全国850店超で天丼を食べてきた、クレージーケンバンドの人気ギタリスト「のっさん」こと小野瀬雅生が、愛する天丼への思いを綴りまくる! 食べている最中に頭の中で鳴り響く、ロック名盤も合わせて紹介してくれた。
「『クレイジーケンバンド』でリードギターを担当しております、小野瀬雅生と申します。自分のリーダーバンド『小野瀬雅生ショウ』もやりながら最近はソロライブで歌も歌っております。
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全国ツアーの合間に、全国のウマイモノを頂くのが、何よりも楽しみで御座います。ウマイモノが星のようにある中で特に心惹かれるのは天丼であります。
究極の天丼を追い求めて二十数年。なぜ天丼なのか。それは天丼が他の丼に比べて地味であまり人気がないように思えたからです。カツ丼とかに比べると気取っていて、『爺臭い』と申しますか、保守的と申しますか。
あまり天丼について華やかな噂を聞いたことがない。何だか不遇な印象がある。それならば自分が応援してやろうと勝手な思い込みで天丼人生がスタート致しました。
1990年代に手にした『ベストオブ丼』(絶版)と云う本が食べ歩きを始めるきっかけになりました。『尾張屋』は、その中で最初に行ってみようと思ったお店です。スタンダードなエビ2本の天丼。今回久しぶりに食べて王道の素晴らしさを実感いたしました」
【SHOP DATA/尾張屋(東京・浅草)】
●天丼:1600円(税込み)
「ワタシの天丼食べ歩きの原点。スタンダードの素晴らしさを体現する、『蕎麦屋の天丼』の最高峰。そのシンプルさと奥深さに、レッド・ツェッペリン『1』の衝撃を思い出す!」
「その後、天丼の世界を覗き込んでみると実は多様性に富んでいてビックリ。まずは価格設定の幅広さ。ワタシも300円程度のコンビニ天丼から、1万円近くする超高級天丼まで食べております。
丼上の天ぷらは、『尾張屋』のようなエビ2本のものから、野菜などもふんだんに盛られたデラックスなものまで、多種多彩。サイズだってミニ天丼から、大食い選手権級爆盛り天丼まであるんです。
そして何より、『美味しくお腹いっぱい食べて欲しい』と云う作り手の気持ちが如実に表れるのが天丼だと考えています。天ぷら定食でなく、天ぷらをご飯に載せることで描き得るそれぞれの世界観。シシトウが1つ載るかどうかの、心遣いの差の大きさ。
ご飯の炊き方にも、味噌汁の味わいにも、その店独自のメロディーがあるのです。その中で、自分にぴったりフィットした天丼に出逢った時の感動と愉悦は何事にも代え難い。
左手に、丼の心地好い重さと温かさを感じながら、右手は箸からの天ぷらやご飯のコンディション分析を中継し、馥郁(ふくいく)たる丼上の香りを、鼻腔フル稼働で分析。そして我が口腔に、一気呵成に天丼を搔き込む瞬間の崇高さ――。
一言、『ウマウマウー!』。上品と下品の閾値。生きているなら上も下もないさ。天丼アズナンバーワン。ウィアーザチャンピオンズ。愛の天丼。胸いっぱいの天丼。史上最大の天丼。天丼総進撃。
2001年天丼の旅はもう18年も前か、ならば2020年の挑戦(『ウルトラQ 』)がもうすぐですね。ケムール人より年を取っても生涯現役、まだまだ元気に天丼を食らってやろうと心に固く誓うのでありました」