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浮気はなぜだめなのか「キリスト教」の観点から考えてみる

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2018.12.24 16:00 最終更新日:2018.12.24 16:00

浮気はなぜだめなのか「キリスト教」の観点から考えてみる

 

 ヨーロッパにあって、性的快楽の追求が罪である、という考え方は長らく続く習慣で、長い歴史を通して彼らにとっての「自然な」考え方になっていきました。

 

 これは、キリスト教でいきなり出てきたわけではなく、古代ギリシャから、ストア主義の考え方、グノーシス主義、などを経て、キリスト教で総括され、長い間人々の考え方の基礎となった、と言われています。

 

 

 この考え方が頂点に達したのは、おそらくイギリスはヴィクトリア朝、19世紀から20世紀初頭の性的モラルにあってでしょう。ヴィクトリア朝の性倫理は非常に厳格で、性的なものに対する異常なまでの禁止に満ち溢れています。

 

 例えば、テーブルの脚とかピアノの脚とかも、いやらしいものとみなされます。なぜなら、女性の脚を連想させ、人を性的な妄想に導くからです。そこでテーブルクロスが発達します。机の脚なんてはしたないものは隠さなきゃ、というわけです。

 

 そんなものを見ていやらしいと思う方が、よっぽどいやらしいと思うのですが、ともかくそのくらい性的なものに敏感で、性に関わるものを禁止していった。言ってみれば、セクシャリティゼロの世界を作ろうとしたんですね。

 

 ちなみに、女性の脚を見せるのがいやらしい、見せるのは売春婦だという感覚は、フランスを含め、ヨーロッパ各国に今でもまだ残っています。

 

 だからフランス人が日本人の若い女の子のファッション、脚を露わにしているのを見て、こいつら全員ビッチか、といってたまげる。そして何も知らない日本人の女の子が短いスカートをはいてヨーロッパ旅行をして、ビッチだな、と思われるわけです。

 

 ともかくヴィクトリア朝はそういった社会、セクシャリティゼロの社会でした。そして、そんな社会では女性のジェンダーのあり方も全然違います。

 

 一言で言うと、女性とは家庭の天使だったんですね。家庭を守る、無力で汚れない存在。汚れないってことは、どういうことかというと、女性は性欲などもっていない。もしもっているとすれば、それは悪魔がついているだけだ、という考え方です。

 

 つまり、性行為の中で快楽を感じたとたん、悪魔つきだ、魔女だ、ビッチだ、とみなされます。

 

 敬虔なキリスト教徒として、女性は結婚して子供は作らなくてはいけない。しかるべきレディはしかるべき男性と結婚して、子供を作って家庭の天使になるべきだ。

 

 そして、しかるべきレディは一切の性的快楽を感じてはならない。もし感じたとすれば、ビッチである。たわいない話でも男と好んでするようだったら、すぐにビッチ認定がおります。

 

 そんななか唯一許されるのが、子供を作るためのセックスです。結婚して、唯一のパートナーと子供を作るためだけにする性行為です。これは神を信ずる信徒を増やす行為なのでOK。問題はありません。

 

 しかし、快楽を貪ろうとする行為は全て罪になります。従ってカトリックでは、避妊した上での性行為や自慰など、子供を作ることに結びつかない性行為は、全て結構な罪になるのです。

 

 性的なもの、特に性的快楽ですね、これは悪いもの、原罪の故、人間がもったものです。とはいえ、性行為を全面的に禁止するのは無理ですし、子供を作らなければ社会は回りません。


 
 そこで出てきた次善の策、困った事態をなんとか収拾するのが、結婚というシステムです。これは、神によって与えられた必要悪のようなものです。従って、浮気をして、そのシステムを乱そうとする奴は、神をも畏れぬ不届きものなのです。

 

 キリスト教といっても、カトリック、プロテスタントの諸派、その他もろもろの宗派によって様々な解釈がありますが、本家本元のカトリックは、そのように聖書を解釈してきたわけです。

 

 すると、この浮気がダメ、という倫理観は、現代日本の浮気バッシングとはだいぶ話が違います。浮気はなぜダメか。それは罪だから、神が罪と決めたから、それは悪であり、悔い改めない限り地獄落ち決定、未来永劫地獄で焼かれる、というのがキリスト教です。

 

 現代日本では、こうした宗教的な考え方は支配的ではないので、なかなか理解に苦しむ世界観なのではないでしょうか。

 

 

 以上、鈴木隆美氏の近刊『恋愛制度、束縛の2500年史 古代ギリシャ・ローマから現代日本まで』(光文社新書)をもとに構成しました。西欧の恋愛制度が確立していく歴史を追うとともに、それが日本に輸入され、いかに変質したのかを、気鋭の研究者が綴ります。

 

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