脂肪幹細胞治療で写真のような効果が出て、2回めの治療も受けた。「凍結保存している細胞でまた治療を受けたい」そうだ。
男性がハゲるのは「AGA」が原因である、という情報は報道や治療を宣伝するテレビCMなどにより、だいぶ普及している。ただし、薄毛に悩む男性の大半にとって治療は、「種類が多すぎてわかりにくい。効果がなさそう」と疑いを抱く対象である。
しかし、Aさんが受けたのは、最先端の再生医療。スポーツ選手が起死回生をかけ、怪我した部位を回復させるためにおこなうのと同タイプの治療だ。約1カ月半で絶大な効果が現われた “奇跡のハゲ治療” の最前線をご覧いただこう。
「髪の毛と再生医療の組み合わせは前から存在したのですが、幹細胞を治療に利用するようになり、大きく進歩しました。幹細胞の代表は、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が研究されているiPS細胞(人工多能性幹細胞)ですが、自分の体から抽出できて体内のほかのパーツに変化する細胞のことです。
iPSは体内のどんな組織にもなれる夢のような細胞ですが、まだ実用化に至っていない。私たちが手がけているのは、脂肪から抽出した幹細胞を培養して増やし、治療に用いる再生医療です。
脂肪幹細胞は、iPSほど万能ではありませんが、効果が実証されている治療も多い。当院では、関節痛、脳梗塞の後遺症、ホーキング博士が罹っていたALS(筋萎縮性側索硬化症)、皮膚の抗加齢、そして毛髪の治療をおこなっています」
そう語るのは東京・青山で脂肪幹細胞の抽出から培養、そして臨床治療まで一貫しておこなう「アヴェニューセルクリニック」の医師・辻晋作氏だ。辻氏は20年ほど前から、形成外科、美容外科、皮膚科で薄毛治療を手がけてきた。
「骨髄の幹細胞がいろいろな能力を持っていることはわかっていたのですが、抽出しにくいことが欠点でした。ところが近年、脂肪にも同じような幹細胞があることがわかったんです。ほとんどの組織は加齢により弱っていきますが、脂肪は元気に増える不思議な組織で、幹細胞の数も多い。現在は、脂肪から幹細胞を採取するケースが増えています」
日本の再生医療については、2014年11月に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」が施行された。細胞を用いる再生医療は、厚生労働省が認定した委員会により、その妥当性や安全性、細胞の入手および管理体制などについて厳しく審査される。
そこで再生医療の提供に関する基準に適合すると認められ、厚労省に「再生医療等提供計画」を提出したのちに、提供できるようになる。
厚労省のホームページには、「再生医療等提供計画」を提出した医療機関の名称などについて、種別ごとに掲載されており、アヴェニューセルクリニックは、第二種の一覧に名前がある。
「再生医療の詳細を記載した提供計画書を提出した医療機関は、『再生医療等提供機関』として、その医療機関でおこなう再生医療等の名称などと合わせて、当省のホームページに公表されます」(厚労省医政局研究開発振興課)
一方で、「再生医療等提供計画」を届け出ずに再生医療を提供した場合などは、行政処分や刑事罰の対象になる。行政処分を受けた医療機関は、同様にホームページで公表されることになる。