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Tシャツ信者だった「吉田戦車」初老を迎えパジャマに目覚める

ライフ・マネーFLASH編集部
記事投稿日:2019.03.06 11:00 最終更新日:2019.03.06 11:00

Tシャツ信者だった「吉田戦車」初老を迎えパジャマに目覚める

 

 大人になってから、寝る時にパジャマをほとんど着ないで過ごしてきた。着たこともあったが、すぐに着なくなって処分したと思う。

 

 いやちがう。正確にいえば「パジャマズボン」ははき続けた。寝る時にパンツ一丁より安心感があるし、ふとんカバーやシーツの汚れも減る。つまり、パジャマ上衣だけがリストラされた。

 

 

 なぜかというと、Tシャツでじゅうぶんだったからだ。寒い季節はロングTシャツを重ね着すればいい。なので、若い頃から「パジャマのズボンだけ売っていないか」とよく思っていた。

 

 上下セットを買って上だけ捨てるわけにもいかないので、どうしてきたかというと、薄手のルームパンツを買い、パジャマがわりにしてきた。同様の人も多いのではないだろうか。

 

 夏はステテコとTシャツ。寒い季節はルームパンツとロングTシャツ。その組み合わせで私の睡眠はじゅうぶん安らか……であるはずだった。

 

 今シーズンの冬、酒を飲まずに寝る晩が増えたためかもしれないが、寒いわけじゃないのにスースーするような気がするというか、落ち着かなくて寝つけないことがあった。

 

 パジャマがわりのロングTシャツラインナップに、まちがって買った「七分袖」が混じっているせいもあるかもしれない。なんでこんな半端な袖のシャツを買ってしまったんだっけ。

 

 そんな思いで、数日後、スーパーのパジャマコーナーに立った。なんだか周囲に「入院」「介護」といったような、独特のオーラが漂っている気がする。

 

 だがすでに、初老といってもおかしくない年代の私。ここにこそ、私が求める安眠の切り札があるんじゃないだろうか。若い気分で、不要なものとして切り捨ててきた「パジャマの機能」を、見直してみてもいいんじゃないだろうか。たかが東京の冬だし、マジに暖かいやつじゃなくてもいい。

 

 おっ、これはどうだ、と選んだのは、日本製の綿80%、レーヨン20%のもの。「播州織。兵庫県で生まれた逸品」であるらしい。襟のタグには「日本の匠」と書いてある。買える国産品は買って応援したい。税込み2689円。高いんだか安いんだかよくわからない。

 

 さっそく着て寝てみた。……パジャマ、いい。ささやかだが襟があるため、首元の安心感みたいなものは確実にあり、寝つきがよくなった気がする(当社比)。

 

 妻(子供とともに、パジャマではない適当な何かを着て寝ている)に「いきなりパジャマなど買って、洗濯とかウザくないか?」と聞いてみた。

 

「最初はイラッとしたが(したのか)、岩手のお義父さんが泊まりにきているようで、これはこれで」ということである。調子にのって、もう1着買うことを計画中だ。


よしだせんしゃ
マンガ家 1963年生まれ 岩手県出身「ビッグコミックオリジナル」で『出かけ親』、「ビッグコミックスピリッツ」にて『忍風! 肉とめし』を連載中。妻はマンガ家・伊藤理佐さん。近刊に本連載の単行本『ごめん買っちゃった』(光文社)。そして、『忍風! 肉とめし2』(小学館)が発売中! 

 

(週刊FLASH 2019年3月12日号)

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