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料理のプロが対談して判明「どうして『自炊』できないの?」

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.12.01 06:00 最終更新日:2018.12.01 06:00

料理のプロが対談して判明「どうして『自炊』できないの?」

 

 人はどうして自炊できないのか。フードライターの白央篤司氏と、スープ作家・有賀薫氏が対談する。

 

有賀 私の担当編集者さんは20代の女性ですが、彼女、家にはマヨネーズもケチャップもないという人。というのもマヨネーズを1本買っても使い切れず、半年ぐらい冷蔵庫に置いてあって、結局捨てる。それが罪悪感になる。だから買わなくなる。

 


 この編集者さんのご意見は、いろいろと参考になりました。「料理をしない人間からすると使いにくい食材がある。それは玉ネギ、ニンジン、キャベツ!」なんていうのも。

 

白央 基本中の基本、おなじみの野菜ですね。その理由は?

 

有賀 まず玉ネギは皮をむくのが面倒くさい、薄皮の部分など特に面倒だと。ニンジンは煮えにくくて時間がかかる。そしてキャベツは、ひとり暮らしの台所には大きすぎると。

 

白央 ああ、それ分かります。私もワンルームアパート生活長かったけど、キッチンの広さを考えると納得ですね。

 

有賀 まな板もカッティングボードだったり、百均で買ったようなプラスチックのまな板だったりすると、キャベツや白菜を切るのは大変なんですよね。

 

白央 まな板からゆうに野菜がはみ出ちゃいますからね。プラスチックのまな板だと重量のあるものを切るときはやりにくい。スーパーでは2分1カットや4分の1カットのキャベツや白菜を置いてるところも多いですけど、それでもまだ扱いづらいサイズかも。

 

有賀 ですから包丁で切るのではなく、キャベツは手でちぎったり、キッチンばさみを使ったりするようにして、レシピを考えました。先の編集者さんに実作してもらったら、「おいしかった!」と言ってくれて、以降日常でもキャベツを買うようになったんです。そしたら彼女、「キャベツって、リーズナブルな野菜ですね!」って。

 

白央 結構キャベツは冷蔵庫内で日持ちがするし、料理用途も広いから、うまく使えれば経済的ですよね。天候が安定しているときは求めやすい値段だし。こういう野菜ごとの「経済性」って、実際に使ってみないと分からないもの。値段は手ごろでも、その人にとって「この野菜の皮むきは苦手」となると使いづらくて消費しにくいし。たとえば私はジャガイモの皮むきがどうにも億劫で、実はあまり手が伸びないんですよ。

 

有賀 実は私は、葉物を洗うのが面倒で。ホウレン草や小松菜など、冷蔵庫でつい放置しちゃうこと、あります。

 

白央 皆、何かしらありますよね(笑)。有賀さんはスープ作りのワークショップなども定期的にやられていますが、ビギナーの方向けにはどういうスープを教えるんですか。

 

有賀 初心者向けのイベントはまだ始めたばかりなんですが、ただ簡単なレシピでやっても、途中でみなさん興味がなくなってきちゃうんですよ。

 

白央 飽きちゃうということですか?

 

有賀 「野菜を刻む」「さらに炒める」など基礎を地道に伝えても、なかなか魅力を感じてもらえない。もっと内容を簡単に「楽(らく)」すると同時に、「これはやってみたい!」と思えるような「楽しさ」を入れるようにしています。

 

白央 そのポイント、具体的に教えてください。

 

有賀 「楽(らく)」でいえば、インスタント食品など、簡単でなじみのあるものを使うんです。たとえばホウレン草のカップスープ。お湯で溶いて、そこにホウレン草の冷凍野菜をドボッと入れる。それをもう一度チンする。

 

 カップスープだけだと本当にできあいのものっていう感じだし、冷凍野菜だけをチンしても「いかにも冷凍のもの」ってなるんですけど、なぜかそのふたつを組み合わせると、できあい感がそれぞれ薄まって「手作り」しているような雰囲気が生まれるんですよ。野菜もたっぷりとれますし。

 

白央 なるほど! レンジ、カップスープの素、冷凍野菜……この3アイテムを組み合わせて「手作り感」が生まれてくるってのは面白いですね。

 

有賀 「カップスープの素をチンするのが手料理なのか?」という方もいると思います。でもスープという料理は、味噌汁ほど作り慣れていない方が多いものです。


 だからまず、スープを作ることそのものに親しんでもらう。そして少しでも手をかけることで「手抜き」ではなく「手を加えている」感覚を持ってもらえれば、と。

 

白央 今の話を聞いていて思ったんですけど、レンジや冷凍食品を使うのは現代の日本の食卓において当たり前のことになっているのに、そのことに対して引け目を感じている人ってかなりいますね。「このぐらいじゃ、自炊って言っちゃいけない」と線引きをしてしまう。


 そういえば、あるときSNSでこんなつぶやきを見かけたんです。


「お米を炊いて、納豆かけて、インスタント味噌汁。こんなレベルでも、これが私なりの自炊です」


 こんなレベルって謙遜する必要、まったくないですよね。立派な自炊だと私は思う。

 

有賀 ツイッターで「料理家さんの簡単って、全然簡単じゃない!」と言われてハッとしたことがあります。
 たとえば誰かが「料理に興味がある」とSNSで言うと、私のような上から目線の人間がすぐにしゃしゃり出てくるんですよ(笑)。


 で、「こうやったらいいわよ」と、レベルの高いことをアドバイスしてくる。「それが嫌で、料理やりたいと言えなくなってしまう……」という声を聞いたこともあります。教える側にも大きな責任があるなと思いました。

 

 

 以上、白央篤司氏の近刊『自炊力~料理(レシピ)以前の食生活改善スキル~』(光文社新書)をもとに再構成しました。自炊をはじめたい人が、今日から取り組める食生活改善法を徹底網羅!

 

●『自炊力』詳細はこちら

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